第108話 マンネリ打破の方が重要だった? ー長尾栞編ー
ある日ホテルの展望台にみんなが集まっていた。
外はあいにくの雨模様でビルには霞がかかり視界が悪かった。
みんなを集めたのは華江先生だった。
「集まってくれてありがとう。」
華江先生が話を切り出した。
「いえいえ時間はたっぷりありますし。」
「なんのお話ですか?」
「何か変化でもありましたか?」
優美さん瞳さんあずささんが聞く。
皆はこれから何を話すのかを知らされていない。
私だけが知っていた。
そしてこれから皆に聞かなければいけない事もあった。
「皆さん。これまで遠藤さんとの子孫を作るための計画は順調だったと思う。」
「そうですね先生。優美さんのおかげもあってみんな順調ですね。」
あずさ先生が相槌をうつ。
「私は勝手に振り分けてるだけなので、皆さんに申し訳ないくらいです。」
優美さん言うと華江先生が言う。
「優美さんは冷静に行動していると思うわ。皆にまんべんなく振り分けてくれている。こんなことが出来るなんて尊敬に値するわね。」
「ありがとうございます。」
優美さんは褒められて、こそばゆいようだった。
「優美さんのおかげもあって、遠藤君もだいぶ慣れてきたんじゃないかしら?」
「はい。皆さんには申し訳ないですが、俺には良い事ばかりだと思います。」
「それならよかったわ。」
本当に不思議な関係だった。
遠藤さんはここに居る女性の事を全て知っている。そして私たちは彼の事をよく知っている。
遠藤さんは堅苦しい人ではなくなった。
女性の気持ちが良く分かるフェミニストで、それでいて野性的な部分もあるワイルドな男に変貌しつつあると思う。
強引な男らしいところがさらに強くなり皆もやりやすくなったみたいだ。
優美さん曰くモテ男のオーラが出てきたのだとか。
皆もそれは感じていた。
そして華江先生は核心の話をするのだった。
「あの私の口から自分で言うのも申し訳ないんだけど。私は子供を授かりました。」
・・・・・・・・・・・
皆が一瞬沈黙した。
「・・え?」
「そうなんですか・・?」
「えっ凄いです!先生が?」
「とうとうその時が来ましたか。」
優美さんと麻衣さん里奈ちゃんあずさ先生が答えた。
「ええ。私は2度彼と行為に及んだわ。そして生理が止まり検査の結果は陽性。おそらく1度目の接触で出来たのだと思う。」
「・・俺の子・・」
「ええ。あなたの子よ。」
「やった!凄い!凄いです!」
遠藤さんが感動しているようだった。
「そしてもう一人子供を授かった人がいるの。」
「え?誰なんですか?」
あゆみちゃんが聞く。
「栞さんよ。」
「え!」
「そうなんですか?」
「1度だけで!?」
「おめでとうございます!!」
麻衣さんと里奈ちゃん翼さんとあゆみちゃんが言う。
私はドキドキしながらもそれに答える。
「はい。私も授かりました。まさか1度だけで出来るとは思ってませんでしたが・・。」
「栞ちゃんも!俺の子を!」
「はい。遠藤さんの子です。」
「そんな・・凄い・・う・うう・」
遠藤さんは感極まってついぞ泣き始めてしまった。
こんなところでいきなり泣くとは思っていなかった。
私もつい一緒に泣き始めてしまった。
「遠藤君に喜んでもらえてうれしいわ。そこでちょっと皆にきちんと聞きいてなかったんだけど。」
華江先生が単刀直入に聞く。
「ここに・・生理の止まった人いるかしら?」
するとゆっくりと2人の女性が手を上げた。
「うそ?」
なんと手を上げたのはあずさ先生と奈美恵さんだった。
「全員、医療関係者・・」
ポツリと優美さんが言った。
「あの二人は検査はしたの?」
「えっとまだです。奈美恵は?」
「実はまだです。」
「でも生理がなくなったのね・・」
「はい。」
「そうです。」
彼女らがなぜ検査をしなかったのか?
それには彼女らなりの理由があった。
それは妊娠をすれば彼との逢瀬が止められてしまうから・・。
彼との愛をはぐくむ行為が止められるのが嫌だったのだ。
皆が薄々気づいていても言及する事はない。なぜなら誰もがその気持ちが分かるからだ。
「じゃあ二人はそろそろ年貢の納め時ね。検査しましょう。」
「・・はい。」
「・・わかりました。」
そしてその後、皆がなんとなく優美さんに気遣いをするような空気になった。
相思相愛の彼女がまだ子供が出来ていないのだ微妙な雰囲気になる。
「ん?いやいやいやいや!みなさん!私に気を使っています!?」
「えっ・・まあ・・」
「そうですね・・」
「だって・・」
「優美の気持ち考えたら・・」
華江先生と私と翼さんと麻衣さんがぼそぼそと言う。
「はぁ?先輩に麻衣も?まってまってまって!私、超喜んでるから!私と近頼の目標の第一段階が達成できてうれしいから!」
「そうなんですか?」
「無理しなくてもいいのよ。」
「だって優美さんが一番だとばかり。」
「逆にそれでよかったの?」
沙織さんとあずさ先生未華さん麻衣さんが言う。
「良いも悪いも、そうやるって言ってきたじゃないですか?私もまだまだ彼との時間を楽しめますし、近頼も楽しんでいるんですけど。」
「えっ?楽しんでいる?」
「はい・・ねえ近頼。」
「そうですね。最近はだんだんと楽しくなってきてます。皆が一生懸命俺を飽きさせないように努力してくれるし、俺のやりたいことも全部許してくれてるので本当に楽しいです。」
「ね。と言うわけで私たちに気遣い無用ですよ。近頼のテクも上がって来てるし私は万々歳なのだけど?」
「すみません。俺達が気を使わせてましたか?」
遠藤さんが恐縮している。
「いえいえいえいえ!」
「そんなことは無いですぅ!」
「もっと自由にしてくれていいんです。」
「私も好き放題お願いします。」
私とあゆみちゃん愛奈さんと翼さんが慌ててフォローした。
「えっと、みんなが差し支えなければなんですけどぉ。」
優美さんが話し出す。
「最近、近頼が皆とのローテーションをしているうちに感覚が麻痺して来まして、普通のあれじゃあちょっと反応が鈍くなったりして来ているんです。」
「は・・反応が鈍く?」
私が目を白黒させる。
「私も誰かと2人か3人で相手したいねっていってたところです。」
「えーーー!」
「そんな!」
「いいんですか!?」
「それはちょっと・・でも・・さすがに・・」
「むしろお願いできれば。」
里奈ちゃん未華さん沙織さん翼さん愛奈さんがそれぞれにいう。
「じゃあむしろみんな我慢してたって事よね?さすがに毎日のように新しい女性をとっかえひっかえしたら、堅物だった近頼だって変わるし。そりゃあ・・ねぇ。」
「・・・・・・」
皆が真っ赤になって下を向いた。どうやら図星だったらしい。
「ふふ。こんな世界なんだし!逆に楽しんでいかなきゃだめですよ!ストレス発散にもなるし、明日の為の活力にもなるんだから!」
《ポジティブ!!!!!!》
皆が優美さんを超尊敬のまなざしで見るのだった。
「じゃあ・・早速なんですが・・明日楽しむためのいろいろなものを回収しに行きません!?」
「行きます。」
「わたしも。」
「行きたい!」
「出来れば・・」
「楽しそう!」
「そうこなくっちゃ。」
だれがどの返事を言ったのかが分からないくらいだ。
どうやらみんな凄くアレが好きなようだ。
《でも・・楽しむためのいろいろな物ってなに!?私は普通で十分だわ。もしかして・・真面目に思い悩んでたの私と華江先生だけ?》
そう思った。
そういえば彼女は以前言っていた。
私はビッチなんだと・・
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