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32話 リア充授業!

 学園長室と書かれた部屋に入る。


「申告します。2年次に復学する、アレックス・サーペントです。よろしくお願い致します」

「同じく。レダ・ハーケンです。よろしくお願い致します」


 奥の机に学園長が座っている。

 へえ、学園長は女性か。

「当学園を預かるロッシーニです。お二人ともパレス高等学園へようこそ」


 マーガレット・ロッシーニ。46歳。女性男爵…自ら爵位をもつ貴族だ。

 ややふっくらした体型で、おかみさん!って感じの人だ。


 何だろう?学園長は、かなりにこやかに俺の顔を見ている。


「本当にお母様にそっくりねえ。ああ、ごめんなさい。あなたのお父様とお母様は、私の教え子なのよ。お母様の方は担任だったし」

「そうなんですか」

 こういうとき、なんて言えば良いのかねえ。


「お母様は、男女問わず、みんなの憧れ。お父上は、血気盛んで問題児だったけど、皆に慕われていたわ。あなたもそうなると良いわね。お父様のは…できれば後者だけで」

「はっ、はあ…」

 親父ぃ…。


 学園長は、手元の冊子を開いた。

「それで…サーペント君の専門科は、魔法科…ハーケンさんも同じですね」


 この学園のカリキュラムだが、午前は一般教養の共通授業、午後は専門科と2本立てとなっている。専門科は他に戦士科、文科、宗教学科、工学科、家政科の計6科だ。


「この学園は,貴族子弟が集うところですが、新1年生を含めても、今は侯爵家の方は居ません。家格ではあなたと同じ、伯爵家が最高位です。あなたの妹さん含めて4人居ますが」

 王国に公爵は2家、侯爵は4家ある。

 この内、公爵家は王族なので、そもそも学校に通うことなどない。ならば伯爵が最高位でも妥当なところか。


「はあ…」

「爵位や家格を嵩に着て、下位の者を虐げないことを心掛けなさい…なんだかその心配は無いようですが…」

 なんで判るんだろう。

「…まだ話したいことはあるけれど、そろそろ始業時間だわ」

「失礼します」


 部屋を辞すると、扉を閉めたレダが笑いを堪えていた。

「では教室に参りましょう。ふふふ…」

 何がおかしいんだ?


 2年A組と書かれた、部屋があった。

 ここだな。扉に手を掛ける。


「アレク様!」

「なんだ?」

「我らは、その扉ではなく、あちらの階段を昇った上の扉から入ります」

「あ、そう」

 従者たるレダが先回りして、扉を開けないので不審に思ったが、上なのか。

 下見したわけでもないのに、詳しいな。レダ。


 なんだか、中2階にでも行くような中途半端な高さを登る。それ以前に流石元宮殿。天井が高い。


 下から見上げるレダの尻は、むっちりしつつも締まっている。

 この歳で、できあがってるなあ。

 おっと、下品なことを考えてしまった。

 眼福な時間は瞬く間に過ぎ、扉がある高さまで登り切った。


 中に入る。

 なるほど、階段状の教室か。

 さっき登った意味が分かった。

 中に進むと、下の方から野太い歓声に加え、黄色い嬌声が2度挙がった。


 おおう。レダ。

 男子は分かるが、女子にも人気とは…。確かに従者服姿だと男装の麗人だよな……ん?

 おかしい!

 女子の視線がレダではなく、俺に向いている気がするのだが。


 ああ!

 そうだった!

 俺、今はアレックスの顔だった。

 

 女は見る目が無いな。こんな優男のどこが良いんだ?

 キャーキャーうるさいし。

 自分が騒がれているのに。なぜか、むかつく。


 騒音の中、レダに促されて、最上段の長机の席に着く。

 レダもその端に座った。

 それでもまだ、きゃあきゃあ言ってる。

 クラスの人数は、ざっと20人強と言うところだな。だが男子は10人も居ない。


 前の扉が開き、女教師が入ってきた。室内を睥睨する

「うるさいぞ、女子!」


 おっ、キツそうな先生だ。褐色の肌…?

 その声で、一瞬に教室が静かになった。


 関知魔法を彼女に掛けようとしたとき、右から手が出てきたのでそちらを見ると、レダが小さく首を振った。やっては駄目らしい。


 褐色の肌に黒い髪の毛、耳が長く尖っている。

 ダークエルフか?

なかなか整った顔立ちだが、釣り上がった眼と眉が印象的だ。


「騒ぎの原因は復学した2人か。立って自己紹介しなさい。ああ私は、ゼノビア。今年も持ち上がりでA組担任だ。専門は魔法実技教官」


 やばいやばい。魔法発動を止めて貰って良かった。

 そうか、教師も生徒も去年からほぼ変わらず、俺達だけが新参者というわけだな


「港町セルビエンテ出身のアレックス・サーペントだ。専門科は魔法科。よろしく頼む」

 練習した通りだ。

 軽く会釈して座ると、また黄色い歓声が上がった。


「従者の君も…自己紹介しなさい」

 ゼノビア先生に促されて、レダが立ち上がる。


「アレックス様の従者レダ・ハーケンです。専門科は魔法科です。よろしくお願いします」


「なんだ。2人とも随分淡泊な自己紹介だな。まあいい。それにしても、このクラスで初めて24人全員出席か。今年も、このメンバーでやっていく。まあ、さっきの2人以外は代わり映えしないが、よろしく頼むぞ。クラス委員はまた決めるが、しばらくは、今まで通りトーレスがやっておけ」


「はい。先生、1つ良いですか?」

 俺達の1つ下段席の金髪男子が反応した。

 探知魔法を向けると、レパード・トーレス。准男爵にして男爵家嫡男とわかった。


「なんだ?」

 おっ。こっち向いた。やや厳ついが、なかなかの男前だ。


「サーペント殿は、聖者セントサーペントの曾孫と聞いておりますが…」

 聞いてるのか。まあ名字の方も珍しいから、察しは付くよな。

「…ハーケンさんは、黒き魔女ランゼ・ハーケン女史の一族ですか?」

「答えてやれ!ハーケン」


「問い合わせの方は従姉です」

 おおおお……とどよめきが教室を圧する。


 ふーーん。

 やっぱり有名なんだな。ランゼ先生。

 

「さて、ホームルームは終わりだ」


 そう言うと、ゼノビア先生は教室を出て行った。

 扉が閉まると、さっきの男子が立ち上がった。

 こちらに上がってくる。


「さっきの話で、しばらくこのクラスをとりまとめることになった。レパード・トーレスだ。復学おめでとう。レパードと呼んでくれ」


 なかなかの好青年ぽい。爵位持ちだな。


「ありがとう。俺のことはアレクと呼んでくれ。その体格は戦士科か?」

「わかるか…アレク。おっと、お嬢がお待ちのようだ」


 長いウェーブの掛かった金髪の女子が進み出る。


「初めまして。サーペント様。シャーロット・フェルマーと申します。復学おめでとうございます」


 おお。なかなか清楚な感じの美人だ。蒼い瞳が印象的で穏やかな所為せいか、もう少し年上に見える。男爵家次女ね。


「ありがとう。ああ、俺のことはアレクで良いよ」

「では、私のことはシャーロットとお呼び戴ければ…」

「ああ。あと敬語を使わなくて良い。クラスメイトになったわけだし」

「はい。では、そのように」


 それぞれに、従者が居るようだが、そこまで紹介し会う前に、ベルが鳴り、別の教師が入ってきた。席に付く。

 1限目は、国語だ。


 レダが、教科書とノートを渡してくれる。

「あのう。アレク様」

「ん?」

 なんだかレダが困った顔をしている。


 では、教科書6ページを開いて!男性教師の指示が聞こえる。


「実は、手違いで、私の分の教科書がまだ届いておりません」

「ああ、そうか。じゃあ、俺と一緒に見れば良い」

「ありがとうございます」


 レダは嬉しそうに、自分の椅子を寄せてきた。

「ちょ、ちょっと、くっつき過ぎじゃないか?」

 小声で告げる。


 良い香りがする。髪かな。うなじかな。

 先生に似ている気もするが、ずっと甘いような…。


「お嫌ですか?でもこうしないと、教科書が見難くて…」

「そうかぁ…?」


 俺の右腕に、なにやら柔らかい物が…。

 ふうって。レダの吐息が聞こえる。


 教師の朗読が、次のページに移る。

「あっ…私がめくります」

 彼女が身体を捻ったので、胸がぎゅっと押しつけられる。


 おおう!!

 授業どころじゃ無いぞ!

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訂正履歴

2016/08/24 学園の学科に宗教学科が抜けていたこと、魔法師科→魔法科を訂正

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