4話 メイド相手でもリア充?!
おぉぉおおお!
部屋が沸き上がる。すぐ食事を用意せよ!!
なんか、みんな喜んでる…よね!
「いやあ、食が細く、食事と言えばどんな美食を用意しても、食べたくないと申していたそなたがなあ」
ふう。
いつも食欲がない、俺が食い物を要求したから、喜んでるのか…。
おいおい、びっくりさせるなよ。
てっきり、ばれたと思ったじゃねえか。
よかった。
あれっ?親父泣いてるし。
そんなに?
そんなに感動したの?
◇◆◇◆◇◆◇
その後、親父さんは、何事かてきぱき指示を出し、父母とランゼ先生以外の人達は、部屋から出て行った。替わりに手に皿を持ったユリが部屋に入ってきた。
俺は父に上半身を起こされ、直ぐ横にユリが座った。
ああ、少し乳臭いが、良い匂いだ。
少女好き属性では無いが、こんなに接近されると、少し変な気分になる。
まっ、まあ、ユリの見た目は十分大人だし。
俺は正常だ!!……だよね?
シリアル。オートミールぽい物に、何かを掛けたものを出された。
その深皿を俺の太股の上のトレイに置いて、ユリがスプーンに掬う。
「アレク様。あーーん」
えっ。マジですか。
うわーー、小っ恥ずかしい!
いや、こんな美少女にやって貰うのは、嬉しいけど。
二人ならともかく、親父達が見てるのに…しかし、なんだか嬉しそうだ。
その右横のランゼ先生は、一瞬口角を持ち上げたように見えたが、直ぐ真顔に戻った。
「アレク様」
「あっ、あぁーーん」
あの肉体に還るための、第一歩だ。
俺は観念して口を開ける。
スプーンが差し込まれ、半固形物が流し込まれた。
うーーむ。味が無い!
湯で戻したのか。せめて牛乳にして欲しかったな。
まあ、病人に出すものは、こんなものだろうが。
きっと消化が第一とか考えているのだろう。
正直言って、まずい!が、仕方ない!
それに味の無い食べ物を食べるのは慣れている。
安いプロテインとか、ものすごく安いプロテインとか、在庫一斉処分品は本当に不味かった……って、どうして、ろくでもないことは憶えているんだ。
食うぞ!俺は食う。
「アレックス殿、口に合わないようだな」
先生が、こちらに歩いてくる。
「えっ、いや、そのぅ」
「眉間に皺が寄っているではないか」
まあ、味の無い糊を食べてる感じだからなあ。顔に出ましたか。不徳。
「伯爵様、これを足してやっても良いかな?」
先生は、小さなガラスポットを手に持っている。中身は琥珀色だ。
「ああ、ええ。先生がそう仰るなら」
「では…アレク。これはユリが用意してくれたものだ、なっ」
「はい。先生」
ユリが嬉しそうに頷き、ポットを受け取る。
俺の父の指示に、これは無かったのだろう。だから遠慮してたのか。
俺の皿にポットから滴る。蜂蜜だ。
結構な量を垂らすと、ひとさじ掬って俺の口へと運ぶ。
甘ーーい。
さっきより格段に食べやすくなった。
「おいしい。ユリ、ありがとう」
「どっ、どう致しまして」
ユリは、朱くなりながら、何度も頷いた。
「先生もありがとうございます」
「ああ」
先生優しいなあ。美人で優しい。しかも、ちゃんと気を遣う…いいですね。
「はい、あーん」
そして、スプーンを数度運ぶと、ユリはスプーンを置き、エプロンから純白のハンカチを取り出した。甲斐甲斐しく俺の口元を拭いてくれる。
あちこち柔らな部位が、俺に当たるし、良い香りがするし。
襟ぐりが深いから、思いっきり見えるし。
理性を保つのが厳しい。
そうか、壁際に立ってる親も、俺とユリが幼なじみだから、油断してるよな。でも中身は違う男なのだよ!
いかんいかん。そこは思春期のガキじゃない。紳士たらねば…無理だけど。
うーーむ。良い娘だなあ。
本当に嬉しそうに微笑みながら、世話を焼いてくれる。
惚れてしまいそうだ。
もしかして、ユリは俺のこと好きなのかな?
それを思い出そうとすると、頭痛と共に思い出す。
ああ、そうなんだ。
ユリは、アレックスのことが好きなんだなあ。
俺では無くて…
ともあれ。看護師さんが、モテるのは分かるね。
さらに、こんな美少女だ。
時々、腕に柔らかいものが当たるのもツボだ!
よく分からんが、結構大きい気がする。
アレックスには悪いが、この世界へ来て、転生して良かった。この身体だって、今から何とでもできるしな。
うーむ。それにしても、二人っきりだったらなあ。
しかし、現実は。
2人して手を握り合っている父母に加えて、先生もこちらを見ている。
その笑顔が辛い。いろんな意味で。
そんな、感慨に浸りながら食べさせてもらっていると。あっと言う間に無くなった。
えーっと全然量が足らない。
「あのう。お替わりを」
おおうと、おやじさんと、おふくろさんが響めいた。
「あっ、でれば湯ではなく、牛乳があればそれを」
「牛乳は、こちらでは手に入り辛くて。山羊の乳でもよろしいですか?」
「うん」
そうなんだ。山羊ね。
その後、ユリは、おやじさんに確認を貰って、部屋を辞していった。
「アレックス殿」
「はい」
「2,3日食べておらぬのだ、空腹なのは分かるが、一気に食べると、却って身体の毒だぞ」
「はあ」
そういえば、断食の後は、急に食べない方が良いとか、なんかで読んだ気がするな。
「分かりました、お腹と相談してゆっくり食べます」
「うむ。それが良かろう」
癖はあるが、山羊の乳が旨かったので、結局2皿目も完食した。
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訂正履歴
2016/03/27 ユリとのやりとり他、細々訂正。