第14話 反省会 ー長尾栞編ー
数日後。
私はなっちゃんの家にいた。
それはなぜか?
反省会をしているからだ。
「それで・・水族館に行ったのね?」
「うん・・」
「それはいい。」
「いいよね?」
「しおりん!その後よ。」
「だからー、言ってるじゃない。帰ってきたって・・」
「うんいいのよ。そりゃ帰って来て良いと思う。べつに勝負下着を着ていったからって最後まで行けとも言ってない。」
「だってなっちゃん、がっつくなって言ってたし。」
「そうなのよ、がっつかなくてよかった。」
「じゃあなにが問題なのよー!」
《何が失敗したのか分からなかった。私はとにかくうまくいったと思う。》
「その内容よ。ただのお友達って感じで帰ってきちゃったの?」
「まあ・・そうね。」
「えっと・・夜まで一緒にいたんだよね?」
「うん、でもそんなに遅くならなかったけど。9時には家にいたかな?」
「うん、いいんじゃない?」
「だからぁ!なにがダメだったの?」
「夜はさぞ寒かったよねぇ・・」
「ああ確かに夜は寒くなってたー。」
あの水族館の帰りは確かに寒かった。日中が天気が良かったからなのか夜は冷えた。
「いやぁー、それで・・手も繋いでないとか、ないわぁ〜」
「えっ!手を繋がなきゃいけなかったの?」
「傷跡をなーんも残してこなかったのね。」
「傷跡って!?えー!?でもいい感じで終わったと思うけど。」
「まあ唯人君は真面目だし・・でも奥手なんだねぇ。だってさあ!しおりんは上玉も上玉よ!あざとくてカワイイ92点の女よ!手くらいつなげっつーの!」
どうやらなっちゃんは、私と唯人君との恋の進展具合が不満なようだった。
「いやぁでもぉ・・手とかはまだ無理だしぃ・・」
「でもぉじゃない。しおりん・・私もね、カフェに行ってすぐ帰ってきたとか言うならそんなに言わない。でもさぁ水族館に行ってさらに夜ご飯まで一緒に食べて、1日一緒に居てさらに寒い夜の道を二人で歩いたんだよね?」
「まあそうね。」
「まあそうね。じゃねーわ。唯人君は私から見ても可愛い男の子よ!知ってる?麻衣先輩も狙ってたって知ってた?」
「えっ!そうなの?」
「そうよ!まさか知らんかった?」
「し・・しらんかった!」
《そうだったのか・・合宿の時にはそうだったのかな?》
「で!あのデートの後から唯人君から連絡ないんだよね??」
「うん。無いけど・・」
「学校で彼を見かけたんだよね?」
「うん、何度か見かけた。」
「学校では彼に声かけてないんだっけ?」
「う、うん。友達といたみたいだし。」
「はぁ?なぜ!?普通仲良くなったんなら学校でもしゃべるでしょーが!」
「だ・・だから!友達といたみたいだったから迷惑かなと思って・・」
《あ、あれ?なんでなっちゃんに怒られてるのかが分かってきたぞ。》
「しおりん!あんたは小学生か?いや・・きょうび小学生でももっと積極的だわ。」
「・・・なっちゃん・・私・・ったった今、何で起こられてるのか分かったわ。」
「でしょ!まあ唯人君も唯人君よ!なんで連絡もよこさないのよ!」
「きっと忙しいから・・」
「あー!しおりんから連絡したっていいのよ!」
「な・・なんて言ったらいいの?」
「はぁ?何言ってるのよ!また会いたいとか、遊びたいなとか・・今何してるの?とかなんでもいーわ!」
そうか・・ようやくわかった気がする。要は私は唯人君を気に入っているというだけで、それ以上の行動に移していなかったのだ。これではせっかくパスを出してくれたなっちゃんに対して申し訳ない。
「ご、ごめん!せっかくなっちゃんがお膳立てしてくれたって言うのに!」
「あたしなんて、どーでもいいのよ!連絡すんの?しないの?」
「し・・します!」
「よろしい!では今いけ!」
「い、今ですか?」
「今でしょ!」
どこかの塾講師のような事を言っているので、とにかくすぐにSNSで唯人君に連絡を取ることにする。とりあえずすぐやらないといけない気になってきた。
「えっと、じゃあ・・また遊びに行きたいな!でどうだろう?」
「ああいい!それでいい!行け!」
SNSに入力して送信した!そしたらすぐに返信が来た。
-俺もいまそう思っていたところだよ!
唯人君からいきなりいい返事が返って来たのだった。
「ほらね!しおりん!ヤツは・・奥手だ・・待っていやがったんだよ!草食系男子ってやつだよ!」
「そうだった・・ホントにそうだった。」
「危ねぇわ!このまま自然消滅したらどうするつもりだったのよ。」
「自然消滅あったかな?」
「ふぅ・・例えばしおりんからこのまま連絡しなかったとする。唯人君がやきもきし始める。そしてしおりんが学部の男の先輩とかと立ち話をしているのを見かけたとする・・どう思う?」
自分がそうだったらどう思うかを考えてみた・・ええと・・
「彼氏かな?どんな関係かな?って思うかも。」
「でしょ?」
「そうすると、更に連絡をよこさなくなるよね?そこに麻衣先輩みたいな魅力的な女性に声かけられてみぃ!」
「ああ・・・終わるわ。」
「しおりんよ!やっとわかってくれたか!よかったよ!あたしゃーよかったよ!」
「神・・」
「神!じゃねーよ!」
「だってさあ、正直どうしたらいいかよくわからなかったんだもの・・」
「まあいいわ。とにかく少しでも進展してしまえばこっちのもんだ。次は頑張れ!」
「なっちゃーん・・ありがとう〜」
「よしよし!とにかくこれでわかったわ。唯人君は奥手だから少しこちらからアプローチかけていくくらいでちょうどいいと思うわ。」
彼が女の子慣れしていないのと同じくらい、私も男の人との付き合いなんて皆無だったから・・
なっちゃんがいなかったら終わってた。
「もうー!なっちゃん!好き!」
「しおりん・・・私も好きー」
あいかわらず仲のいい二人だった。
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