第143話 これからも
私達が田舎に遠征して気が付いた事。
それはこれから私達の生きる場所として自給自足を考えた場合、地方や田舎に移る事は得策ではないという事だった。
エネルギー問題。今の場所に住めなくなった場合の施設の問題。
そしてここに来て私たちが気づいた生存者の問題。
田舎に行けば、人が生きている確率は上がるという事に気が付いたのだが…
しかし…それがかなり危険だったのだ。
すでに数年がたち人々の生存競争が始まっているようで、地方のコンビナートに行った時に銃で発砲されてしまったからだ。
そのため遠藤さんと子供の能力がある私たちは、都会で生きた方が良いということになった。
それはゾンビの絶対数が都会の方が多い為、普通の能力の人間は都会で生きようとは思わない。
しかし私たちは皮肉なことに、その能力の為ゾンビが多い事が自分たちを守る事になるのだった。
「またこの前のチームで行った方が良さそうね。」
あずさ先生が言う。
「はい。一度動いているので要領も得ていますしその方が良いかと。」
私が言う。
「でもリスクは分散したほうがいいと思うのだけど。」
華江先生が言う。
「先生。でもなんとなくですけど、あずさ先生の言うとおり慣れみたいなものがついた気がします。」
「訓練通りにはいかないというか。とにかく麻衣さんや奈美恵さんみたいに、たくさんの子供の面倒を見れる人と妊婦さんは行かない方が良いと思いますし、先生は除外かなと。」
愛菜さんが言う。
「愛菜さんはまだ子供もいないわ。それでいいの?」
「まだ時間的な猶予はあるかなと。」
「私は施設を見なければならないため、遠征組には絶対必要ですし。」
未華さんが言う。
「里奈!里奈は残ってもいいと思う。代わりに私が行くから。」
「ううんあゆみ。私ね役に立ってる事が嬉しいんだ。そして一度危険な目にあってるでしょ、危機感とか肌感覚でわかると思うんだ。」
「だからこそ。」
「いや、だからこそよ。私がいち早く気がつけばみんなの助かる率も上がると思うし。」
「じゃあ私が行って、栞ちゃんは残ってもいいんじゃない?」
みなみ先輩が言う。
「いえ先輩。この拠点にも身体能力の高い人は残らなければいけないと思います。」
「ここはある程度安全だと思うのよ。」
「いえ、以前里奈ちゃんがさらわれてレイプされそうになりましたし、完全に安全とは言い難いと思いますよ。」
いろいろと話をした結果、前回の遠征チームが視察しに行く事になった。
これから私たちはこの地を去り、更に次の場所に移ってもまた拠点を移らねばならないかもしれない。
まずは皇居が最初の視察場所となった。
「では決まりですね。」
私たちはこれからも生きて行かねばならない。子供たちを守るために…
《正直、人類の未来のためになんて考えていなかった。》
「みんな本当に強くなったわね。」
華江先生が言う。
「確かにそうね。」
瞳さんが言う。
「俺達は本当に変わりましたよね。特に最年少の二人里奈ちゃんとあゆみちゃんは最初高校生だったんです。良くここまで耐えましたよ。」
「まったくだわ。」
優美さんが言う。
「でも優美さんは良いんですか?遠藤さんと離れますけど。」
私が言う。
「いいのよ。近頼の子供たちがここにはいるわ、私にはあの子達を守る義務があると思っているの。」
「俺がそうお願いしているってのもある。」
遠藤さんが言う。
「そうなんですね。」
やはり優美さんは正妻なんだ。
「しおりん。私も一緒に行きたいんだ。」
「なっちゃんは産んだばかりなんだからダメだよ。」
「そうね、夏希さんが動き回るのはまだ良くないわ。」
華江先生が言う。
「そして、沙織さんと梨美ちゃんと翼さんは妊婦さんだしね。」
あずさ先生が言う。
「すみません。」
「謝らないでよ。皆が同じ条件なんだから。」
「はい。」
私達は運命共同体だった。今の立場や遠藤さんとの事、華江先生の研究の事、そして子供たちの事。それらを理解したうえでお互いを尊重しながら生きている。
これからも私たちはこうして生きていく。
信頼する仲間と一緒に。