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47話 パーティー編成(後) 多難

「反対!絶対反対です!」

 エマだ!

 私も!私も!私も反対……。


 カレンが提案があると発言した途端、エマだけ留まらず、複数の女子が、拒否を表明した。言うまでもなく、アレックス親衛隊だ!


「皆様。まだ私は何も申し上げておりませんが……」

「どうせ、私は婚約者だから、アレク様と同じパーティーになるべきだ! とでもおっしゃるのでしょう!」


「あら、あなたもそう思いますか。エマさん!」

「思いません。あなたの意見を想像して言ってみただけです。第一婚約は成立していないですからね」


「ちょっと待て、婚約とは何の話だ……あぁ、いや。サーペントにハイドラ。この授業後、教官室に出頭しなさい」


 教官は、かなり怒ってはいるが、かろうじて理性を保ったようだ。


「話を戻すぞ。パーティーメンバーの決め方だが、当事者間で決められない場合は、予め決め方が定められている。えーと」

 教本を見ながら、文章を探し始めた。憶えてないのか? ああ、こんなにこじれることがないのか。


「これだ、指導要領3の4、前記条件に該当しない場合は、残った中から実習成績の最上位と最下位と中位から順番に選ぶこと。そうなっている」


 ゼノビア教官の宣言に、教室が静まる。

 まあ成績的には、バランスが取れるよな。


「男子ペアを除いて、成績の最上位は、ハイドラとルーシア組。最下位は………」

 言い淀んだ、どうした?

「……昨年成績のない、サーペントとハーケン組だ」


 げっ!俺は、最下位かよ。でも、まあ当たり前か。


 この瞬間、親衛隊メンバーが、がっくり項垂うなだれた。それは分からなくもないが、なぜか教官もダメージを受けたようだ。一人喜んでいる女子が居るが、言うまでもない。

 満面の笑みで、こっちに手を振っているのは、カレンだ。


「残りの中位は…」

「あのう、当事者で決めても良いでしょうか?」

「ああ、レイアミス。任せるが、穏やかに決めろ。ふう…、それからパーティーメンバーが決まったら、リーダーと回復役を決めて、ここにある登録票に書いて提出すること!パーティー名は、時間をやる。今週中に決めろ」

 言い終わった教官は、一仕事終えた態で、教壇の椅子に座りこんだ。

 というか、俺を睨まないでくれないかな、教官が決めたんだし。


 親衛隊メンバーが教室中央に集まること5分。俺と同じパーティーとなったのは、エマとその従者だった。

 あれ? エマの成績は、結構上位ではなかったか?


 誰と組んでも良かったが、確実に揉めそうなメンバーだな。何とかするか。


「では、この6人ということで」

 エマが仕切りだした。

「それで、リーダーは誰にするかですが……私としましては、アレク様にお願い致したく」

「あら、レイミアスさん。また同意見ですわ」

 

 何か、エマとカレンの間に視線の火花が散った気がしたが、レダを除く4人に異存はないようだった。


「わかった! 引き受けた。ただし、演習では、リーダーの俺に絶対服従してもらうからな!」


「はぁい!」と5人。


 良い返事ではあるが、自分の胸を抱えるように、防御するのはやめてくれ。まるで、俺がハラスメント行為をするみたいじゃないか。


「では、一つ目の命令だ!」

 みんな、思い切り真っ赤になってるし。

「はっ、はい」


 エマ、生唾飲み込むな!


「互いを、呼び合うときは、ファーストネームとする!」

「はぁ?」

「カレン、ルーシア、エマ、ビアンカ、レダ、そして、アレクだ!……返事は!?」

「はい!」と5人。


「よし。以上だ」

「はぁぁああ。てっきりエッチな命令をされるかと!」


 するか! この衆人環視の場で!


「わっ、私なら少々エッチでも大丈夫です。アレク様と私の仲なので……」


 カレンは両頬を抑えながら身悶える。どんな仲なんだ! いやいや突っ込まないで置こう。裸を見せた仲とか言われたら、まずいからな。先が思いやられる。


「それで、回復魔法を使えるのは?」

 俺も使えるが、リーダーと兼任は不可だ。


「アレク様、済みません。私達、回復系は苦手で」

 エマと従者は駄目らしい。

「私とルーシアは、人並みです」


 レダが手を挙げた。

「私は、中級回復の慈悲アフェクトと複数対象用の八律調和ハルモニーが使えま…」

 皆の目が集まる

「レダさん。お願いします?」


 最後まで言う前に、エマがレダの手を両手で握った。

 回復役は、戦闘中魔力を温存する必要がある。訓練展示はともかく、レダと一緒に戦闘はしたことがないが、結構レベルの高い万能型と認識している。

 攻撃力は、俺の半分くらいだろうが、しかも精度が高い。それが惜しいが、まあ仕方ない。他に4人居るからな。


 レダがこっちを向いた。

「良いだろう。レダは回復役に回ってくれ」

「承りました」


「良かった………」

 エマの発言の後半が良く聞き取れなかったが、"してくれなかったかも"だったような気がする。

 きっと毒吐いたな。


 パーティーにおける信頼感の醸成には時間が掛かりそうだ、1回修羅場をくぐらないとな……。


「こちら、どうぞ」

 ルーシア、さっきどこへ行くのかなと思ったら、教卓にパーティーメンバー登録票を取りに行っていたようだ。


「ありがとう」

 礼を言うと、彼女は少しはにかんだ。


「では、私が記入して出しておきます」

 さっとレダが、自分の方に引き寄せる。

「ああ、任した」


 最近、読み書きの方も、アレックスの支援で当初よりはまともになったが、固有名詞は、書くのが結構難しいんだよな。最初は自分の名前を書のも結構掛かった。もっと精進しないとな、ある種の魔法を習得するには、呪う文字とか大事らしいしな。


 考えていたら、教官が口を開いた。

「よーし。全パーティー提出したな。終業時間まで自習しておけ。サーペント、ハイドラ、教官室へ来い」


     ◇


 連れられて入った部屋、ゼノビア教官の個室らしい。4畳半ぐらいの狭い部屋だ。

 簡素な椅子に、座らされる。


「カレン! 婚約とは、どういうことだ。伯母ちゃんに説明してくれ」


 えーと。教職忘れて、身内の会話になってますけど!


「私、昨日アレク様に求婚しました」


 こっちを見た教官の眼は、燃えるように怒りが籠もっていた。

 相手が違うだろう。

「いや、俺は……」

「お前は黙ってろ!」


 おいおい! この部屋では教官ではなくなってるのかよ。


「分かっているのか? こいつは、ハーケン(ランゼ)の弟子だぞ!」


 やはり、俺に対する憎悪の源はそこか。私怨は、止めてくれ。


「そんな事は、どうでもよいです!」

「なぜだ! あの可愛かったカレンが、こんなチャラチャラした男に引っかかるとは」

 見た目の件は同意だが、むかつく!


「伯母様! 伯母様といえども、アレク様を侮辱することは許しません!」


「くうぅぅうう」

 がっくり来てるな、教官! いい気味だ。


「あれか、カレンより強い魔法師としか結婚しないという自己制約」

「そのう、実はアレク様が、初めて登校されたときに一目惚れしまして……」

「一目惚れ?」

「その時は半信半疑でしたが、負けてみて、はっきりしました。私の夫となる方はこの方しか居ないということが」


「カレン! 若いときは、そういうことがある、燃え上がる気持ちが自分でもどうにもならないときが。が、しかし、それは誤解なんだ、思い過ごしだ。恋に恋するってヤツなんだ!」

 それ、相手は親父さんのことじゃないよな。


「よく見ろ、こんな線の細い、ハイドラの好みっぽい、こんな男は止めておけ!」


「教官! 求婚の件、俺は受けていません」

「黙ってろと…はぁ?」

「ですから、求婚には応じてません」


「何だと! この野郎!カレンが気に入らないのか!」

 どっちだよ!


「俺はカレンのことを、ほとんど知りません。もっとよく知ってから、返事をします。教官は少々常軌を逸しています! 自覚なさって下さい。失礼します!」


 アレク様! と聞こえたが、無視して教官室を後にした。

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訂正履歴

2016/07/03 サブタイトルを3話セットから2話セットに変更しました。(すみません)

      ゼノビア教官:叔母→伯母

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