202話 再会と動員
先生が繋げた亜空間を通じて、王都の自分の館に出る。
ん?
なんか人気が多くないか?
ここには居たとしても、家令のテレサとゲッツ位のはずだが。
反応のある場所も変だ。反応があるのは居間だし。
取り敢えず行ってみる。
「誰かと思えば!」
「アレク様ぁぁ」
「やっぱり来たぁ」
「本当に……」
居間には、テレサの他、カレンとルーシア、エマにビアンカまで居た。
「お帰りなさいませ!!」
「ああ、カレン。ただいま」
カレンが俺に抱き付いてきた。
俺も腕でぎゅっと抱いてやる。
その向こうで、テレサもお辞儀している。
「一日も早くお会いしとうございました」
「ああ。俺も会えて嬉しいよ」
相変わらず良い匂いだ。
「伯父の館に居りましたが、淋しくて、心細くて。アレク様のことばかり……アレク様なのですから、ご無事に決まっていますのに」
「ああそうだな。俺は、カレンに会いたくて、全速力で帰ってきたんだ」
嘘じゃない。半分くらい本当だ。
「アヘン、ゴホン」
「なんで、ここに居るんだ? エマ」
「えぇぇぇ。それはないんじゃない。アレク様」
「戒厳令が出ているだろう」
「外出禁止令は夜間だけだし。そうだ! あとレダちゃんが居れば、アレクズ勢揃いだね」
「私がどうかしましたか?」
「うわっ。びっくりした。レダちゃん、久し振り」
「ああ、どうも」
素っ気ないレダに構わずエマが抱き付いた。
「でも、なぜ皆様、ここにいらっしゃるのでしょうか?
「あっ、あのう。申し訳ありません。なぜだか、アレク様がお帰りになるような気がして。つい」
「私は、カレンがなんか知ってるかなぁって、カレンの家に行ったらさ……」
意外と仲が良いんだな。
「……そんな夢みたいなこと言い出してね。ラメッタに行って行事が終わるのが、昨日か今日かって予定なのに、ありえないでしょと思ったけれど。カレンがここに行くって言うからさ。それなら私も当然行くわよってことで」
どこが当然なんだか。
「私も婚約者にしてもらえば、分かるようになるのかなぁって」
「無理だな」
「むはぁぁあ。じゃ、じゃあ、試してみませんか? アレク様」
めげないやつだな。
あっ!
忘れてた。扉の方へ向くと同時に開いた。
「おお、アレク殿。気が利くな。皆を呼び出していたのか?」
皆、ランゼ先生の突然の出現に、慌てて礼をする。
「いえ。なぜか今日俺が帰ってくると、思ったそうです」
「はあ? まあいい。好都合だ。分かって居ると思うが、私は他人の食事の用意など出来ないからな。ルーシアにビアンカ来てくれ、後もう1人給仕を……カレン殿で良いか。借りるぞ。アレク殿!」
肯いておく。
「ランゼ様。お食事の準備ですね、承りました。どなたかお客様でしょうか?」
ルーシアが聞き質す。
「客? ああ」
「ならば、ご本家上屋敷の料理人を呼ばれては如何でしょう」
テレサが、無用に気を回す。
「だめだ。あそこに部外者は入れたくない。それに相手が、ヨッフェンとランベスクだからな」
「偶然かと思うのですが、国王陛下と宰相閣下のお名前と……」
「本人だ」
「はは。ご冗談を……」
3人の顔が引き攣る。
「冗談など言っている暇はない。あと名前は忘れたが、大人の女と子供も一人ずつ居るからな。付いてこい」
「そんな……わっ、私など恐れ多い。国王陛下へお食事……なんて」
「はあ? 相手が誰でも構わんだろう。作る料理は同じだろうに」
「「違います!!」」
ルーシアとビアンカがハモった。
「ああ、うるさい! とにかく付いてこい!」
先生が3人を引き連れて行ってしまった。
「折角、アレクズ再結成だと思ったのに! それで、なぜ私が置いて行かれたんだろう?」
料理を作れないし、給仕としては陛下に失礼なことをしそうだったからに違いない。
「分かった! 私にアレク様を手伝え「帰れ!」って、えっ?」
「学生気分で国の危機に立ち向かうな……」
「ひぃ……」
「……とは言わん。だがな、エマを危ない目に遭わせるのは、男爵殿に申し訳ない。だから帰れ」
「うぅぅぅアレク様のいじわる!! 帰らないもん!」
目尻に浮かんでいる、あの液体は何だろう?
「じゃあ、ずっと居ろ! テレサ!」
「はっ、はい!」
「本家館に行って、ダイモ……」
「アレク様?」
「ああ、不要になったようだ」
「不要?」
王都館に詰めている家宰ダイモスとアンが、部屋に入って来た。アンが連れてきたのだ。態度はもう1つだが、気は利く。
「アレックス様」
「執務室へ行くぞ」
エマを置いて部屋を移動する。レダを含めて4人だ。
「アンから聞いて参りましたが。驚きました。して、御用は?」
「うむ。父上からだ」
封書を出して、ダイモスへ渡す。
封を切って読み始めた。何と書いてあるか知らないが、文面は短い。手が震えたような気がしたが、すぐにこちらに向き直った。
「セルレアンは無事。基本は事前に緊急時行動指示書に遵うこと。ただし、アレックス様より指示が有った場合、その限りに非ず。たとえ、政府、軍へ敵対することになろうとも、アレックス様のご命令に対して全面的に服することとあります」
「なんだと!」
ダイモスから便箋を受け取る。
その通り書いてあった。
「むぅぅ。父上……」
鉄壁の信頼──
それ以上か……俺と心中しても構わないと言う宣言だ。
ダイモスが頭を下げた。
「ああ、アレックス様!」
便箋と封筒が、俺の手の上で紫の炎を上げた。
上がって数秒後に灰も遺さず燃え尽きた。
「ダイモス!」
「はっ!」
「セルレアンの上屋敷は余り関わるな」
「あっはははっはっは……」
「ダイモス?」
「失礼致しました。アレックス様とも思えないお言葉でしたゆえ。あぁ、それと、もはや手遅れにございます」
「ん」
「我ら臣下にとっては、御館様とアレックス様は一心同体。こと、未来の事象に関しては、恐れながらアレックス様に賭けております。でなければ、あれだけの大金は注ぎ込むことを皆が賛同するはずはありません。付いてくるなと仰っても、まとわりつきますから」
「平時と変事では、話が……」
「平時にこそ、如何に身命を賭することがご奉公。変事は言うまでもございません
どいつもこいつも。腹が据わっている。
「わかった。協力はして貰う。アンは黒衣衆、ダイモスは隠密行動に長けた者を10人程、極秘で呼んでくれ」
「仰せに遵います!」
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