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第118話 図書館女子トーク ー長尾栞編ー

私が出産してからまもなく出産ラッシュが起きた。


出産の立ち合いを他の人たちも行うようになり、心配だった華江先生の出産も無事に終わる。華江先生の出産はてんやわんやだったけど、華江先生は後で笑ってた。子供を産んでホッとしたら、みんなの一生懸命な顔を思い出して笑えたんだって。


「翼さん華江先生の出産のとき凄かったですよね。」


「そりゃあ必死よ。だって子供なんて取り上げたことないもの。」


「華江先生も私の出産で初めて子供を取り上げたって言ってましたよ。」


「すっごく手慣れた感じだったらしいわね。」


「本当です。産婦人科の先生なんじゃないかって思っちゃうくらい。」


「本業外科なのにね。」


「まったくです。」


いまでは、華江先生、あずさ先生、奈美恵さん、瞳さんがそれぞれの子供に授乳をしたり沐浴させたりしているが、他の人たちも予行演習のため本人に代わりに行うようにしていた。妊婦の女子高生二人はそれを見て少し実感がわいて来たようで、勇気が出てきたようだった。


そして今は、優美さん、麻衣さん、沙織さん、愛奈さん、翼さん、未華さんが妊活中で連日励んでいるようだ。少し焦りもあるようで遠藤さんは中1日の休みで、二日に一回は夜誰かと過ごしている。


そして・・今。全員である所に来ている。


「いろんな本があるんですね・・」


「本当。でも私たちが読む本がすくないかも。」


「確かに難しい本が多いです。」


「まあ専門書以外もいろいろあるようだけどね。」


「そうですね。普通に文学とか情報系の本もあるみたいです。」


「私は2冊ほど持っていこうと思っているわ。」


「私はここにある10冊全部持っていきます。」


私の前のテーブルには私が読んでみたい本が10冊積みあがっていた。


私と翼さんが椅子に座って話をしている。


私たちが来ているのは医療大学図書館だった。華江先生は出産後子育てをしながらも、再度あの男から採取した血液サンプルや細胞を調べワクチンの開発をしていた。


「1年以上かかるかもしれないって言ってましたよね。」


「ええ。それで調べ物があると言って図書館に来たのだけど、私たちには何が何やらさっぱりわからないわね。」


「全然わかりません。」


おぎゃーおぎゃー


私の胸で息子が泣き始めた。


「はいはい。お腹減ったかなー待っててねー。」


私はマタニティの服の胸にあるファスナーを空けて、胸を出し息子に母乳を与え始める。すると息子はおとなしくなった。


私の息子の名前は・・唯人。


そう、私の初恋の彼の名前を授けたのだった。私は常に唯人の面倒を見ながら皆と一緒に行動していた。


「おっぱいそんなにおっきくなるんだね。」


「そうなんです。もう張っちゃって張っちゃって重たいです。」


「奈美恵さんなんて凄いもんね。」


「本当に・・もともと大きいのにあんなになっちゃって。」


「言っちゃあれだけどスイカみたいよね。」


「言えないですけどね」


こんなことを普通の声の大きさで図書館で話しているが、私たちのグループ以外の人はいないので誰に怒られる事もない。そしてここにある本も、もう誰が借りに来るわけでもないので好きなだけ持っていける。


「私も座っていい?」


優美さんが飽きちゃったみたいで私たちの所に来た。


「どうぞどうぞ!」


「唯人君。栞ちゃんに似たら絶対イケメンになるよね。ちょっと女子っぽい顔してそうだけど、こりゃ将来ひっぱりだこだわ。」


「えーそうですかね?そうだったらうれしいです。」


「近頼に似ても、そこそこいい線行くと思うわ。」


「あー確かにそうです。隠れイケメンになりそう。」


「そうそう!そういう感じ。」


私たちは談笑しながら笑いあう。


「私、大学の図書館なんてあまり来た事なかったから新鮮だわ。」


「優美さんはあまり本を読まないんですか?」


「もっぱらファッション誌や情報誌ばかりで文学とか読まなかったわ。」


優美さんが答えると翼さんも言う。


「私もそうかなー。大学の時はファッション誌ばかり見てたかも。あとは流行りの作家さんの本を読むくらい?賞とか取った人の本とかね。」


「そうなんですねー。」


「栞ちゃんは本の虫だもんね。」


「はい。本が昔から好きで・・図書館にはしょっちゅう通ってました。もちろん本屋さんも好きなんですけど図書館は買わなくてもいくらでも読めるし、売ってない本なんかも読めるので凄く楽しいんですよ!」


私が意気揚々と話してしまう。


「一生懸命好きな事話すしおりん、かわいい!」


「あ・・」


「どうしたの?」


「いえ・・しおりん・・親友がそう呼んでくれていたんです・・」


「あ、なんか思い出させちゃったかしら?ごめんね。」


「いえ。むしろそう呼んでもらったらうれしいです。なんだか友達が側にいるようで。」


「じゃあ私が呼んであげようか?」


「はい。優美さん!そうしてください!」


「オッケー。」


《優美さん。そういえばなっちゃんに似ているところがあるかもしれない。明るくて楽しくて勇気づけてくれて・・よく図書館にもつきあってくれたっけなあ・・》


私はしみじみと考えてしまう。


「みんなもそろそろ飽きてきたみたいよ。」


優美さんが言うので見てみると、愛奈さん沙織さん麻衣さんがテーブルで談笑していた。あゆみちゃんと里奈ちゃんも既にテーブルに座って話している。


それからしばらく、医療チームの書籍を探している間・・図書館で女子トークを続けたのだった。

次話:第119話 遠征先で追われる女子3人

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