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69話 模擬戦再び (前) 奇を以って合し

「皆様、こんにちはぁぁはぁ!!!!」


 音が割れまくった。


「すみません。再びこの日が来るのを待ち焦がれて興奮しすぎました。戦士科3年、戦闘術研究クラブのグラハムです。大好評を得ました前回の模擬戦から1ヶ月。自治生徒会長エリーカ・ランデルヌ男爵様のご許可を頂き、本日も実況させて頂けることになりました」


 そう。今日は3月24日。2回目の模擬戦の日だ。

 第2練兵場には、多くの生徒が詰めかけている。

 観覧席から大きな歓声が上がる。


「はい。本日は、先頃子爵に成られましたアレックス卿(ロード・アレックス)こと魔法科2年のアレックス・サーペント様と、戦士科3年のラウール・メドベゼ準男爵様の一戦をお送り致します。そして本日も、解説には魔法科3年のガルドルさんに来て頂いています。よろしくお願い致します」

「お願いします」


「ガルドルさん。あれから何か反響がありましたか?」

「まっ、まあ。なかなか、好感触でした」

「ええ、私の周りでも良くあんな魔法を知ってるなあって」

「はははは……」


「さて模擬戦開始まで余り時間もありません。そろそろ試合のお話を致しましょう。以後は、選手の方の敬称を略させて戴きます。魔法師とは闘っているガルドルさん。私、メドベゼ選手と同級同科ですので、彼が闘っている姿はよく見ますが。今日は、魔法師と戦士のという異種兵科の戦いなわけですが。どういう展開になるでしょうか」

「そうですね、魔法師の部隊と戦士の部隊では、圧倒的に前者が強い、そう言われています。模擬戦もほとんど行われません。まあ確かに槍と、魔法では威力も届く範囲も違いますからね」


「と言うことは、サーペント選手が有利ということでしょうか?」

「普通ならば、そうです」


「普通なら?」

「この模擬戦の特別ルールである、試合場が鍵を握ります」

「一辺10mの正方形コート……」


「そうです。たった10m、2秒の距離しかないのです。これは魔法師にとっては、攻撃力の差を無にするだけでは済みません。これも普通なら槍の一閃で瞬殺です」

「えぇーと。結局どっちですか?」

「私には分かりません!」


 観覧席が、一瞬静まる。


「はあ? いやいや。解説をお願いします」

「一撃を当てればメドベゼ選手の勝ち、避ければサーペント選手の勝ち、とまでしか言えません」


「……なるほど。おっ。東の入場口から選手が入場してきました。メドベゼ選手です。その後は、ゼノビア教官です。今回も審判を務められます

「メドベゼ選手は、鎧姿ですね」

「鈍い銀色……ミスリル製の板金鎧プレートアーマーですが……なにやら紋様が! ガルドルさん」


「ええ。よく似たものが、この観覧席の壁面に施されています。魔法を減衰させるものと思われます」

「なるほど。サーペント選手の魔法に対策してきましたね。これでメドベゼ選手有利になったでしょうか?」

「うーん。まあぁ。そうですが……」

「なんですか?」


「ある程度、減衰はできるのでしょうか、最新の技術を用いても無効化は不可能と言われています。とは言え、半分でも弱化できれば有利になります」

「なるほど……そして、反対側からサーペント選手が現れました!! 凄い歓声です。主に女生徒の甲高い声ですね。あっ、あれ?、ローブではなく革鎧レザーアーマーです。どっ、どういうことでしょう」

「うーーむ。サーペント選手は、やることなすこと予想できませんね。革鎧もそうですが、黒い手甲ガントレットと黒い脛当クネミードと言うか具足ソラレットも、かなり気になりますね」


「そうですね。分からない部分は、戦闘中に解明されることでしょう。さて、間もなく試合開始ですが。あれは何でしょう、アレックス選手……何か棒のような物を出しましたが。それを教官に渡しました。あれは、何ですか?」


「槍でしょうか?」

「槍ぃぃい? 魔法師が槍? まさか、あれで闘うんでしょうか?」


     ◇


 練兵場に入場すると、上の方からプレッシャーが掛かった。そちらを見上げると貴賓席の方だ。

 昨日までなかった四角い枠のようなものができており、御簾が下がっている。その奥を視てみたい気がするが、関知魔法は跳ね返された。


 さてと、顔を正面に戻すと、向かい合った、メドベゼ先輩が苦々しい顔をしている。


「サーペント。その姿、何の真似だ」


「あれ? 何か装束に制約ありましったけ?」


「そういうことを、言ってるわけじゃない」

「そうだな、私にも聞かせろ! サーペント!」


 ありゃりゃ。ゼノビア教官も向こうの味方のようだ。


「こういうことです」

 魔収納から、先が丸まった棒っきれを出した。


「むっ。なんだこれは? ただの棒にしか見えないが」

「ああ、ただの棒かどうかは、お答えしかねますが、樫の木から作りました。直径35mm、長さ1.2mです」


「メドベゼ。サーペントは、こういうヤツだ。悪気がないとことが、始末に負えん」

「むむむむ!」

「余りいきり立つな! こいつの手管に飲まれるぞ」

 えーと。思いっきり、あっち寄りなんですが。


「まさかそれで、俺と闘うつもりではないだろうな!?」

「規則に反しない限り、どう闘おうと、俺の自由のはずですが?」


 メドベゼは瞑目し、ふぅーーと長く息を吐いた。

「確かにな。好きにしろ! ちなみに我が得物はこんな長さっだ!」

 ブォンブォンと、2回振り回した!


 3m程だなと目測してると感知魔法が、3m15cmと知らせてくれた。便利で良いね最近憶えた、この中級のヤツ。

 そうか、これで3サイズが……。後にしよう。一瞬ゼノビア教官を見ようとした俺自身が恐ろしい。


 では、始めるぞ。


「模擬戦、はじめ!!」


 うぉーーーーらぁあああ!!


    ◇


 何でしょうか? 正面の確か貴賓席があった場所ですわね。御簾というのでしょうか、こちらからは中が見えませんが。なにやら不吉なものを感じますわね。


「……ヤさん、フレイヤさん」

「はい、ジャンヌさん。少し考え事をしていました」

 集中が削がれてしまいましたわ。


「フレイヤさん。あなたのお兄さん。模擬戦がお好きですのね」

 若干カチンと来ます。

 しかし。ここは観覧席、余り大声を出すのは、はしたないですね。


「ええ。ジャンヌさん」

「あんなに綺麗なお顔とお姿なのに、それにしても、今日はローブではありませんのね」


 はあぁぁぁああ。そうなのだ。

 偏頭痛が……。


 あの背の高い、お兄様の専属メイドが帰ってきたからと言うもの……。

 楽しい晩餐の後のひとときも、ナプキンでお口を拭われるや否や、すぐ御館へ戻られてしまって。残念でならないこの頃です。


「始まりますわよ!」


     ◇


 怒声と共に、銀色の塊が突進してきた。巨体に似合わぬ勢いに、背筋を冷たい何かが駈上ってくる。反射的に棒を縦に構え、魔力を通わせ、強化!


 突きだ、裂帛の気合いと共に突きが来た!

 ガッシィィ!!ギギィ。

 

 鈍色の穂先を無心で左に払う──棒の腹で擦過させて、鋭鋒を横に逸らせた。構わず迫る肩のぶちかましを、風圧を感じながら右に体を入れ替えてやり過ごす。

 地面を滑りながら、棒を左に立て、次撃を跳ね返す。

 

 そのまま左手を離し、横薙ぎに一閃。

 ちっ! 側頭を狙った振りは、躰を反らして避けられた。

 しかし、ヤツの躰も止まった。


「やりますね、先輩!」

「ふん、おまえこそ。その棒は何の冗談かと思った! がな」


 ブォーン。

 唸りを上げる必殺旋を、躰を屈め避ける。

 狙っていた、隙の多い2連旋は来ない。突きを放とうと待ち構えたが、空振りに終わった。


     ◇


「キャアァアーーーー」

 悲鳴が一斉に上がる!

 お兄様のファンが多いようですわね。

 まあ、相手はあの筋肉だるまです。容姿では不戦勝ですし。当たり前なのですが。


「凄い、凄いよ! お兄さん、魔法師なのに!」


 無論です。興奮しすぎです、ジャンヌさん。お兄様なのですから!

 そう言えたら、すっとするのですが。

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