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41話 決闘(2) 奥の手!

 お兄様…。


 朝から、うきうきとなさって、上機嫌でしたが…。

 そんなに決闘とやらは、楽しいのでしょうか?

 宗教学科、導師志望の私には分かりませんわ。


「フレイヤさん。あなたのお兄様、本当にお綺麗ですね。殿方なのに…」

「はい」

 もっと褒めていいですよ。ジャンヌさん。


「ああ、こちらへ手を振っていらっしゃいますよ」


 もちろん私も、腕が痛くなる程に振り返しますとも。


 隣にいるジャンヌさんは、魔法科で、ソルベイグ子爵の一族です。

 入園以来、親しくさせて頂いていますが。最近お話しすることは、お兄様のことばかり…まあ、それも致し方ありません。


「…お相手も、そこそこ美形ですわね」


 ジャンヌさん。言い方でお兄様より格下と表現していましたので、許して差し上げましょう。

 ふむ。あいつが、決闘を申し込んだ身の程知らずですか。

 それはともかく、誰にとってかは分かりませんが、彼には不吉なオーラが出ています。精々睨んでおきましょう。


     ◇


 観覧席の一番後方。高い位置のベンチに制服を着崩した男子と、きちんと正した男子が居た。


「あぁ。かったるいな。何だって2年坊の試合なんぞ、見なきゃならんのだ?」

「若様のご命令だ。お前、寝そべるのは良いが、寝るなよ」


「いいじゃねーか。それで撮影するんだろ」

 まじめそうなの男子生徒は、銀水晶を掲げてグラウンドを見下ろしている。


「何でも、1年を飛ばして、いきなり2年になったとかで評判らしい」

「ちっ!そんな裏技があるのかよ。ああ、あれか…何か聞いたな、チャラチャラした女男とか……女子共が騒いでたわ」


     ◇


「あぁーーーあぁーーーー。拡声魔道具の調子はよろしいようです。それでは、本日の模擬戦を実況させて頂きます、戦士科3年、戦闘術研究クラブのグラハムです」


 おおうと観覧席がどよめいた。グラハムちゃん素敵ぃーーと歓声も上がる。


「ファンの皆さんありがとうございます。解説には魔法科3年のガルドルさんに来て頂きました。よろしくお願い致します」

「よろしく」


「さて、今日の模擬戦は、2年魔法科生同士の対決です。模擬戦不敗のカレン・ハイドラ准男爵殿と、今人気沸騰中の美形復学生アレックス・サーペント殿です。以後は大変恐縮ですが、審判であるゼノビア教官の許可を得ておりますので、敬称を省略させて頂きます」


 ようやく、観覧席が静まってくる。


「早速ですが、模擬戦の行方をどのように見られていますか?ガルドルさん」

「ハイドラ君は速攻派です。以前見た限りでは、開始直後から一気呵成に攻めてくることが予想されます。対してサーペント君は、どのような戦術が得意かは分かりません。ただし、聖者の曾孫であることに加え、魔法科2年生の証言に拠れば、火属性魔法が並々ならぬ実力であることは疑いありません。是非良い模擬戦となること期待しています」


「ありがとうございます…そうですね。私含め女子達は、2大美形対決と呼んでいますが、そちらはどうでしょう」

「ははは。僕は男ですから、どちらも男前だなあと思うぐらいです」

「ああ。興味ないですよね…おっ、審判の手が挙がりました。間もなく開始です…ではガルドルさんまとめましょう。ずばり!どちらが勝つと予想されますか」


 ガルドルは、こめかみを押さえつつ慎重に口を開く。


「正直分かりません!討竜魔法師ドラグベインの実力は凄まじいと聞きますが、余りに情報不足です。手持ちの情報から言って、ハイドラ君有利でしょう」

「おお、ハイドラ選手ですか、その理由は?!」

「彼には、奥の手があるからです!」


「奥の手ぇーーー!!それがなにか是非聞きたいところですが、時間が無くなりました!模擬戦開始です…今!始まりましたっっぁあ!」


 ハイドラが、突然右回りに走り出す。縮地のごとく不連続な加速!


「おおぉ、速い!ハイドラ選手、凄い勢いで、走り出し…衝撃波を撃ちました」


 ハイドラから、高速に透明な槍が繰り出される。

「あれは、風槍ルフトランツェです!」

「すごい、サーペント選手、間一髪で避け…ああ、なんと!」


 アレクが避けることを予測したかのように、そこ火球が高速に飛来!


 キィィィイイイン………ダァァアン。


「はっ、弾いた!なんと弾きました!絶対避けきれないと思われた焔を、サーペント選手に当たる寸前で跳ね返しました!まるで見えない壁があるようでしたが…あれは何ですか??」


「風属性の障壁魔法。おそらく風壁エールレフレです。双方無詠唱、いえ瞬間発動していますので、推定ですが」

「速攻のハイドラ選手にサーペント選手も負けていません。まさしく高速魔法戦と言って良いでしょう…おお、また衝撃波!今度は大きい衝撃波です」


 ハイドラが両手を、アレクに向けて見えない弾丸をつるべ撃ちした。


「あれは気弾ルフトシュレーゲン!…それを連続発動している…凶悪だ!」

「ハイドラ君、風壁に対して相性が良い魔法に切り換えましたね」

「風壁で防げないのか?サーペント選手、避ける避ける…しかーし、凄まじい…凄まじい!何発撃つつもりでしょうかハイドラ選手。流石に、これはサーペント選手でも避け切れなーーい!」


 玄妙なる智の恵み我に……。


 アレクは数発を躱したが、殺到する衝撃波全てを避けることは不可能!勝負が決する──誰もがそう思った。


「命中!ついに直撃しました!!!……が、効いていない!衝撃波がサーペント選手に直撃しているのに、微動だにしません、サーペント選手。どういうことでしょうか?もはや私の理解を遙かに超えています…」


「珍しい魔法を…」

「えっ!なんなんですか?ガルドルさん」


金剛バジュラーダ!」

「金剛?」

「身体強化魔法の一種です。物理攻撃耐性が飛躍的に高まります。よく見て下さい!衝撃波が当たる度に、金色の火花が散ってますよね」

「金色の?火花?……あっ、たしかに!!あれが金剛ですか?黄金の鎧ががサーペント選手を守っています!」


「ああ、そう言えば。金剛は習得が困難な魔法ですが、聖者サーペントがよく使っていたと…聞いた事があります」

「流石は、呼吸する魔法辞典ガルドルさん!よくご存じで!」

「でも…」

「でも?何ですかぁあ??」


「あれは、魔力を喰いますよ……ところで、なぜ彼は攻撃しないのでしょう?」

「そうですね。サーペント選手は防御に徹し、開始以来攻撃回数は0です。魔法においては先手必勝!攻撃は最大の防御だと言いますが…」


     ◇


 魔力を喰う点では、風弾を連続発動するハイドラも同じことだった。

 このままでは自滅と見たか、発動を中断した。

 ハイドラは肩で息をしている。しかし、勝利の確信があった。

 瞬間発動できない金剛と、風弾では自ら方が有利だと。


 アレクも金剛を中断する。


「どうした?ハイドラ。魔力が尽きた…ようには見えんが」

「放っておけ!…サーペント…貴様、なぜ攻撃しない?!」


「俺は、戦闘が好きでな。すぐ終わらせてはつまらないだろう」

「いつでも、私を斃せるという意味か?」


「ああ、それ以外に聞こえたら、俺の言い方が悪いということだろうな」

「ふん。聖者の一族とやらは、口が達者な家系らしいな」

「得意なのは口だけじゃないことを、女生徒ならば実感させてやれるのだがな」


「げっ、下劣な!」

「さて、休憩はもう良いかな?ハイドラ君!」


     ◇


「ハイドラ選手の速攻を、防ぎ切ったところで膠着か?」

「何か、話しているようですね」

「魔法理論とかでしょうか」

「さあ…ただ高尚な話題に違いないでしょう」


 ハイドラの眼が光り、何かを投げた。

 間もなく地面が盛り上がって、人の形となった。

 その数……。


「土が盛り上がって、あれは…」

「魔道具による使い魔…それも8頭」

「至近距離に、土人形クレイゴーレムが沸いて……」


 アレクは面倒くさそうに、腕を軽く振った。


「なっ、なんと!そんな馬鹿な!召喚した使い魔が、あっという間に崩れ落ちました。がっ、ガルドルさん??」

「サーペント君の腕から細い糸のようなものが……水斬だと思われます」


「水斬?…いっ、いや。そんな…お言葉ですが、あれが水斬なんて!」

「サーペント君は、討竜魔法師!常識で推し量っては危険です」


 副審判員の旗が振られた。しかし、ゼノビア主審が腕を下向きに交差させた。


「副審から、反則の指摘がありましたが、主審が流したようですね」

「副審は、サーペント君の魔法の殺傷力が高いと指摘しましたが、対象が土人形に限定されているので、可と主審が却下したと思われます」


     ◇


 ハイドラは、有力な戦法を封じられたにも関わらず、にいっと口角を吊り上げた。


「なかなかやるな!サーペント」

「ふん。早く掛かってこい、のろまめ!」


「その余裕がいつまで続くかな!」


 むっ。


「き、きっ、消えた!ハイドラ選手が……いっ、いません、どこにも居ません!!」

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