とある展開について
一週間かけて、小沢くんと二人で、小中高の全クラスをチェックしたが、見つからなかった。特に中高の教室をチェックするときは、目立ちまくりで…言い訳するのに苦労したよ…。本当に!!
「うん。この学校にはいない。はい、終了!!」
「えーっ…。 遠藤先輩に怒られる…」
「頑張れ! はっはっはー!!」と戦地へ向かう戦友を見送った。
一週間も小沢くんと一緒に学校内を歩き回ったおかげで…。
「若菜ちゃん? 小沢くんと付き合ってるの?」「若菜ちゃん…ちょっと趣味が悪い」「いいなぁ…若菜ちゃんが彼女なんて羨ましい」「小沢殺すっ!」「ちょっと、若菜ちゃん、小沢臭い」
とか、言われたい放題だった。
「でも、兎に角、私達の若菜ちゃんが帰ってきたっ!!」
姫グループのマスコットキャラの宿命なのか…。体中のいたるところをスリスリされる。
「「「「「「若菜ちゃん、キャワワ!!」」」」」」
そして、『キャワワ!!』で気が付いた。これって…ケット・シーと似てるよね? もしかして、魔力ある子って…人を魅了する力がある?? いや、そしたら小沢くんも対象になるはず。う〜ん。気のせいか…。
「こらスリスリしずぎ! 若菜ちゃんが困ってるでしょ!」と姫が注意してくれた。そして、自分の方に俺を引っ張ると、「若菜ちゃんは、良い匂いがするの!!」と、トンデモ発言をした。
クラス中の目を気にせず、プチ百合展開されていた俺だが、ふと教室を見渡すと、チラチラと…男子達が…俺が弄ばれている姿を見て、ちょっと興奮していたことに…気が付いてしまった。
コラッ! だから男はキモいんだよ…。お前らのために弄ばれてるんじゃないぞ!!
いや…違う。ここで俺を見ているってことは、少なくとも…俺に興味があるか、百合展開に興味があるか…。もしかしたら俺を見ている連中の中に、俺をこんな姿にした張本人がいるかも知れない…。
俺は、チラチラ男子の名簿を頭の中に構築していく…。あっ、クラスの男子、全員だった…。ならば…前かがみ男子もチェックしておくか…。
そして、いつものカフェテリア。ここは俺が物事を考えるのに適した場所だ。
今更ながら、俺は、元の世界に帰れるというか…男に戻れるのだろうか? 戻りたいのか? 男の時代…それほど充実はしていなかった。でも不満もなかった。今も…同じような感じだ。とある男に犯されるために…今いると…考えなければ…なっ!!
「ほら、ぼぉーっとしながら、食べてるから…お口にまわりに生クリームが付いてるわよ」
確かに、デザートのバナナチョコパフェを食べていたが…。子供じゃないのだ。そんなヘマはしないだろう…。
姫が人差し指でお口の周りに付いた生クリームをクイッとすくい上げ、パクっと食べてしまった。
「いいなぁ〜。わたしも生クリームつけようかなぁ〜」「うんうん、クイッとしたいし、されたいよねぇ〜」「わかるぅ〜。最近の若菜ちゃん、キャワワだよねぇ〜」
そんな駄目駄目な会話を聞きながら、俺って…。今の方が…。チヤホヤされてんじゃね? こっちの方が楽しんじゃね? って、思い始めたのだ。