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城崎アユハの戦場日誌  作者: 三山春菜
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第一話~襲撃

初投稿です

勝手がわからず難儀してますが、継続投稿頑張りたいと思います(^-^)

 どこまでも続く暗闇、それを彩るようにちりばめられた幾億の星々。その星の海を切り裂くように進むものがあった。真っ白な船体に深い蒼でエンブレムが描かれている。ロアルティ帝国に属する民間企業経営の定期連絡船だ。エンブレムはこの民間企業を表すロゴである。

 その連絡船の中で、城崎アユハは言い知れぬ嫌悪感と不安感に眉をひそめた。切れ長の大きい瞳に癖のある茶髪をポニーテールにした、ネコ科の動物を彷彿させる雰囲気の女性だ。

 連絡船にはアユハたちの他にも五十名程の乗客がおり、思い思いに一週間程の宇宙旅行を楽しんでいた。と言ってもアユハたちがいるのは完全な個室で船内の様子は窺えないはずなのだが、彼女は()()()()()によって乗客の様子どころか護衛を勤める部隊の様子までが手に取るようにわかっていた。

 その感覚の助けもあってか、胸がざわざわと騒ぐ。言うなれば、肉食獣に囲まれ、虎視眈々と狙われてるような……。


 ――なんか……ヤな感じ。


 アユハは今、義両親と共に帝国本土へと向かう定期連絡船に乗り込んでいた。



 ロアルティ帝国――600年以上の歴史を持ち、本土は海に囲まれた一つの島だが広大な領土を所有する大国だ。宇宙空間に建造されたコロニーも百数基を超え、現在も新しく建造中だと聞く。そういうアユハの出身も辺境にある一つのコロニーだ。しかし、辺境だからといって侮ってはいけない。

 コロニー“エンバット”は、辺境にあるという特性を生かし、極秘(トップシークレット)で兵器製造を行ったり、優秀な兵士の育成を行う、帝国の軍事の要となっていた。育成部門も大きく戦闘員、後方支援と分かれているが、細かく多岐に(わた)り分類分けされ、専門知識を叩き込まれているのだ。

 そうした飽くなき探求心が600年もの間、帝国を支え、変わらぬ平和を保っているのだろう。その教育の賜物か、アユハはこれからその一翼を担える事に喜びを感じていた。

 そう、アユハの本土行きは、帝国軍に入る為のものでもあるのだ。“エンバット”でも軍属になる事は出来るのだが、アユハはより広く、より多くの人々を守りたいという想いから本土行きを決意したのだ。だが、なんの迷いもなかった訳ではない。

 義父の仕事の都合もあったとはいえ、生まれ育ったコロニーを離れるのは少し……いやかなり寂しかった。義両親もそれがわかっていたのか。“エンバット”最後の夜に、友人や後輩を大勢招いてパーティーを開いてくれた。それは盛大に。

 そんな、少々羽目を外した昨夜のパーティーを思い出し、ふっと笑みがこぼれた。ついでとばかりに思い出した破天荒な後輩のお陰で、少し心が軽くなったのだ。まだ不安はあるものの、()()の顔が浮かんだだけでどうにかなるかも、という気がしてくる。

 ――まったく……はた迷惑な奴だった。

 これで死んでしまったらアイツのせいだ。と、微笑みを浮かべたまま、後輩に対して無責任な責任転嫁したとき、


「――っ!?」


 突然感じた殺気に、全身が総毛立った。

 ――やはり来たか!?

 一拍遅れて船内に警報が鳴り響いた。同時にアナウンスがかかり、襲撃されている事、戦闘体制に移る為、船内の重力発生装置を切る事が伝えられた。その直後、体が軽くなる感覚で船内が無重力状態になった事がわかった。個室とはいえ乗客が騒ぎ出す様子がわかる。シートベルトを締めながら、アユハは向かい合って座る義母の江里に向かって言った。

「母さんもシートベルトを。きっと揺れるはずだよ」

「まあ、大変。――大丈夫かしら……?」

 アユハの言葉に慌ててシートベルトを締める江里。流石にそれだけでは不安なのか、小さく呟き、義父の杏里の方に身を寄せた。その杏里も難しい顔で黙り込んでいる。そんな2人を視界におさめつつ、アユハは乗り込む時に見た格納庫の様子を思い出していた。

 ――予備機を含めておよそ40機…………少ないな。()()()()()()()1()0()0()()()()、型式はそれほど古くはなかったが――

「アユハ」

 ふいに杏里に声をかけられた。ハッとなり、顔を上げると義両親が心配そうにこちらを見ていた。

「アユちゃん、大丈夫?」

「何か気になる事があるのか?」

「あ、いや…………」

 両親の問いかけにどう返したものか、アユハは言葉に詰まってしまった。まさか、そのまま考えていた事を伝える訳にはいくまい。アユハのこの()()の事は2人には教えていない。アユハにもこの力が普通でない事は理解している。

 自分を養子として迎えてくれた事にはもちろん感謝している。そのうえ、いろいろと気にかけてもらっているのに、さらに心配や迷惑をかけるような事はしたくなかった。同時にアユハの勘が告げている。このままでは危険だと。


「!」

「きゃあ!」


 その時、船体が激しく揺れた。江里が悲鳴を上げ、杏里にしがみつく。他の乗客の悲鳴も聞こえてきた。

「デブリの衝撃じゃないぞ、これは」

 杏里が顔を青褪めさせ、呟くように言った。アユハも頷く。

「恐らく、敵の攻撃が掠ったんだ」

「ええ!?」

 2人が慌てる理由がわからず、キョトンとしていた江里は、アユハの言葉に思わずといったように声を上げた。

「そんな……この船、沈んでしまうんじゃ……」

 ショックを隠せないように俯く江里を杏里が、掠めたくらいでは沈まない、軍が退けてくれるから大丈夫と、宥めるように言っていた。そんな2人の様子と船内の様子を()()、アユハは決心した。

「アユハ?」

「アユちゃん?」

 シートベルトを外し、立ち上がったアユハを見て、江里と杏里は疑問を浮かべた。そんな2人に微笑みを浮かべ、


「大丈夫。守るから」


 ただ一言、覚悟を残して客室を出た。

お読み下さり、ありがとうございますm(_ _)m

次話投稿は未定です

長い目で見守って下されば幸いです(^-^)

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