ガラス細工
その部屋にいたのは、保健室登校の同級生・八千代 かおりだった。
「小沢くん…な、なんで、裸!?」とパニックになる八千代。
「もしかして、八千代さんも、魔力持ち?」
「えっ!? うん、はい。で、ど、ど、どうしたの、小沢くん???」
「とりあえず、落ち着いて。小沢くんは、猫の妖精ケット・シーに猫にされちゃったみたい。で、魔力持ちには猫に見えないから…小沢くんが…ただの変態に見えるの。わ、わかってくれた!?」
「ご、ごめん…意味がわからない」
「う〜ん。どうすれば…。あっ。小沢くん持ってみて、猫みたいに軽いから。それで普通じゃないってわかると思う」
みゃ〜、みゃ〜と鳴く裸の小沢くんを恐る恐る持ち上げる八千代。
「本当だ…軽い…」
「確か、小沢くんが言うには、そのうち人間に戻るっぽい。と言う訳で、あとは任せた…」
「あっ。待って! これ、置いて行かないで…」
これ以上、小沢くんの素っ裸を見ていたら、理性が吹っ飛んで…あんなこと、こんなことを…してしまいそうなので、八千代に押し付けて逃げ出した。
はぁ…ドキドキしたなぁ…。つるぺたな胸を撫で下ろす。
「若菜ちゃん、どうしたの!?」
「ひっ!」
急に呼び止められて、全身で驚く。驚きすぎて…恐らくイエローマークが…。
「う、うん…。あっ。森重先輩…。こんにちは…」
「もう…堅苦しいわね。繭って呼んでよ…」
流石に高校1年の年上を呼び捨てにはできない。
「で、どうしてんですか?」
旧校舎から小学校である初等部の校舎に入ったのだ。高等部の森重がいるのは、良からぬ用事があるに決まっているのだ。
「これ、これをWMOに持っていこうとしたんだけど、若菜ちゃんに預けとくね」
雫のような形の小さなガラス細工を渡された。
「これは?」
「多分、魔道具かな。私は魔力がないからわからないけど、多分そうかなって…」
もう一度、手のひらのガラス細工に視線を向けるが、俺にもさっぱりわからない。
「うん、WMOのメンバーに渡しておきますね」
今、WMO事務室に戻りたくない。後で良いだろう。