6話 女教師の誘惑 (中) 籠絡
「はい?」
俺が死んだのは、先生の所為ってどういうこと?
「何人か、アレックスに合いそうな候補を挙げて。その中から、おまえを選び迎魂の儀式をしたのだ。おまえが死んだのは、病気でも寿命でも無いだろう?」
「事故死ですね。おそらく」
それが?
「そうか。確率変動で死ぬ方向に持って行かれてたな」
はあ?
「他に死にかかったヤツとか居なかったんですか?」
「そんなのは要らん、健康で活きが良くないと」
いや、そんな魚の切り身みたいに。
「いやいや、死んだら同じでしょ!」
「戦死、事故死は、死んでも、自分で気が付かないから、しばらく往生しない。あと、戦士の魂を優遇するためという説があって…」
「それで俺が事故死させられたと。そ、そんなこと、できるはずが…」
「信じる、信じないは、おまえの自由だ」
くうぅぅぅう。マジかあ。俺、確率変動で死んだの?
ホームで、顔も見なかった女性に代わりに死んだのは、そう言うことなんですか………。
かなり、がっくり来た。
「済まんな…。そうだ!詫びに、この身体を抱かしてやろう!」
「はいぃぃぃい?」
俺は、うなだれポーズから反射的に復帰した。
「だっ、抱くって?」
「交尾ともいうが」
「えぇぇぇえ?」
「どうじゃ、この身体。なかなかだろう。それにおまえは、大きい胸が好きだからな」
少し身体を揺らすと、素晴らしく柔らかそうな双球がふるふる震える。
視線を揺れに合わせないことが、どんなに辛いか!。
大きい胸?大好物です!
だが、しかし……。
「なんで知っているんですか?」
「奥様の胸を、物欲しそうに眺めていたからな」
うぇぇえ…あれを見られてましたか。いや、でもあれは、典型的なラッキースケベです!
それに、おふくろさんって知ってからは見てませんからね!極力…。
「まあ気にするな、男の9割方は大きな乳房が好きだからな!」
たしかに。
先生のは、巨乳なのに格好良く持ち上がっていて、でかすぎないところが良い。
何事も大事なのはバランスだ!
「それに、この尻も見てみろ!奥様にぞっこんな伯爵もこっそり見るからな、魅力的なはずだ」
しかも、胴はきゅっと締まっていて、そこから豊満ながら滑らかに張り出した臀部。
芸術品と言っても過言ではない。否、芸術品の方が逃げ出す。
ソファから立ち上がって、そんな結構な物を至近距離で突き出されると、思わず生唾を飲んでしまうじゃないか。
ただ、先生の言い方が、なんだか自分の身体という感じではなく、持ち物を自慢するようで気にはなるが…。
「どうだ、いいだろう。夜になってからでも良いが、今からでも良いぞ!ああ、言っておくが、私は処女だ!この躯ではな。触ってみるか?」
おおう。
据え膳はご馳走にならないと!
……いやいやいや待て!話が旨すぎる!
何かの罠だ!孔明級に違いない!
とりあえず話題を変えよう。
「そういえば、先生。俺の家に来たときから、全然歳を取ってない感じなんですが。何歳なんですか?」
おふぅ。睨まれた。
怖いけど、ちょっとぞくぞくするね。ああ、その気はないから…ないよね?
「おまえの世界では、女に歳を聞いても良いのか?」
うっ…。
「冗談だ。だが、歳に何の意味がある」
「はっ?」
「歳を数えるのは、年月で頭脳や身体や変わっていくから、目安にするためだろう」
「…まあ、そうかも知れませんけど」
生まれてこの方、歳を訊かれるからなあ。言われてみれば、気にして当然という先入観はあった。
「年齢…まあ暦年で言えば、60歳代中盤ぐらいというところか」
「うぇえ60歳代?…25歳ぐらいかと」
「ああ、ハーフエルフだったからな」
「はっ、ハーフエルフ?」
「ああ」
そうだ、そうだった。言われて思い出した。
エルフ…エルフ?混乱してるぞ、俺。思い出せ!
エルフは、肌が透き通るように白く、金髪碧眼。300年から400年生きる長命種だ。魔法に長けており、耳が細長いので一見して人でないと分かる。ほとんどは種族で集まって棲む。また70歳から80歳ぐらいで成人となる。
人間であって人ではない…この世界では、人と言うのは種としての分類で、人間とはエルフを含む複数の種の総体の概念…結構驚愕の事実を思い出した。
まあそれは良いとして…。
ハーフエルフとは、エルフ女性と人の男性の間に生まれた人間だ。逆の組み合わせでは妊娠しないらしい。しかも、出来る子は女性だけだ。ハーフエルフは、肌や髪の色もばらばらで、寿命もおおよそ半分くらいだ。成長は人並みで、区別が付かない個体も多い。
記憶が戻ってきた。
…使えねえ記憶だ。意図的に思い出そうとしないと駄目とは。
いや、訓練次第だ。ベースはあるんだ。前向きに、前向きに!
「エルフってのは、本当に居るんですね…」
知識より俺の感情が言わせた言葉だ。
「何を言う。おまえの家系にもエルフが入っておる。4代程前だから、もはや全部、人みたいなものだが」
うげっ。そう言えば…。
「そうでした…」
「忘れて居るかも知れんが、ユリーシャもハーフエルフだ」
ああぁぁ。そうだった。記憶が不完全なのは、きつい。
「どうだ、ハーフエルフはな、美人でグラマーになりやすいのだ!」
いや、ボディーラインを掌でなぞられても…。
そういえば先生が言った通り、容貌が一般的な概念で美人になりやすいので、人の女性からは嫉視されることもあるらしい。
「はいはい」
正直、冗談?に付き合う余裕はない。
「エルフ以外も…居るんでしたよね」
「居るに決まっておろう。人に友好的な、ドワーフやホビットは普通に人里におる。逆におまえの世界には居なかったのか?」
「いませんよ。人だけしか」
「ふーん」
ふーん、って。
「ホビットにドワーフは居るんですね」
「ああ。ここの料理長はホビットだしな、あと本家の館には、メイド達にもおるぞ」
そうなのか。
そうだ、ついでに、さっきの違和感の件を聞いておこう。
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