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第105話 初めてー長尾栞編ー

優美さんがシャワールームにまさかの裸で入って来た。


「えっ!あの。」


「いやごめんね、栞ちゃん男の人と初めてなんだよね?」


「あ、はい。」


「それならあれだわ・・」


優美さんが私の耳元でごにょごにょとささやく。


「どう?」


「・・・は・はい確かに意識したことなかったです。」


 一度も意識した事が無かったかもしれない。


「近頼が顔を近づけた時に気にされたら嫌じゃない?たぶん自分では気が付かないと思うの。」


「そうなんですね。」


「だから一応ね。洗い方だけ教えるわ・・ちょっと恥ずかしいけど見ててね。」


そして優美さんは・・バスタブの縁に座って洗い始める。


「もしかしたら最初はピリッとしちゃうかもしれないからお湯だけで良いと思う。」


「はい・・」


優美さんがしたように真似てやってみる。


「あっ!」


「そうよねぇ。でも相手の事を思うなら少し我慢してね。」


「慣れますか?」


「まあそのうち。でもあまり強くしすぎてはダメよ。」


「はい。」


「じゃ出るわね。」


優美さんは体の洗い方を教えてシャワールームを出て行った。


あとは普通にいい香りの石鹸で体を洗い流す。


シャワールームを出て体をバスタオルで拭いて部屋に戻ると、優美さんはもう部屋にはいなかった。


ベッドの上にレースの可愛いピンクの下着上下と、コーディネイトされた服が置いてあった。


テーブルの上に香水が置いてある。


香水の下に手紙が置いてあった。


(下着は栞ちゃんのイメージで選んでおきました。服のコーディネイトは少しセクシーですが栞ちゃんに絶対似合います。そして香水はいつも栞ちゃんが付けている物の中から、カロエのオードパルファムをえらびました。気に入らなければ自分で変えてね。近頼は19:00に部屋にいます。頑張って!優美より)


「優美さん・・」


優美さんの選んだものをすべて受け入れることにした。


下着をつけてコーディネイトされた服を着る。


胸がV字に開いたピッタリフィットで前身ごろが合わせになっているオフホワイトニット、下は黒のペンシルスカートでフロントにスリットが入っていた。


薄いベージュのストッキングが合う。


「こういうのが遠藤さんの好みなのかな・・」


体にぴったりとフィットしていてラインが浮き出ている。


私にしてみればちょっと大人っぽいんだけど、本当に優美さんのセンスは抜群だった。


シュッ


カロエ のオードパルファムを空中に吹き、その下を通るとほのかに自分に香りがついた。


「いい匂い。これがいいのかな?」


私はどことなく大人になった気分がした。


凄く嬉しい・・


「優美さんって本当に皆の事考えてるんだなあ。その気持ちに応えるために頑張るぞ!」


約束の時間まではまだ少しある為、軽く乾パンを口に入れてミルクティーで流し込む。


「ふぅ・・」


少し落ち着いて来た。


《そうちょっと気分を落ち着けないとね。》


しばらくして時計は、18:40をさす。


歯磨きをして口臭予防薬でくちゅくちゅをした。


「ふぅ。いきますか・・」


ドキドキしていた。


《何度も思った・・これでいいのか・・どうしたらいいのか・・》


好きな人にこれから抱かれに行く、自分の事が一番じゃなくてもいい。


とにかく私は私の為に遠藤さんとの夜を過ごす。


コンコン


遠藤さんの部屋のドアをノックする。


ガチャ


遠藤さんが出てきた。


「こんばんわ。」


「こんばんわ。」


二人で気恥ずかしそうに挨拶をする。


「じゃあ入って。」


「はい。」


そして二人で部屋の中に入る。


遠藤さんはテーブル脇の椅子に腰かけた。


「まず話そうよ。」


「はい・・」


二人はテーブルをはさんで二人きりで話はじめる。


「アパートに引っ越してきた時、遠藤さんが挨拶に来てくれた事覚えていますか?」


「覚えてる。やっと社会人になった第一歩で初めて挨拶に行った隣人が、若い女性だったので少しほっとした記憶があるよ。」


「覚えていてくれたんですね。私はふつうにいい人そうだなって思いました。でもあの時はただそれだけでした。」


「俺もこんなに可愛い綺麗な女性が隣の部屋に住んでるのに、それほど気にしていなかったよ。」


「私はキレイじゃないですし。でも遠藤さんが隣で今は本当に良かったと思っています。」


「俺もさ。栞ちゃんが居なかったら絶対あきらめてた。君のおかげさ。」


「何度も何度もこんな話しましたよね?」


「ああしたね。」


二人は沈黙した。


そして遠藤さんと目が合う。


遠藤さんはただただ優しい目で微笑んでいた。


私は少し赤くなるのが分かった・・


すると遠藤さんの顔が近づいて来た。


私は目を閉じた。


遠藤さんは私の手を引いてスッと自分の方に引き寄せてくれた。


《あんなに堅苦しい人が…きっと優美さんの指導の成果だわ。》


こんなゾンビの世界になって、付き合っていた彼氏の消息が分からなくなった。


そしてこの人を好きになり初めての夜を迎えた。


明日の朝・・一緒に目覚める事が出来る。


私は自分が生かされた事に感謝して幸せをかみしめるのだった。


「遠藤君ありがとう・・」


「うん・・・」


ふたりの夜が始まった。 


めくるめく遠藤さんとの時間はあっという間に過ぎそして一緒に眠った。

次話:第106話 情事の後で

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― 新着の感想 ―
[一言] そろそろ、パンデミック後1年でチームも銃を装備したほうが良いかもですね?犬も野生化してゾンビより危険だし、猪や鹿野生動物の、畑跡地の食害もまずいレベルでしょう。 肉の供給も視野に入れて、警察…
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