ドッペルゲンガー
男のときには考えもしなかった女の子の苦労を実感しながら、桜と真帆が作ってくれた朝食を食べる。
キリキリとしたお腹の痛みが続くが、ここは我慢して笑顔だ。
「はい。お薬。我慢してないほうがいいよ」と姫が錠剤をテーブルに置いた。
そして食後のゆーくんを兼ねて、家まで送ってもらい、玄関先で別れの挨拶をした。
「ごめんね。ゆーくんも、お姉ちゃんたちと仲良くするんだよ」
「うん。おねーちゃん、やさしいから!」
確か、家族は…朝早くから出かけると言っていたな。ガチャリと鍵を開けて入る。うん、我が家の匂いだ…。やっぱり誰もいない。そして、ソファーに寝転がる。
「くっ、スマホがないと…こんな簡単なことも調べられないのか…」
生理の情報が知りたかったが、どうすることもできない。しかし、薬が効いてきたのか、痛みが幾分和らぎ…いつの間にか寝てしまった。
ピンポーン!
うん? 誰だ…。居留守を使うか? こっそりとドアスコープから外を見る。
えっ! お、小沢くん?? と、保健室登校の同級生・八千代 かおりだった。
「ど、どうしたの!?」
「電話に出なかったから心配したよ。あのね、ドッペルゲンガーが現れたんだって。WMOのメンバーは大慌てだよ。それで急いで来たんだよ!!」
「うん? ドッペルゲンガー?? 何それ?」
「簡単に言うとそっくりさん。で、肉体から霊が分離したとか言われるんだけど、本当は、異世界の…大人の玩具…の性魔道具を…誰かが使っちゃったんだ」
「性魔道具? 意味がわからないんだけど? そのドッペルゲンガーが、俺…わ、私と何の関係が?」
「小沢くん、落ち着いて…。もう、駄目ね、私が説明する。あのね。池上さんのドッペルゲンガーなの。それが全裸で…街を歩いてるらしいの…」
「は、はいっ!?」
「と、とても言い難いんだけど…その性魔道具って…」
回収した異世界の魔道具をWMOメンバーが、勝手に持ち出したらしい。そこまでは、わかる…。だが、何故に俺? その性魔道具は…オリジナルと寸分違わぬ肉体を持ち…。勿論、アンナ事をするための…性魔道具!! それが逃げ出したらしい…。
「いやぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁああああ!!」
絶叫した。キモい、きもすぎる!! 声も性格も肌の質感も何もかもコピーされるドッペルゲンガーの性魔道具…。使ったやつ、殺す…。
あまりの出来事に、精神が崩壊寸前まで追い詰められたが、どうにか立ち直る。
そして、休みの日なのに学校に向かったのだ…。