73話 海だ! 水着だ! (前)
季節は真夏!
我がセルビエンテの町に居て、やるべきことは決まっている。
ここは、町から少し離れた海岸の砂浜。
一般人立ち入り禁止!
サーペント家のプライベートビーチだ。
流石領主。祖先?の皆さん、ありがとう!
ところで、まだかな?
俺は、さっさと着替えて、先生が土魔法で作ってくれた海の家モドキの広間で、皆が来るのを待ち構えているところだ。
「ロキシー! 走っては駄目だ」
ドタバタと足音が続く。
「アレクぅーー!」
間仕切りの向こうから、影が飛び出してきた。
俺の首に抱き付く。
「おおう」
強化されたおかげで、身長140cmに達したであろう、ロキシーのダイブを難なく受け止めた。優しく引きはがす。
「そだ! アレク。これ、どう? にぁう?」
似合うかと言われてもなあ。
ロキシーの着けているのは、囚人服のような水着。セルビエンテでは、昔の前世のように医療目的でしか海水浴をしない。その場合のご婦人向け水着は、専らのロキシーのような、ほぼ身体の線が外から見えない野暮ったいやつだ。
「うん、可愛いぞ」
ロキシー自身が。
「やった!!! カワイイ」
大きい声で叫んで、再び抱き付いて来た。
その声を聞きつけたのだろう。
「こちらでしたか。もっ、申し訳ありません」
追いかけて居た、ゾフィがかなり恐縮している。
その姿!
おおおぅ。ホルターネック!
バストを持ち上がる紐が、肩じゃなくて首に懸かるヤツ。
そして、菱形の穴が開いている──でかい! 谷間じゃなくて峡谷だ!
しかも俺に向かって身体を折ったので、胸が重力に引かれ、思いっきり強調されてる。直立に戻ると、腹筋が凄いのにきゅーぅっと絞られて、そこっから腰がバーーーン。
スーパーモデルでしょう。脚も長ーー。
いかんいかん。
「あっああ……気にするな! ゾフィ」
「気にするな! ゾフィ」
「こらっ! 人の真似をしたら駄目でしょう!」
「真似スタラメっしょ!」
少し劣化したな。
まあ、あれだ。幼児期にありがちな行為だな。こうやって、言語能力が発育しているのだ。
「ロキシー。離れてくれ」
「はい」
素直に抱き付きを解く。
「痛い! 痛いよ、ゾフィー」
2度と逃がさないように、かっちりロキシーと腕を組んでいる。
「ロキシー殿は、アレク様とランゼ様の言うことは、ちゃんと聞くんですねぇ」
「だって、大好きだもーーん」
ゾフィが、はあと溜息を吐いていると。
「アレク様。お待たせしました」
ユリだ!
すげーー。
まさに悩殺!
白の紐のないタンクトップ・ワンピース。
見事な胸の隆起を、水着が絶妙な比率で覆っており、上半身の露出は少ないものの、色気がハンパない。さらに、ハイレグから突き出た脚線美が溜息を催さずにはいない。
何度も全裸を見ているのに、なまめかさが大増幅してる!
良いぞ、俺の趣味!
というのも。ゾフィをはじめとしたメイド達の水着は、俺の意向を受けて先生が、皆に誂えた物だからだ。
ユリのようなメリハリが効いた身体には、すっきり線が出るワンピースが似合う! 持論だ。
しかも、腰の張り出しが……生唾の湧き出しが止まらない。
だが、今は俺も水着。反応するとまずいことになる。でも見ずには居られないし。
「アレク。ずーとユリ見てる」
「チーフは綺麗だからだなあ」
「ロキシーも綺麗になる!」
キミたち。小声のつもりだろうが、丸聞こえだ。おかげでユリが紅くなってるだろうが。
「レダさんから、先に行って下さいよ」
「別に良いですけど……アンさん、背中にくっつかないで」
2人がひとかたまりで部屋に入って来た。
青と赤のビキニだ!
いいねえ!
ユリが艶やかさを匂い立たせれば、レダとアンは年相応の目映い健康美を放つ。細身ながら胴が絞られたレダに、幼児体型を残しつつも胸がでかいアン。
いやあ。かなり粒ぞろいだね。ウチの館。
「うるさいぞ。さっさと中に入れ」
そう、後ろから来たのは、ランゼ先生だ。
ユリに匹敵する、肉体美…を期待したのだが。
黒いビキニの上に、ショールを羽織り、腰にはパレオを巻き付けている。
ええぇぇ。
実年齢はともかく、見た目は超絶素晴らしいのに残念至極!
横から低い声で、ずるいとゾフィの声が聞こえたのは気のせいじゃないだろう。
「なんだ! アレク。その顔は、これを脱いで欲しいのか」
「いや、良いです!」
つけ上がらせないようにしないとな。
「ふふふ……まあいい。アレク、こっちへ来い」
「はあ……」
先生は俺の左に立った。
何するつもりだ?
「動くなよ……」
何か小声で唱えると、俺の顔前に左掌を翳した。気配では右掌は俺の後頭部だ。俺に魔法を掛けているのは間違いない。問題は、何の魔法かだ!
その時、先生の掌がうっすら発光し始めた。すかさず、すうっと降ろしていく。さらに跪いて、足先まで降ろしきった。
「終わった。もう良いぞ!」
「それで、俺に何をしたんですか?」
「ああ、お前に日焼け止めの魔法を掛けた。その肌色から一切焼けない」
「はっ?」
「焼けない」
おなじみの繰り返し呆けは無視だ!
「ちょっと、待って下さい! 俺は日焼けして、学園に戻ったら自慢する予定なのに。なんてこと、してくれるんですか!」
「あっ、アレク怒った!」
いかんいかん。幼女の前だ。冷静に冷静に!
「アレクは今が1番美しいのだ。日焼けするなど言語道断、誰も望まん!」
「なっ」
即座に反論しようとしたら、ロキシー以外はみんな頷いて居る!!!
ガーンと擬音が聞こえてきそうなぐらい、精神的衝撃が酷い。
なんだ、君達は連帯してるのか? 洗脳されているのか?
「美しいとか、男は別に気にしなくて良いんですよ! 解除して下さい、先生!」
「ふん、もう遅いわ。72時間は、私でも何ともならん」
くうぅぅ。
床に、がっくりと這いつくばった。
「アレク、カワイソーー。なでなで」
ロキシーに同情されちゃったよ……余計に落ち込む。
「で、他に焼きたくない者は?」
ユリとレダにアンまで手を挙げた。マジか……。
「残念だったな、アレク! ふふふ、ははは……」
畜生!
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