表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/224

61話 帰還

 園外演習が終わり、結果的には俺達アレクズは、減点0で同率優勝になった。

 表彰式などは、来週ということで、一旦学園に寄って、屋敷に帰ってきた。演習は2年の魔法科だけなので、フレイヤはまだ学園にいる。


「お帰りなさいませ。アレク様」

 麗しい笑顔で、出迎えられる。


「ただいま。ユリ!すぐ風呂に入りたいが」

「もちろん。ご用意できております」

「じゃあ、一緒に入ろう」

「はい」

 嬉しそうに、いそいそと付いてくる。


 脱衣所に入って着ている物を、全て脱がして貰う。

 俺の服を洗濯に回すため、珍しくアンが入って来た。ちょうど俺が全裸になった所だ。まじまじと見ている。

「なんだ? アン。一緒に入りたいのか?」


「えぇぇぇえ? あっ、ああ。いいんですか?」

「またにしなさい」

 ユリの穏やかに拒絶する。


「はっ、はい。しっ、失礼します」


 アンがせかせかと焦って出て行った。

「アレク様。からかっては可哀想です」

「俺の裸をガン見するからだ」

 フフッと笑った。


 フウゥゥーーー。良い湯だ。

 王都の水は柔らかいな。首まで使っていると……。

「では、少々お待ち下さい」

 ユリが、浴衣よくいに着替えようとしている。


「ユリ。何も着なくて良いぞ」

「まあ……ふふふ」


 前に手拭いを当てて、ユリが浴室へ入ってきた。

 少し紅潮してるところが初々しくて良いなあ。


「ユリも入れ!」

「はい」

 桶で前に湯を掛け、手拭いを畳んで立ち上がる。

 ううむ。何度見ても素晴らしい体型プロポーションだ。


「少し前に詰めて下さい」

「ああ」

 そう答えつつ、最小限しか開けてやらない。


 浴槽を跨いで、背後に入ってくる。


 躰が否応なく密着し、ユリのいろいろな部位が俺の背中を擽りながら、身を沈めた。

 ざーっと湯が溢れる。

 そのまま抱きついて来た。


 おおう、肉悦肉悦。


「此度、ユリは淋しゅうございました」

「俺もだ。たった2日間だったがな」


「何倍にも感じました。ご無事でお戻り大変嬉しいです。危ない目には遭いませんでしたか」

「ははっ。学園の演習だぞ」

「そうですが……」

「まあ、仲間も居たしな」

「そっ、それが逆に心配で」


「ははは、いヤツ。可愛がってやろう。前に来い」

「キャッ。ああ……アレク様」


     ◇


 さっぱりしたあと、軽く遅めの食事を済ませ、先生の部屋に行く。


「早速、お楽しみのようだったが」

「はい。ユリとは暫くご無沙汰でしたので」

 ソファに座る。


 ふん。先生は鼻を鳴らした。

 恥ずかしがらないのが不満らしい。


「私の方も、間が開いているぞ?」

 どこまで本気なんだか?


「では、そのうち」

「つまらぬ。それはともかく……手を出せ」

 出した俺の手を握る。

 ステータスのチェックのようだ。


「ほうぉ。あれだけの魔獣を斃しても、レベルはそんなものか。お前も成長したものだ」

 結構経験値を稼いだのに、ステータスが上がらない。つまり、レベルが高くなってきたということだ。


「それから。特に身体に異常は無いな。お前が気を失ったときは、かなり驚いたが、先ずは良かったな」

「はい」

「あの娘達も、良く手懐けていたしな」

 手懐けるって。ペットじゃないんだから。

「1人は召喚魔法師だったし、中々の成果だ。お前は自分の容姿をさほど重視していないが、こういう所で効いてくるのだ」


 分かっていないわけではないのだが。素直に認めたくない。

「はあ……」


「ところで、デミ・サイクロプスを斃した熾焔陣だが、ハーピィの時とは段違いだったが?」


「……」

「何か見たのか?」

「俺の額から何か滲み出て……アレックスになって。向かい合って魔法を放ち……」


「やはり……再受肉」

「再受肉? ……先生?」


 先生の端正な顔が、崩れるように一際歪む。前屈みになって、長い黒髪がバサッと覆い被さる。部屋が一層昏くなった。丸まった背が、小刻みに揺れている。


 禍々しさを感じて、背筋が凍る。


「ふふふ……ははは。そうか。ついに発動したか!」


 心底嬉しそうな箍の外れた笑顔──狂科学者マッドサイエンティストの本性が出たようだ。


「待っていたぞ。この時を!! 私が、お前に─いや、お前達に求めていたもの──共鳴魔法がついに発動したのだ!」


 あからさまな興奮具合だ。


「共鳴──魔法?」


「そうだ!」


 先生の説明が始まった。


 魔法共鳴とは、一言で言えば法力が異常に高まる現象のことらしい。


 一般に法力と言っているのは、魔法複素インピーダンスの逆数だ。その複素なんちゃらは、簡単に言えば、魔法が発動するときの抵抗のようなもので、小さい方がより強力な魔法が使える。


 話が長いので端折ろう。


 魔法複素インピーダンスは、1人の魔法師でも魔法の属性によって異なる。属性によって魔法周波数が違うからだ。だから、どの魔法師にも、非常に少ない魔力で発動できる魔法が存在する可能性がある。

 しかし、実際にはそのようなことは起こらない。周波数に揺らぎがあるからだ。


 そこで共鳴だ。


 複数の魔法師が厳密に同時に魔法を発動させれば、それがどのような魔法周波数であっても、魔法複素インピーダンスをごくごく小さくできる。


 それによって、僅かな魔力で強力な作用力を得ることができるのだ。

 つまり共鳴魔法とは、強大な法力を備えたと同義となる。

 そう言うことならば、大体分かる。


 無論、それができる魔法師の組み合わせは、非常に稀だ。


 アレクとアレックスだ。


「共鳴すると言うことは、複素共役関係にあるということですね」

「ああ……」

「しかも、どのような周波数でもと言うことは、俺とアレックスが特別な関係、魔法複素インピーダンスの係数が対称関係だと言うことですね」


 面白い!


「ほう、驚いた。この問答に付いてこれるとはな」


──私も訳しているけど、ちんぷんかんぷんなのに。流石数学は学年1番!。


[別に大したことない。電気工学を少し学んでいれば類推できることだ。LC共振とかの概念だ]


「ん? アレックスか?」

 勘が良いな、先生。


「はっ?何がですか?」

「なんだ違うのか……」


 先生の部屋に最初に行った時の、謎の発言が甦ってきた。

『話を戻そう。アレクがアレックスに完全に同化してしまっては、意味がない。つまりアレクの要素を残す必要があったのだ』


 まさか……。


「先生。俺とアレックスが複素共役体コンジュゲーターになったのは、先生の操作によるものですか」


「いや、必然だ……迎魂した際に依り代となった物の複素魔法インピーダンスは、等値になるか共役になる。先に言っておくが、お前を共役体とするために、私がアレックスを死の病に追いやったと言う推理は的外れだ」


──うん。それは無い。


[本当に無いのか?]


──私が、断食し始めて弱っていった時に、それはそれは丁寧に看病してくれたしね。


[わかった!]


「では効きますが、アレックスが病気にならなければ、どうやって共鳴魔法を?」

「レダを共役体するつもりだった!」


「あなたって人は……」

「残念ながら、人ではない」


 ふん、いまさらか。


──────────────────────────────────


 端折った部分


 魔法複素インピーダンスは、実数定数項α、虚数比例項β、虚数逆比例項γの3種の係数パラメータで決まる。

 大小関係的には、|β|>>|α|、|γ|>>|α|だ。


 係数の組み合わせによって、どの魔法周波数でその絶対値が小さくなるかが変わる。


 魔法複素インピーダンスが小さくなるのは、魔法周波数fとすると、|βf-γ/f|が小さくなるときだ。この式はf高ければβが効き、低ければγが効く。つまりβとγが決まっているので、魔法複素インピーダンスが小さくなるf、つまり魔法周波数も決まっていると言う意味だ。


 つまり、3種のパラメータで、どの魔法が発動しやすいかが変わる。魔法師に得意な魔法属性があるのは、この所為だ。


 ランゼ先生の観察に拠れば、優れた魔法師とはαの絶対値が小さい。ただ、その場合でもβかγの絶対値のどちらか大きい。

 つまり、使える魔法の規模には限界があると言うことだ。しかも、魔法周波数も使う度に、揺らぎがあるから、常用はできない。


 そこで共鳴だ。


 要は複数個体で周波数を同調できると仮定すると。

 複素共役関係で有れば虚部が0となり、魔法複素インピーダンスはαとなって小さくなる。


 さらに、いかなるfでも共役複素関係であるためには、係数がα1=α2,β1=-β2,γ1=-γ2であれば良い。魔法複素インピーダンスは、α1+α2+j{(β1+β2)f+(γ1+γ2)/f}となり(jは虚数単位)、小括弧の中はいずれも0なので、=α1+α2となって、fに依存しなくなる。


 これが、俺とアレックスが特別な関係、魔法複素インピーダンスの係数が対称関係ということだ。


是非是非、ブックマークをお願い致します。

ご評価やご感想(駄目出し歓迎です!)を戴くと、凄く励みになります。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ