31話 初登校!
王都移動から3日過ぎ、学園登校初日となった。
学園は歩いて30分位の距離に有るが、馬車に乗っていく。
当初、俺は馬車はいやだ、歩いて行くと駄々を捏ねたところ、では私も!とフレイヤが言い出したので、大人しく断念することにした。
こんな美少女を、とても歩いてなど通わせられない。前世と違って、王都と言っても治安があまり良くないのだ。
そう言ったわけで、馬車の中は4人だ。
俺と妹フレイヤ、従僕であるレダと…。
えーと。この子は、なんて名前だっけ……イーリアだ。どうも、この子の名前は憶えられない。別に他意は無いのだが。
これから向かう学園…王立パレス高等学園には、制服がある。男子服、男子従者服、女子服、女子従者服の4種類だ。
俺は、当然男子服で、前世のモーニングスーツに似た濃紺の上下だ。下は普通に足首まであるスラックスだった。伝統貴族っぽい膝丈にタイツでなくて良かったよ、本当に。
上着の内は白いボディスシャツ。首には蝶ネクタイだ。色は暗い緋色、それが学年色だ。
まあ、男はどうでも良い。
女子服は、濃紺のスーツぽい上着で、肩が膨らみ脇から下の袖がほっそり絞られている。腰から下は、白い膝丈のフレアスカートだ。襟元は多少のアレンジが可能なようで、大きい襟ぐりで胸の裾野を回り込んで鳩尾で閉じられている。無論、その下にはレース飾りのついた首まで覆うブラウスを着ているのだから、露出度自体は低くなるはずだ。平均的なサイズの場合。
しかし。フレイヤは、早くも?母の爆乳を猛追し始めている。
上着の枷など無いもののように、どーんと胸峰が突きだして、思い切り扇情的だ。
ルーデシア、特に王都では、大きな胸を強調するのが流行のようで、3日間では襟ぐりが大きく胸の露出度が高いファッションをよく見かけた。あれだ、ヴィクトリア朝みたいだ。フレイヤのは、流石に制服だけあって、ブラウスは着ているので直接肌が見える訳ではないのだが、破壊力満点だ。
ある意味、いや、結果的にと言った方が正しいだろうが、男の夢を凝縮したようなデザインとなってしまっている。
兄としては、嬉しいやら、はらはらするやらで複雑だ。
イーリアは、女子従者服だ。女子服との差は、肩の膨らみが小さく、襟元も胸の上から閉じていて、至って普通だ。
1番の問題は、レダだ。
女子なのに男子従者服を着ている。
基本、男子服に近いが、裾が短く普通のスーツだ。
何が問題かというと、上着だ。レダは胸と尻がでかい割に、胴がきゅっと締まっている。それなのに、男物の上着を着込み、鳩尾でボタンを締めているため、胸が収まるわけもなく、フレイヤ並に思いっきり溢れ出している。
さらに上着の裾が短いこと加えてスラックスなため、下半身も余すところなく見せつけている格好だ。しゃがんだりすると、臀部の張り出しが、それはそれは見事で眼福この上ない。
車内はまるで花園なのに、行き交う言葉はなあ…。
「それにしても、あなたは、あの黒い女にそっくりですのね」
「ええ、ランゼは従姉ですので」
フレイヤとレダだ。
「性格が似ていないことを祈るのみだわ」
結構、フレイヤも毒を吐くよなあ…。
「フレイヤ、今日は君のめでたい入学の日だ。陰口は慎むように」
「はい。お兄様のお言葉謹んで。私の入学はともかく、お兄様の復学はとても嬉しいことですので。それにしても、お兄様も1年生であったら良かったのに」
「また、その話か…」
そう。彼女は学園、王立パレス高等学園へ入学だが、俺は2年次に復学だ。
知らなかったが、俺は去年入学していており、今までは休学扱いとなっており、この度復学することになるらしい。
1年次課程は実質免除となったわけだが、親父さんは、結構な額の寄付をしたらしく、そのお陰だろうと俺は踏んでいる。
よって、馬車は一緒だが学校内では分かれることになる。
ただ、この学園の裏の目的である、”貴族子弟を人質に取りつつ教化する”ことから反するため、よく認めたものだと思う。
ちなみに学園名のパレスとは、離宮の意味で、7代前の王が、高等学園創立に際し、離宮を提供したため、この名がある。
確かに柵越しに見える校庭と言い、校舎と言い、かなり格調高い。その点、新興の貴族である我が伯爵家とは違う。
とりとめのない思考をしていると、門に近づいた。道端には馬車が何台か歩道に横付けされている。俺は前世の感覚で馬車通学なんて、恥ずかしいと思っていたが、ここではそうでも無いらしい。
それら横を通り抜け、校門に達した。
ここで降りるのかなと思っていると、馬車はそのまま左折して内に入った。
良いのかよ!
俺達の馬車が走る車道脇の歩道には、大勢生徒が歩いているが。
でも生徒たちが、全然気にしていないところ見ると、馬車が入るのは普通の出来事のようだ。
広い校庭を走り抜け、人の列から馬車は外れ、玄関前のロータリーを回り出した。屋根がある車寄せに付けるようだ。
しかし、その前で馬車は止まった。
数分経ったが、動き出さない。
レダは前方の小さい引き戸を開けると、御者と何か会話し始めた。
「前の馬車が、どかないようです」
「そうか。じゃあ、ここで降りるか」
「いけません。アレク様!」
はっ?
「ここで降りては、伯爵家の沽券に関わりますわ。お兄様」
そういうものなの?貴族面倒くせー。
関知魔法を使うと、前の馬車の状態が見える。
車寄せに2人降りていて、1人が扉を掴んだまま、こっちを見ている。
「嫌がらせのようですね」
あっ、やっぱり!レダの見解に同意だ。
「私が降りて、進むよう頼んでみましょう」
「その必要はないわ。イーリア」
その言葉通り。数秒後、俺たちの馬車が動き出した。
なんかやっただろう。レダ!
今度こそ、車寄せに着いた。イーリアとレダが降り、俺も降りた。
振り返るとフレイヤが、こちらに手を伸ばす。
よいともよいとも。
手を掲げつつ引いて、彼女をゆっくり下ろしてやる。にっこり微笑んだ。我が妹ながらかわいいなあ。思わず抱擁したくなる。無論しないけど。
数歩進むと、床にへたり込んでいる男子の学生が見えた。
さっき急に自分の馬車が進み、扉を掴んでいたため、床に倒れたのだ。
うわぁ。こっちを睨んでる。
感知魔法を放ってみるが跳ね返された。あれだ!認識の阻害用の魔道具を所持しているのだろう。
蝶ネクタイは暗緋色。俺と同じ2年生だ。なんというかダボッと、大きめの男子服を着ている。それが、貴族ぽいのかどうか、良く判らないが
レダとフレイヤが、横を無視して通り過ぎる。
「大丈夫か?」
俺は、思わず手を差し伸べていた。
おおう。やることが姑息な割に美少年だ。やや大きめの目に、はっきりした眉。
整った容姿だなあ。茶色く長い髪をひっつめにして、後ろで束ねている。
「大事ない!去れ!」
「そうか…」
なんだかな…思春期てのは複雑だ、放っておこう。
磨き込まれた大理石の廊下を歩いていると、多くの扉が設えられていた。7mピッチほどで、廊下の両脇に何十カ所も並んでいる。ホテルのような感じだ。
不審に思っていると、先導するレダが立ち止まった。
「こちらがアレク様の私室です」
「はあ?」
「要は、控え室でございます」
レダは、上着から鍵を取り出し、扉を開けた。
たしかに扉の横の壁に、アレックス・サーペントと名札が掲げられていた。
学校に、自分の部屋があるとは、すげーな。
「私の部屋は、先にありますので。失礼します、お兄様」
「ああ、そうなのか。またな」
フレイヤと……イーリアが、スカート摘まみ優雅に跪礼をして、歩み去って行く。
妹に身惚れている場合じゃない。部屋に入ろう。
「狭っ!」
「いえ、ここは私の控え室兼通路です。この扉の先がアレク様の部屋です」
「あっ、そうなんだ」
4畳程の広さに小さい机と椅子。そして奥の壁に食器棚、流し台と魔石コンロがある。
お茶くらいは用意できるようだ。
「学園長との面談の刻限まで、少々お時間がございますので、しばらく奥でお寛ぎ下さい」
そして、レダは、奥に続く扉を押し開けた。
ん?なぜか狭い通路が2m程続く。
そこから部屋が広がった。
上屋敷執務室の半分くらいの広さの部屋だ。
右にクローゼットと本棚が作り付けられており、中央に4人掛けのソファーセットがある。俺が横になれるくらいの長さはあるな。
奥には大きめの机に椅子だ。さらに向こうには、壁の高め位置に窓があってカーテンが掛かっている。
「そして、こちらに…」
振り返ると扉があった。開けてみる。
おおう。洗面台に、トイレだ。おっと、こっちにはシャワーもある。
ベッドは無いけど、あのソファで寝られるな。
前世で受験で泊まったビジネスホテルよりよっぽど立派だ。毛布があれば、十分泊まれる自信がある。
まあ、上級貴族ともなると、これくらいの設備がないと駄目と言うことか。
「アレク様、そちらへお座り下さい」
「なんだい?改まって」
言われるままに、ソファに座る。
「学園に通うに当たって、いくつかお願いがあります」
「ああ…何?」
「ランゼ様からの言いつけです。この学園では、私やイーリアが他人からぞんざいに扱われ、アレク様としては不本意なところがあるかも知れません。そうされても怒らないで下さい。お願いします」
「うーーん。はあ…他は?」
それは、時と場合に拠るな。
「この学園の生徒に手を出すときは、予め私にご相談下さい。催された場合はいつでも相手しますので…」
「何で、そこまで…」
手を出すと言う下りにも、むかっと来たが、俺がレダを性欲処理に使うと思われているのもカチンと来るな。
「アレク様のためとお考え下さい」
「俺のため?」
「この学園にいらっしゃるのは、士爵家の方も居ますが、半分くらいは貴族です。手を出せば、即婚姻問題になります」
「うーむ…」
わからなくもないが。気分の問題だ。
「…俺を盛りのついた犬みたいに言わないでくれるかな」
まあ、レダと、…そのう、したくないと言えば嘘になる。近寄りがたいほど美しい先生が、若返ったようで、なんとなく親しみやすいし。
「申し訳ありません」
しおらしい。暗示か?催眠とか掛けられているのかも知れないな。
「分かった。レダより綺麗な子は居ないと思うから、大丈夫だ!」
「従者には、気を使うことも、口説く必要もありません。私はアレク様の所有物も同様ですから」
なんだか、当てつけがましいぞ。
メイドや従者を、俺が無理矢理に手込めにするとでも思っているのか?
ちょっと懲らしめてやろう!
「あっ、そう。じゃあ、シャツのボタンを外して、胸を見せて」
「えっ?」
レダの顔が、やや引きつっている。
「返事は?」
「はっ、はい」
レダは怖ず怖ずと、蝶ネクタイを抜き取って、ソファ-の背もたれに掛けた。
指が震えているのが分かる。
むう。先生と違って、えらくまた奥手な性格にしたものだ。
レダが、ふっと息を止め、1つ目、2つ目とボタンを外した。
胸の裾野が見え始めた。
もう顔が真っ赤だ。
3つ目のボタンに指が掛かったところで…。
「あっそうだ。学園長の部屋に行くのではなかったか?レダ」
「はっ。はい」
レダは、ふうっと息を吐いて、襟を閉じ始めた。
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訂正履歴
2025/09/21 カーテシーの表記削除 (コペルHSさん ありがとうございます)




