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51話 前夜の闖入者

 月日はその歩みを早め、明日は課外授業となる火曜日の午後10時。


「ユリ。ありがとう。君とメイド達のお陰で園外演習の準備が整ったよ。料理も楽しみだ」


 まあ、準備といっても、行くのは俺とレダだ。必要な物と、どうかなあと迷う物を並べ、魔収納に片っ端から入庫するだけのはずだったが……。

 非常時を考えて、どちらが持った方が良いかを、レダとユリで協議し始めたので、決めるのに時間を要した。


 どっちでも良いんじゃないかと、俺は思うのだが、最悪俺だけパーティーからはぐれたらとか、想定しはじめたので、うんざりして丸投げした。ようやく決まったが、俺の魔収納には、ユリとコック長が作ってくれた料理をたくさん収納することになった。


「はい。よう、ございました。皆の者にも伝えます……」


 ユリの顔は冴えない。

 学園生以外同行不可のため、ユリがいて来れない以外に、もう一つ理由があるらしい。


「ユリも早く休むと良い」

「このような大事なときに……そのぅ…始まってしまい。アレク様をお慰めできないとは。申し訳ありません」


「う、うん。別にユリの所為じゃないさ。仕方の無いことだ……別に、しないとしてもだ……やはり、ここで一緒に寝ないか?」

「ありがたき、お言葉ですが、そうは参りません。他にやることもございまして」


「そうか。どっちにしても無理強いはしないからさ」

「申し訳ありません……失礼します。お休みなさいませ」


「ああ、お休み」


 今夜は久しぶりに、独り寝だ。

 ユリが月経だからと言っても、関係ないとも言ったが。どうしても同衾は駄目らしい。

 まあいい。早く寝よう。


     ◇


 何だ?

 数時間は寝た気がするが…少し覚醒した。

 ううむ。暖かい。暖かい?

 ベッドに違和感。


 ああ、なんだ……。

 ユリのやつ、結局淋しくなって、夜這いしてきたのか。

 ういやつ。

 遠慮がちにベッドの端にいるので、こちらに引き寄せる。


「ああぁ」


 よいではないか……。

 別に最後までしないからさぁ、抱き合って?

 あちこち手で探るも、寝間着に触らない。

 ユリのヤツ、裸で忍んできたのか……まあ、汚れたら、洗えば良い。


 おっ、ここは腹かな。なめらかな肌触り、上へ手を滑らせる。

 汗ばんでいるな。

 乳房に手が及ぶ。

 張っているのか?いつもより硬い感触。


「あふぅ」


 ん?

 いや、大きさが。それに、明らかにまだ蒼いって感じだ。

 そう言えば、腹も筋肉が……。


 首筋から耳へと舐め上げる。


「レダぁ」


 びくっと身が竦まる。


「ユリか? それとも先生か?」

「私自身の意思です……チーフにはお許しを得ておりますが」


 ユリめ。


「……そうか。何のために」

「アレク様は、私に遠慮されています。それが……」


「それが?」

「……口惜しくて」


じょうを通じれば、それが無くなると?」

「少なくとも、ご遠慮なく、とぎをお命じになられるようになるかと。それが、戦闘にも影響が有る気が致します」

「俺も甘く見られたものだな……」

「もっ、申し訳ありません」


 手を脇から、胴を伝い臀部を持って行って掴む。


「俺は遠慮しない。だがな。自分の使命だから嫌々ながらって、そういう相手を抱く気はしないだけだ」

「信じて下さい。私はアレク様をお慕い申し上げています」


 これは、言うべきではないのだろうが……。

「なぜだ?お前は、自分がなぜ俺のことを好きなのか考えたことがあるか?」

「ランゼ様が、私に暗示を掛けて、そう思わせているとでも」

「だったら、どうする?」


 答えが返ってこない。

 徐々に眼が慣れてきた。うっすらとだが見えてきた。

 レダは、涙を溜めている。


「ランゼ様に感謝します……」

「なんだと?」

「私が生きる意味を与えてくれたことに感謝します」


 ふぅーー。


「悪かったな」

「えっ」

「お前()大事にする。済まないが、お前()とは言えない。」

「ああ、アレク様……それがあなたの言う狡さなら、この上なく愛しいです」



 ◇◆◇◆◇◆◇


「おはようございます。アレク様」


 目覚めるとレダはおらず、いつものように優しい面持ちのユリが居た。


「ユリ……どうしてだ?」

「そんな顔を、なさらないで下さい」


「いや、問題は俺の方か」

「そうです……」

 俺は、ユリの方を視る。


「アレク様は、大きすぎて、もはや私1人では、お支え致しかねます」

「何を言う。そんなことは……」

「いえ。そうなのです。レダは信用できます。分かち合って支えて貰わねばなりません」


「ユリ」

「レダだけではありません。他のメイドも同じです。さあ、余りお時間もありません。お着替え致しましょう」


     ◇


 出掛ける時間だ。既にフレイヤ達は馬車に乗っている。


 玄関で向かい合った少女の手を取る。

「留守を頼むぞ。ユリ」

「はい」

 憂いを帯びつつも笑顔だ。


「お願いします。先生」

 当たり前だが、先生自体は居残りだ。

「大げさなやつだな」

 違いない。


「レダ」

「はい。ランゼ様」

「命に掛けても、アレク様をお守りせよ」

「仰せ肝に銘じます」

 おいおい。どっちが大げさだよ。


「では、行ってくる」

「いってらっしゃいませ」

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