頑張れ理性
「という訳なの…。若菜ちゃん、助けて」
両手を困った顔で合わせながら姫が頼み込んできた。どうやら今度の土曜日に、子守を頼まれたらしい。子供相手がどれほど大変なのかは、昨日、焔の相手をした俺にはわかっている。
ぶっちゃけ、めんどい。う〜ん…。何か良い方法は…。
ピコン!っと、閃く。そうだ。姫の自称親衛隊である井口 真帆を呼ぼう!! 姫の家に行きたがって出し…。
「うん。えっと後二人ほど連れて行くけどいい?」
「二人も? うん、大丈夫よ!?」
そのとき、俺の足首に何やらスリスリと、擦り付けてくる何かがいた。
「みゃ〜お」
「「「「可愛い!! 猫だ!!」」」」「「「「なんで教室に猫がいるの?」」」」
猫を抱き上げた姫を中心に女子が集まる。
猫? 俺には素っ裸の小沢くんにしか見えないんだけど? それにしても…女子たちは…小沢くんを軽々しく持ち上げてるよな…。なんで?
そして気がつく。これが猫の妖精ケット・シーの仕業か…。
「あの…皆、ごめん。その猫の持ち主、知ってるんだ。返してこないと…」
俺がそう言うと、残念そうな顔をするが、素直に猫小沢くんを渡してくれた。俺は猫小沢くんを抱きかかえると、一般生徒の立ち入りが禁止されている旧校舎のWMO事務室に向かった。
うぅ…。魔力を持たない女子たちにはモフモフなのかも知れなけど、俺には裸の小沢くんなのだ。つまり裸の男を抱いているのだ。キモい…。しかし…両脇を両手で支えても軽々しく持ち上がる…不思議だ。あれ? 持ち上げたら小沢くんのアレが目の前に…。
ドックン…。
今、心臓が高鳴り、胸が熱くなったよね? アレレ? もしかして…男のアレを見て…興奮した??
いやいや…そんな…ば、馬鹿な…。
体が火照る…。見ちゃ駄目だと思うと、余計に見たくなる。つい最近までお馴染みだったアレが…何故にこうまで…興奮させるのだろう…。
英国風紳士の服を着たゴブリンの言葉を思い出す。
『幼馴染の可愛い女の子。おっぱいは大きく、目はぱっちり。優しく良い香りがして、勉強もスポーツもそこそこの健康優良児。出会いは小学校6年あたりで…そんな…ちょっとエッチな彼女が欲しい』
【ちょっとエッチ】…。なんたるパワーワード? お前が原因かっ!!
やばい、目が…離せない…。何なら…触りたい…。し、しかし…ここは、理性、お前が勝つんだ!! 頑張れ理性!!
どうにかこうにか…WMO事務室に辿り着く。
「た、たのもぉ〜!!」と声を荒げドアを開けた。