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第114話 妊娠できる限界人数 ー長尾栞編ー

華江先生が知りたいのは里奈ちゃんから聞いた男の情報だった。


どうやらあのレイプ男は、遠藤さんと違ったタイプのゾンビウイルスに対する抗体を持っているようだった。


遠藤さんは半径1キロにゾンビが近寄れないという、現代医学や科学では到底説明が出来ないような力を持っている。


それに対しレイプ男はゾンビウイルスに感染しない抗体を持っているらしい。


「華江先生とあずさ先生はあの男の所に籠りっきりですよね。」


私が聞くと奈美恵さんが教えてくれた。


「どうやら華江先生は、あの男の細胞でゾンビウイルスに感染しないためのワクチンが作れないかと考えているらしいわ。」


「あの男が何かの鍵を握っているという事でしょうか?」


「どうなのかはわからないけど、男で生き残っているのは遠藤さん以外ではあの男だけ。」


「研究していけば分かるという事ですかね?」


「そこまでは断定できないらしいわ。」


そこまでは分かっていないらしかった。


「でもあの男、噛まれてもゾンビにならなかったんですよね?」


私が聞くと隣に座っていた遠藤さんが言う。


「そうらしい。何度か噛まれたことがあるんだって。」


「じゃあ、ゾンビには近づかれてしまうんですね。」


「ああ。どうやら感染しないってだけで、ゾンビは消えないし人間と認識して襲って来るらしい。」


「遠藤さんとは違うんだ。」


「俺は近くでゾンビを見た事が無いから分からないんだけど、人間とみて襲って来るって事なんだろうね。」


「そうなんだ・・。」


そうは言ってもゾンビにならないというのは大きい事だった。


華江先生は里奈ちゃんに生かしてほしいと言われただけで、レイプ男を生かしたわけじゃなかった。


その話を聞き、ゾンビワクチン研究の検体にしようとしているのだった。


「ワクチンが出来るといいですね。」


私がポツリと言う。


みんなが頷いた。


いまレストランで話をしているのは私と奈美恵さん遠藤さん翼さんだった。


「あともう一つ気になる事があるのよね。」


「あああの時の追跡の件ですよね?」


奈美恵さんが言うと翼さんが疑問をのべる。


「そうあの時はコンビニ駐車場に停車した遠藤君から離れ、2台が追跡したのよね。」


「はい」


「遠藤君と1キロ以上距離をあけたはずなのに。」


「ゾンビはいなかった。」


「そう。」


コンビニの駐車場に遠藤さんの車を残して2台の車が犯人の所に到達した時、そこにはゾンビが1匹もいなかったのだ。


遠藤さんとの距離が1キロ以上あったのに。


「華江先生が言っていたんだけど・・」


奈美恵さんが言う。


「はい。」


「おそらく妊娠した華江先生とあずさ先生と私が、先行した車に乗っていたからかもしれないって。」


「そういってましたね。」


「妊娠によって遠藤さんと同じか、近い能力を得たのかもしれないと言っていたわ。」


「遠藤さんの生きた遺伝子が体内に入っているからという事でしょうか?」


「その可能性が大らしい。」


妊娠したのは5人。


私と華江先生あずさ先生奈美恵さん瞳さん。


その人たちが居たからゾンビが消えた可能性があるらしかった。


《子供を宿したことでゾンビが消える・・》


「それがそうだったら、私たちの行動範囲がかなり広がりますよね?」


「そうね。ただ妊娠した体では出来る事は限られているけどね。」


奈美恵さんが答える。


すると翼さんが言う。


「妊娠していない人と妊娠している人が一緒に動いて、妊娠してない人が働けばいいと思わない?」


「でもそれじゃあ不公平じゃ。」


「うーん。でも生き延びていくためには、そう言っていられないでしょ。」


「まあそうですね・・」


私達が話をしていると、そこに優美さんと麻衣さんが入って来た。


「ちょっと耳に入って来たんだけど、翼さんの言うとおりだと思うわ。」


優美さんがきっぱりと言う。


「私もそう思う。」


麻衣さんが同意する。


「だってみんなが妊娠しちゃったら、近頼しかみんなを守る人がいなくなる。それなら私達はまだ身ごもらずにみんなを守る側に回るわ。」


優美さんが言うと麻衣さんが言う。


「もちろん私も優美と同じ。私は身ごもっているみんなを守ろうと思う。」


「私もそう考えてました。」


翼さんが言う。


「みんな・・」


奈美恵さんが言葉に詰まる。


優美さんが続けて言う。


「だから身ごもるといってもあと2人が限界じゃないかしら。今14人中5人が妊娠してる、あと2人で7人になるからマンツーマンで行動できる。身ごもるのならあと2人だと思う。」


「合理的な考え方かもしれないけど、それで皆さんは良いのでしょうか?」


「だってね栞ちゃん。私たちはこれからも生きていくんでしょう?妊娠した子はみんなの子供よ。私たちが妊娠した時にはまたみんなに守ってもらう。そうやって行くしかないんじゃないかしら?」


「そうですね。」


優美さんは本当に凄い人だ。


こんなに割り切った考えを出来るなんて強いと思った。


遠藤さんがこの人を選んだ理由がよくわかる。


「じゃあこの話は明日の朝みんなとの食事の時に話しましょう。未華さんと愛奈さんと沙織さんにも話さなきゃね。」


「わかりました。」


「優美さん、あなたは本当に強いわね。」


奈美恵さんが言う。


「ふふ。今頃気が付いたんですかぁ?」


優美さんは明るく答えるのであった。


「とにかくあの男から何かの突破口が見つかるといいですね。」


私が言うと皆が頷くのだった。

次話:第115話 ブルーな女子高生妊婦

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― 新着の感想 ―
[一言] 優美さんは非常時体質の女性かも? 通常世界ではビッチでも、非常時に本領を発揮する女性で 男性でも通常世界では、無能者で非常事態に成ると 集団を統率するリーダーに、なる奴も居ますがね! 銀英伝…
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