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30話 王都へ(2章開始)

第3作を連載開始しました。

天界バイトで全言語能力をゲットした俺最強!

https://ncode.syosetu.com/n3733em/

よろしくお願い致します!

 暦は春分となり、年があらたまった。

 春に新年なんてどうなんだろうと思ったが、これはこれで悪くない。

 そもそも、前世の新年が、なぜあの時期なのかよく知らないしな。


 俺は、セルビエンテで年末年始を楽しく過ごし、1月5日には入学に向けて、王都へ旅立った 。

 旅程は500km程。

 しかし、移動時間は5分と掛からなかった。


 魔法による瞬間移動交通が、整備されているからだ。

 家から外に出るまでの方が、時間掛かってるのは皮肉だ。


 通称転送門。

 国内の主要都市と軍事施設を結ぶネットワークだ


 軍事利用優先で庶民は利用できないし、荷役ですら公的機関でないと使えない。

 だが、例外がある。大貴族の一族とその随行は自由に使えるのだ。


 強烈な差別だな!

 なんだか釈然としない…自分は使えるが。

 相変わらず庶民意識が抜けない。意識は良いが、行動や言動が不自然にならないようにしないとな。


 虹色の縦水面を一瞬で抜けると、そこは王都だ。

 そこには先行したユリが居て、係官らしき制服の男と話している。

 ようこそ王都フローレス・ルーデシアへ!か…花の都というのが語源らしい。

 転生した直後は、耳に聞こえている音と、理解される言葉が違う違和感があったが、映画の字幕みたいなものかと、もう気にならなくなっている。


 そのまま歩いて抜けて下さいとも書いてある。つまり、このゲートは一方通行。到着専用ゲートなのだ。


 ゲートからやや離れるまで歩き振り返ると、本体である石造りのアーチには、なにやら表面に文様がびっしり刻まれている。セルビエンテ側と同じように見える。

 後続も来た。

 妹と、フレイヤの従者メイドの……えーと?…イーリアだ。容姿が普通だから記憶が曖昧だったとかじゃないぞ。


 フレイヤは、そのまま止まらず、つかつかと磨かれた床を歩いて寄ってきた。俺と腕を絡め身体を寄せる。


「少し寒いです。おにい様」


 可愛い。

 妹と言うのは、前世とは違う生き物らしい。

 とにかく生意気で、どっちが年上か分かったものではない!とかだったと思ったが。妹って。


「そうか。では、ショールでも出してやろう」

 たしか、ユリが持たせてくれた物が魔収納アルマセンに…。


「いいえ、お兄様。こうして居れば、暖かいですから」

 俺の腕への巻き付きが強まる

「あぁ…そう?」


 ああ、何とも佳き匂いだ。

 顔はお袋さんそっくりで、文句の付けようもないし。もうちょっとしたら、求婚されまくるのだろうなあ。

 ああ、あのう。胸が当たってますけど。フレイヤさん。


 俺は、兄だから問題ないけど。

 もう、かなり大きいので、気を付けられた方が…。


 それからランゼ先生とレダに、ロクサーヌ…人相のロキシーとアンと俺の専属陣が出てきた。


 先生とレダは無表情だ。

 いや。もしかして、あれは生暖かい視線というヤツか?

 アンとロキシーは、荷物を提げながら、辺りをキョロキョロ見回してる。微笑ましい。


 あとはゾフィが居たらなあ…。


 彼女は、俺がセルビエンテの外郭部でガーゴイルと戦った数日後、暫く館を出たいと言い出し、今は行方不明だ。

 あれか。言い過ぎたか。

 うーむ。そんなにきつく言ったつもりはないんだが。泣いてたからなあ。


「アレク様。手続きが終わりましたので。参りましょう、外に出迎えが待っているはずです」

 えーと。こころなしかユリの顔が強張っているような…。


 そのまま、ゲートがある部屋を出ると、4人の男が待っていた。執事と御者のようだ。軽く挨拶して、持ってきた荷物を運んで貰う。


 転位所の左玄関を出ると、4人乗りの馬車が4台駐まっている。

 出迎えを入れて11人なのだが。

 もちろん御者は、客車キャビンの前方の御者台に乗るので、勘定に入っていない。

 俺が1台目の馬車に乗ろうとすると。フレイヤが当たり前のように付いてくる。


「フレイヤ様。お乗りになられるのは2台目の馬車ですが」

 ユリがそう言っても、一顧だにしない。


「ねえ、お兄様。フレイヤもご一緒してもよろしいでしょう?ねえ」

 俺の方に向き直って、おねだりだ。


 俺は、フレイヤに耳を寄せる。

「ランゼ先生と同乗になるけど良いのか?」

「…もちろんです」


「では、乗ると良い」


 結局、俺が乗る先頭の4人乗り馬車…そこには、俺にフレイヤ、ランゼ先生とユリが乗った。本来はレダが乗るはずだったが。イーリアの乗る2台目に移った。

 

 俺が、前向きの席に座ると、横にフレイヤが当たり前のように座り、差し向かえに残り2人が座る。


「ねえ。お兄様」

「なにかな?」

「お兄様は上屋敷の別館に、これからお住まいになるのですよね」


「ああ」

「別館では無く、私とご一緒に奥館に住まいましょうよ」

「そうだな。俺もフレイヤと一緒が良いが…父上が決めたことだ」


「ええぇ。いいではないですか。部屋もたくさんありますし」


 確かに、たくさんあると記憶が言っている。

 ふむ。これが狙いか、フレイヤ。


「フレイヤ殿。アレク殿は、魔法の鍛錬をされる。奥館ではできないのだ」

「鍛錬されるときに、移動すれば良いではないですか」

 間髪入れず反論だ。想定の範囲内なのだろう。

 それに一理ある。


「フレイヤ。済まんな。もう決めたことだ!」

「はあぁ……。お兄様がそう仰るのであれば」


 ふむ。フレイヤは、先生と俺を少しでも引きはがしたいのだろうな。


 20分程走って、我がサーペント伯爵家の王都上屋敷に入った。


 上屋敷は王宮近く…王都北地区の貴族の屋敷地の一角にあり、伯爵家一族が滞在する公邸的な役割をもつ。迎賓の間と父の執務室がある本館、一族の住居である奥館、そして、かつて本館だった建物を、減築かつ内装をリフォームした別館があるそうだ。俺は、これから2年間、そこに住むことになる。


 ちなみに、ここが上屋敷なら、無論下屋敷も存在する。場所は、王宮からやや離れた官庁街近くにあり、家臣が詰める役所と宿舎で拠点的位置づけだ。


 屋敷に着くと、わが家の王都の使用人トップである屋敷付き執事長フィリップと、役人の長たる家宰ダイモスに出迎えられた。2人とも40歳代の壮年紳士だ。

 ただ、アレックスがここに来るのは5度目であり、彼らとは顔見知りだ。

 よって、挨拶は比較的短時間で終わり、案内の本館メイドと専属メイド達と共に別館に移動した。


 別館の玄関に回るつもりだったが、建屋の間は建て増された回廊で繋がっていた。

 まあ、食事とか行き来するし、雨やら深夜もあるからな…よく考えて頂いている。廊下の突き当たりに扉があり、俺の部屋に続く長い廊下に出た。


 へえ。別館と言うから、もう少し小さいと思っていたが。セルビエンテの俺の館とより大きい位だ。


 何部屋か行き過ぎて、重厚な赤楓の扉が開けられた。

「こちらが若様の執務室でございます」

 案内の本館のメイドさんが、説明してくれた。

 

その部屋は、30平米位の広さで、調度も立派なものだった。

 部屋の真ん中に置かれた革張りのソファセットも良いが、奥にある机が凄く骨董品だ。

 思わず早足になって歩み寄り、天板を摩りながら椅子の座り心地を確かめる。


「このお部屋は、セント・サーペント様がお使いだったそうです。家具は手直しされているものもありますが、おおよそそのままでございます」

 おお、その割には古びたところもなく、素敵だ。

 俺の表情を見て、案内してくれたメイドさんもにっこり笑う。


「隣の寝室のベッドは、大きい物に変えてもらったがな」

 先生。ニヤッと笑いながら言う。品が悪い…が、とりあえずスルーだ。


「廊下にお出にならずとも、そちらの扉から寝室の方へお移りになれます」

「へえ。そうなんだ」

 扉を開けてみる。

 あれ?

 右、左、正面と3つも扉がある。


「右が洗面所とトイレ、左がシャワーで、正面が寝室でございます」

 疑問に先回りされたよ。


「ふーん、あっちの扉は?」

「応接室に通じております」


「メイド殿。案内ご苦労。こちらはもう十分だ。アレク様付きメイド達に詳細な説明を頼む」

「はい、ランゼ様。承りました」

 本館付のメイドが、部屋を辞していった。


「ふう、よくしゃべるメイドだ」

 先生がこぼす。

「それにしても流石は聖者。通路だけでなくいくつか仕掛けがあるようだな」

「そうなんですか?例えば?」

「ふふふ。自分で探した方が楽しいと思うがな。ああ、大丈夫。間違っても死人は出ないようになっている」

 先生が楽しそうなんだが。まあ良い、自力で探してみよう。


「それで、今夜はどうするんだ?」

 はっきり言わないときは、大凡おおよそいかがわしい話題の時だ。


「まあ、ユリか…良ければ先生と」

「連日だな」


 何、その好き者だなって、罵る感じ。

 この歳頃の男子は、みんなそんなだよ!


「では、ユリと」

「レダやアンには、手を出さない積もりか?」

「いやいや。お手付きは、2人も居れば十分でしょう」

 きっと睨まれた。

 私はメイドではないと言うことか?。 


「まあ、レダは置いておくとしても、アンは落胆するであろうな」


「あのう。専属って、夜伽前提なんですか?」

「主人がじじいならともかく、若ければ他に何がある。でなければ、男の従僕にするだろうな、伯爵のように」

「そうは思いませんが…」

 まるで、親父さんが、恐妻家みたいじゃないか。



※屋敷とは建物と敷地の両方を指す。この物語では、屋敷の中に館があると理解されたい。ただし、セルビエンテのサーペント本家は、城の中にあるため、屋敷とは呼ばれない。

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