8話 寝取られた婚約者 (前) 屋上屋
次の朝。
俺は、また身体を鍛えていた。
今日こそ!腕立て伏せ10回だ!
その前に腹筋20回!
「アレク!」
「先生…。おはようございます」
また階上の窓に腰掛けている。
膝上のローブなので、太股が覗けている。
絶対誘っているよな。
「身体を鍛えるのは良いが、あまり無理をするでない。徐々にやるのだ」
階の窓から、すーっと舞降りてくる。
上を見たらいかん。煩悩退散!煩悩退散!
「はい」
体は虐めるだけでは駄目で、休養を取ること方が良く育つぐらいは知ってる!
「そのうち普通に戻ったら、鍛えてやるからな。あっちの方も」
あっちって。
「ふふふ。冗談じゃ、冗談。だがな。鍛えるのは身体だけで良いと思うな。明日より魔法師の修行も再開するぞ」
「待ってました!」
「よい心がけだ。身体強化魔法と低級魔鑑定の封印を解いてやろう」
むん!
ランゼ先生は、両手の人差し指と中指を揃え、十字を作ると、気合と共に切り離した。
カーーンンン…ティカン…クヮーーンン。
頭の中で教会の鐘の音が響くと、一瞬身体が熱くなり、やがて静まった。
鑑定は良いとして…。
身体強化ねえ…3倍の力、3倍の速度が出せる。もちろんペナルティーとして反動が来ると…。
「状態を確認してみろ」
「えーと、ステータス?」
「なんだ知らぬのか」
──ステータス展開って念じるんだよ。
ああ、念じるのね!
って、誰だよ。
ああ、前の持ち主か。
何時出てくるか、いまいち読めん。
「いえ。できます!」
─ ステータス展開 ─
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アレックス・サーペント
・基本
人間:男性16歳
位階 : 貴族子弟(未叙爵)
婚姻 : 未婚(仮婚約中)
・状態
クラス: 魔法師 レベル21
生命力: 88/ 777[ 88]
体力 : 60/ 188[ 60]
魔力 : 257/1650[257]
素早さ: 35/ 100[ 35]
精神 : 721/ 721[721]
異常 : 慢性ステータス劣化([]内は劣化時上限値)
・
・
・
・スキル
剣技:LV 8 槍技:LV 6 弓技:LV25
乗馬:LV 8 回避:LV18 索敵:LV23
・
・
・
火炎× / 炎弾× / 焔陣× / 爆焔×
烈風× / 風壁× / 旋風×
水礫× / 水斬×
土槍× / 土銛× / 版築× / 縮地×
回復 / 強壮×
解毒 / 治癒
詠唱短縮 / 無詠唱 / 瞬間発動×
結界×
獣懐柔 / 獣操縦
身体強化 / 金剛×
魔鑑定(初級) /魔鑑定(低級) /魔鑑定(中級)×
魔収納
・称号
聖者の曾孫
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ふむ。ステータスは、それほど悪くなさげだが。
なんだ慢性劣化って?
要は死にかけた後遺症ってことか?
そうしか、考えられない。軒並み上限値が一時的に下がっているわけか。
ちなみに一般成人男性並が100ってことらしい。
とっとと体調を戻さないとな。
あと”×”ってなんだ?
「えーと。先生!スキルに×が付いてるのがあるんですが…」
「あぁ。それは元は使えていたが、今は使えないと言うことだ」
えぇぇ…?
じゃあ、ほとんど使えないじゃないか。欠陥だらけかよ…
「なぜ、こんなに使えないのがあるんでしょうか?」
「大体は、私が封印している。アレックスは、逸材でな。修行を始めるや否や、多くの魔法を使えるようになった。だがそれでは成長が歪になるからな」
こっちは後遺症じゃなく、封印されてる…のか。
教育的見地ぽい。
ふむ。腹黒いけど、少しはまっとうな教育者だな。
「へえぇ、凄かったんですね、元の俺」
「ああ、そうだ。これから手取り足取り腰取り、懇切丁寧に育成するつもりだったが。どこで間違ったかなあ…」
腰は使うのか?根本的に問題がある気がするが…。
「確かにすごかったがなあ。今のおまえもステータスとしては、なかなかの物だ」
「えっ、どの辺りがですか?」
「生命力だな。アレックスは最大でも100ちょっとしか無かった。その点アレクがその身体に入って、今は劣化しているが、回復すれば相当増えていることになる。早く元気になってくれ」
おおう、すげーー。今は770だから7倍に増えてる。
「はい。がんばります」
「うーむ、良い返事だ。生命力が高ければ、人体実験しやすいからな」
……くぅ、さっきの教育者っての無し!!このマッドサイエンティストめ!
「ところで、俺、仮婚約中ってことになっているんですが…」
婚約って、仮の結婚だよな、さらに仮って一体?
「それはな…伯爵家嫡男ともなれば、生まれて直ぐ婚約する例も珍しくない」
政略結婚ということか?
「それより、おまえに客人だ…ではな!」
おおっ、飛んだ!
ランゼ先生は、宙に浮かび上がると、2階に戻って行く。
へえ…舞い降りるだけでなく、上にも行けるんだ…
飛行魔法ってやつだな。
ランゼ先生、カッコいいなあ…パンツが見えなければ。
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訂正履歴
2016/04/02 細かく訂正
2016/04/03 サブタイトル(話)を起(4部)から前(3部)へ変更
2016/04/16 []の表記がわかリにくいので、劣化時上限値に変更、その関連も変更