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201話 隔離

「ラメッタより、どうやって戻られた? アレックス卿。 転移門は使えなくされていると聞いたが」


「閣下。その話は、後程。ただいまから皆様を隔離させて頂きます」

「隔離?」


 ベッドの上の人はこちらに向き直る。

「魔人よ。朕は王として、この地を離れるわけにはいかぬぞ」


 先生の眉が吊り上がった


「我が儘言うんじゃない! ヨッフェン」

 陛下の首が反射的に引っ込む。

 昔の教え子なのかも知れないが、呼び捨てはだめじゃね?


「しっ、しかし、魔女殿」

「アレク殿の邪魔をせぬように協力するのだ」

「はっ、はぁ……」

 王も形無しだな。つか侯爵、黙ってないで庇えよ。


「では話を戻します。陛下には、この地には居て頂きます。が、外の者に陛下ならびに皆様へ手出しできないようにさせます」


「どういうことか? アレックス卿?」


「口で説明しても、お分かり戴くのは困難でしょうから……ところで侍女の姿が見えませんが?」

「水晶殿……この建物から全員外に出された」

「そうですか。閣下以外の閣僚の皆さんは? 官邸に監禁されていると聞きましたが」


「うむ。今は居ないはずだ。私も同じように囚われていたが。ここ、陛下の元へ移される時に皆々外へ出された」

「それは何時のことですか?」

「昨日の、昼の2時位だ」


「分かりました。取り敢えず、ここに居る皆さんのみを隔離します。では」


 魔収納から、一番長い綱を出庫した。

「綱?」


「先生、これ」

「ああ」

 綱の端を持って貰って、そこから綱を床に垂らしながら歩く。ベッドをぐるっと回り込んで、先生のところへ戻り、端を受け取って結ぶ。それを床に降ろした。


「輪になったが」

「閣下も中に入って下さい」

 ストラーダ候は眉間に皺を寄せつつ、綱を跨いだ。これで、この部屋に居る者は全て輪に入った。


「魔法を使うのだな。危険はないのか?」

「ありませんが……慣れない人はというか、皆さんは眼を閉じて戴いた方がよろしいかと」


 先生以外は眼を閉じた。


─ 小宇宙(コスモ) ─


 辺りが銀色に輝き瞬いた。一瞬重力がなくなるような感覚があったが、瞬時で床へ着いた。

 いつものように、真っ白な空間に居た。


「皆様。着きました」


 国王家族も侯爵閣下も、唸りながら辺りを見回している。


「なっ、なんだ。魔人殿、ここはどこなんだ」

 王妃が王子を抱き締めている。


「危険はありません。どこかと言われると難しいですね。どこでもない場所と言った方がいいでしょうか。真上をご覧下さい」


「あっ、あの天井! 輪の中が」

 王子が気が付いたようだ。


「あの綱の輪はさっきの。まさか寝室の下を掘ったのか?」

「掘っては居ませんが、寝室の床と繋がっています」


 先生以外の人達は、顔を見合わせた。


「済まんが、よく分からない」

「ええ。余り深く考えないで下さい。魔法で別の空間と繋げていると考えて下さい。ただ今のところまだ繋がっているだけです。こうしますと」


「向こうの部屋が見えなくなった。もう帰られなくなったのか?」

「向こうから入れなくなっただけです。これで、向こうからこちらへは危害を加えることはできません、閣下。こちらからは、出るようにはできます」

「そっ、そうなのか?」


「ストラーダ侯よ。落ち着け。朕は数日前から生きていることにを不思議に思っている。それに魔人殿が我らに危害を加える気になれば、瞬時に跡形も残さずできるであろうよ」


 ほう。陛下は肝が据わっているな。


「さて、先程のご質問、どうやってラメッタから帰って来たかですが」

「そっ、そうだ。こんなに早く帰ってきたか……空を飛んできたのか? 魔人殿」


「ええ、飛んできました。が、ただ飛ぶのではなくて。翼を持った舟に乗って飛んできました。別の者も乗せて」

「ほう。その舟には、朕も乗ることができるか?」

 えーと。尻がシートに入らないような……。


「ランゼ先生の飛行艇は、広くて乗り心地がよろしいと存じます」


「なっ! ヨッフェンなぞ乗せんぞ! 大体侍従共が許すわけないだろう」 


 陛下が残念そうに項垂れた。


「そうそう。お土産ではありませんが、借りてきた物があります」

「ほう」


 大きい物なので少し離れる。


「これです」

 魔収納から、例の槍を取り出す。


「ちょ、ちょっと待て。ラメッタから借りて来た、十字槍と言うとまさか?!」


「ええ、聖王聖下に許可を得て抜いてきましたけど」

「わぁぁ。あの聖ロムルスの槍ですか!!」

「王子!」


 王太子が、こちらに駆け寄ろうとしたを王妃が止める。


「うむ! そうだ、わが空間と繋げよう。ここだけでは殺風景すぎるしな」


 先生が腕を振ると、空間の横に向こうの景色が現れた。


「王妃殿、オルディン殿。我らはあちらに行って居よう」

 先生が2人を連れ出してくれた。先生は実は気が利くよな。自分が気に入っている対象にだけだが。


 これをこうして置いて……と。始めるか。


「さて、陛下。ご命令があれば伺います」


 陛下も閣下もきょとんとしている。


「ああ、いや。アレックス殿。ここまで来たのだ、そなたにも腹案が有ろう」

 

「もちろん有りますが。まずはご希望があれば伺った方が良いかと」

「それもそうか」


 できないことは断るけどな。

 俺と、閣下の視線が陛下へ寄る。


 ううんと咳払いし、国王がベッドの上に起き上がろうとしているところに、ストラーダ侯が素早く寄り添う。そして王の背中を支えた。


「朕が望むことは、ただ1つ。民の安寧のみだ!」


 はっ? まじで?

 ここまで巨漢というか肥えているから、さぞかし欲求が強いのかと勝手な先入観を持ってしまったが。

 なんか、言っていることが斉竜と似てないか?


 ストラーダ閣下を見たら、我が意を得たりと肯いている。

 まあ、俺に建前を言っても仕方ない。

 陛下の本望なのだろう。


「確認になりますが、陛下の身柄は?」

「反逆した賊が、朕や我が一族を人質にして、民の生命や暮らしを壊すようであれば、賊諸共に朕を滅ぼせ! 我に衷心より尽くしてくれる、この義父を罵る者があれば、その蒙を開かせよ! 良いな!」


「承りました! そうならぬよう、微力を尽くします」


 あの聡明なストラーダ閣下が、陛下を奉るのはこういうところか。

 悪くないな、こういうのも。

 陛下を誤解していたというよりは、よく知らなかったと言うべきだろう。それで今までは支障が無かったわけだが。


 いずれにしても、想定以上の答えは戴いた。


「数日間ご不便をお掛けします」

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2025/09/23 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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