第6話 ーーー幼女とケントそして異世界へーーー
「あっ!ミキちゃん迎えにいかなきゃ」
ケントは、幼稚園の迎えの時間が過ぎてる事を思いだした。
携帯の時間を見て、20分過ぎてる。
幸枝さんは、今週、準夜勤なので、迎えを頼まれていたのだ。
バックから財布を取り出そうとしたら、
「そうでした。幸枝殿は、仕事でしたね。ここは、私が、払います。ケント殿お行きなさい。私達も、そろそろ、行きましょうか? 帰りは送りましょう」
京子さんも、すっかり忘れていたようだ。
「キシキ君、ごめんね。長くなっちゃって」
アマカワさんが済まなそうに言う。
「用事があるなら、言えばいいのに。でも、ありがとう。相談にのってもらって」
シラトリさんは、いまいち素直じゃ無い。
「いいよ。こっちこそ、それじゃ」
「ミキちゃんってだれですか?」
「ミキ殿は……………………」
背後にそんな会話が耳に入る。
京子さんは、アマカワさんの質問に答えているようだった。
店を出る。辺りは薄暗くなっていた。
時間がないので、ケントは走っている。
ケントにとって、同年代の人、しかも、女子と話をしたのは久しぶりなので、少し興奮してる。
自分でも、結構、上手く話せたと思う。
(でも、なんでだ?いつもなら会話も出来ないのに……あの二人には、そんなに緊張しないで話ができた。京子さんがいてくれたからか?うーん、わからない。ミキちゃん、怒ってなければいいけど……)
その予想は、甘かった。
幼稚園に入ると、ミキちゃんがふくれっ面で出てきた。
「ケン兄ちゃん、遅いよーー!」
やはり、怒っていた。小さな体を左右に動かしながら、抗議してる。
「ごめん。ごめん。ちょっと用事ができちゃって……」
何とか許してもらおうと、ご機嫌をとる。
「夕飯、ハンバーグにするから、ゆで卵もつけるから」
この二品は、ミキちゃんの大好物だ。これで、駄目なら後がない。
「うーむ。わかった。あと卵焼きも、甘いやつ」
「もちろんさ。ちゃんと作るよ」
「プリンも食べたい」
「デザートってこと? ごはんちゃんと食べれたらね」
「違うよー。ごはんと一緒だよ」
「うーむ、それはダメだよ。それなら、トマトをつけちゃうよ」
「えっ〜やだ〜。トマト嫌い!」
「じゃあ、プリンは、ご飯を食べてからね」
「わかった」
交渉成立だ。
先生達にお詫びをして、二人で家に急ぐ。
あちこち動き回って危ないので、おんぶすることになった。
ミキちゃんは、今日、幼稚園での出来事を、一生懸命話す。
公園をショートカットして行くと家に近いので薄暗くなった公園を歩く。向こうから、さっきの女子達が来た。
どうやら、目当てのお守りをゲットしたみたいだ。 向こうも気がついたみたいで、京子さんが手を振っている。
合流すると、いろいろ質問責めにあった。
そして、
「ミキちゃん、かわいいね」
「ミキちゃん、マジ天使みたい」
「おんぶしてもらって、これは、これで……」
いろいろな賞賛を浴びて、ミキちゃんは自慢げだ。
その時、妙な感覚が走った。
電線で休んでた鳥達が一斉に飛び立つ。
公園の木々が、風もないもに揺れ出す。
「いかんっ!」
みんなの足元が赤く染まった。
みんな、 びっくりした。
京子さんのこんな真剣な顔初めて見た。どこにしまってあったのか、腰のあたりから長い棒みたいのを取り出し、みんなに握るように言った。
「強く握って!絶対離さないで!」
必死に叫ぶ。
みんな、言われるままに、差し出された棒を何とか握った。
身体が動かない。
ミキちゃんは、俺にしがみついたままだ。
「こんな短期間に、再度の召喚とは。あり得ない。この魔力、やはり奴の仕業か…。座標位置をずらさなければ、全滅だ……」
最後の方は聞き取れなかった。
ケント、コトミ、リリナ、京子、ミキ。
この五人を包み込むように、激しく光った。
そして、この五人はこの世界から消えた。