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180話 弱点克服

すみません。

どうも、昨日投稿した表現(アレクとアレックスの掛け合い)が、気に入らなかったので、大幅に改変しました。

話の筋は変わっていませんので、既にお読み戴いた方には、読み直して戴く必要までは無いかと思いますが、分かりづらかったという方はお試し下さい。

 灰燼と化せ! 紫炎となりて 万象を灼き滅ぼせ ─ 焔陣アスピーダ ─


 紫がかった炎が、腕の先から迸り、白い空間を焼いた。

 ゼルバヴォルフの言で危機感を強めた俺は、対策のため魔法で作った亜空間に籠もって居る。


─ 不二一元(アドヴァイタ) ─


 素早く炎を封じ込め、上級感知魔法で観察する。


 むう……。


──やっぱり、アレクのイメージと違ってる?


「ああ。以前の約16倍位の熱量が出ている」


──16倍!? 本当なの?? そんなに魔力を使って無いけど! あり得ないって!


 ふむ。

 今後のことを考えると、アレックスにも理解して貰った方が良いだろう。

「今からきちんと説明するから、面倒臭がらずに聞いてくれ」


──ええぇぇ! ……わかったわかった、そんなに恐い顔しないでよ!


「まず、アレックスも信じている、魔法の威力は魔力消費量に依存すると言う定説は、不完全だ!」


──不完全? どこが? 実感と合ってるけどなあ、いや最近は、ちょっとあれだけど……


 感覚派のアレックスも、少しは疑問に思っているようだ。


「その説は、特定の場合しか成り立たない……と言っても、ほとんどの魔法師は該当するがな」


──あぁ、ええ?


「少なくとも俺や竜には通用しないし、人族とエルフ族では少し違う」


 何か言いたそうだが。考えているようだ。


「魔法の効果は、あくまで魔束密度の2乗に比例するんだ。魔力消費量は、魔束密度を決める要因ではあるが、唯一の要因では無い。つまり、他の要因もある」


──魔気複素インピーダンス?


「なんだ、知ってるじゃないか」


──うううん! アレクと先生の問答で聞いたから言ってみただけで、よく分かっていない


「じゃあ、もっと根源的な話からだ。魔束は亜空間から来るのであって、魔力は亜空間との壁を通り抜けさせるために使うエネルギーだ。分かるか?」


──わかんないって!


「うーーん。じゃあ、例え話をしよう。水道の蛇口を開いて水を出すことを考えてくれ」


──うん


「蛇口を開く、それが魔法を使うということだ」


──はあ……で?


「魔力は、蛇口をどれだけひねれるかということで、魔法は流れ出た水が起こす現象に相当するんだ。そうだとして、水の力は蛇口のひねりに依存するか?」


──するでしょ! 一杯ひねったら、水が沢山出てくるし。


「ああ、するな」


──へっ?


「じゃあ、蛇口の大きさが違ったらどうなる?」


──どうなるって、そりゃあ……


「そりゃあ?」


──水の勢いが違って来るってこと?


「そういうことだ。蛇口がそれぞれ違うのに、みんな同じだってのが定説になっている。蛇口の大きさは……」


──魔気複素インピーダンスなんだね


「わかってきたじゃないか」


──矛盾は無いけど、本当なの?


「信じろ。俺はその定説をこの身で覆しているんだからな」


──そうだね。魔法を使っていて実感はあるし、信じることにするよ!


「話を戻すぞ! 今起こっている問題は、俺がかなり魔束を通しやすくなっていることだ。竜化する前と同じ感覚で魔法を使うと、効果が段違いに大きくなっている。火属性魔法で言えば、意図したレベルと乖離した熱量が発生してしまうことだ。それで魔力の制御難易度が一気に上がってしまった」


──ああ……あとはそもそも魔力も何倍にもなってるしね


「ああ」


──原因は分かったけどさあ、対策は? 修行あるのみ?


「まあ、普通はそうするのだろうがな」


──と言うと?


「曾爺さんの書斎にあった、資料を読み漁る中で気が付くことがあったから、それで行こう!」


──それって具体的にはどうするの?


「そうだな。魔力の印加方法を変えるのだか……その前に、アレックスはどうやってる? ああ、俺は蛇口のイメージだ」


──ふーん。僕は、最大値の何割何分位かぁって感覚で。僕の想像の器があるんだけど、そこに魔力を貯めていって、描かれた目盛りに達したところで発動させるのだけど。


「ほう……俺とアレクとで少し違うが、原理的に言えば同じだ。要は連続量を調整しようとしていたわけだ。魔力が小さい内はそれでもいいが、大きくなれば分解能は悪くなるし誤差もでかい」


──ところどころ言葉が難しいけど、大体分かるよ。でもそれ以外に方法は思い付かないけど……


「実は魔力の調整は、全開(ON)か、全閉(OFF)かだけなら、怖ろしく速く調整できるんだ」


──ああ、そうだね。でもそれなら、全力か0しかない、極端なことにならないの?


「いや。例えば、全開、全閉、全開、全閉……と交互に繰り返せば、等価的に半分にできる」


──おおう! 頭良いね。でも魔束は止まらないの?


「魔力印加は途切れ途切れだが、魔束は平均的に途切れなく流れる」


──へぇー、いいね! それで、それで!


「例えば256段階で良ければ、連続8回のパターンでいける。PWMだ!」


──ピーダブ……って何? また前世の話?


「ああ、パルス幅変調って意味だ」


──もう! 一々言葉が難しいんだって! まあいいや、それで、どのくらいの速さで開と閉を切り換えるの?


「そうだな。1秒間に100万回位で……」


──はっ? 冗談だよね? そんなの出来るわけないじゃん!


「アレックスに制御しろとは言っていない。それに今でも、やろうとすればやれる」


──はぁ?


「できるんだよ。脳がやってくれる。まあ、ざっと内容は理解していないと駄目だがな。曾爺さんの遺した本を読んでいて分かったが、俺達が使っている魔法は、高級魔法だ!」


──高級?


「そうだ、曾爺さんの本は原初魔法と書いてあったが、あれは低級魔法とも言える。高級魔法は、その低級魔法の複合体でできているんだ。だから、知らずに使っているが、魔力制御についても、低級魔法を直接叩け(コール)ば、PWMができる」


──はあ……なんかもう付いて行けないけど。ともかくアレクが指導してくれるのなら、やってみるよ。


 アレックスも理解しないとだめなんだが……あれしかないか。


「ランゼ先生に禁止されていたやつ。俺と思考同調しよう」


 思考同調──


 共鳴状態の先にある状態。

 膨大な情報移動ができる。まあ同一人になるのと同じだからな。


──でも、あれは……だめだって!


 そう。副作用もある。

 先生は、下手をすれば、俺とアレクの人格が、混淆してしまうとか言っていたが。


「無意識でなったことがあるじゃないか。意図的にやっても短時間なら、大丈夫だろう」


──ふみぃぃ……困ったね。アレクは言いだしたら聞かないし。


「よーし、良い覚悟だ」


──まだやるって言ってないって!


「行くぞ!」


 脳幹に痺れのような感覚が走り、俺とアレックスは共鳴した!

 さらに意識を切った。


 その刹那。

 自分が大きくなったような感覚が走った!

 自我が拡大したのだ。

 極上の祝福魔法を掛けられたような愉悦が全身を包み込む。


 流されては駄目だ! やることをやらねば。


 魔束は交流だ

 魔界強度の波形と波長の短い三角波と比べて、大きければ全開(ON)、小さければ全閉(OFF)にする。単純だ!


 前世でよく使われていた三角波比較方式だ。

 魔界強度が高ければ、三角波の頂点付近でしか比較して小さくならないから、パルス幅は広くなる。逆に魔界強度が低くなれば、三角波の谷底付近でしか大きくならないから、パルス幅は狭くなるそう言う方式。


 必要なのは三角波発生の魔法と、比較魔法、比較結果で魔界印加の切り替える魔法、それらを短時間で繰り返す魔法……。


 それから、それから──

 次々必要だと思うことを、詳細に思い浮かべた。


     ◇


 ふう。

 感覚では長い長い時間だったが、同調が切れて見れば数秒しか経っていない

 なんだろう。躁状態というか、全能感から醒めたようにも感じる。

 先程までは、脳内麻薬がかなり分泌されていたのかも知れない。


──ふぅわぁぁあ。何だか凄いよ


 何だか、アレックスがまだ恍惚となっている。


──アレクと最初に結ばれた時みたい


 そんなことを、思い出すんじゃない。

「で、どうなんだ?」


──アレクと溶け合ったみたいで、考えていることが一気に入ってきたよ。凄いね。もっとずっと繋がっていたかった。


「やはり同調は危険なのかも知れん。何度も繰り返せば誘惑に勝てなくなる時が……」


──だっ、大丈夫だって。でも、これからは自重しようね。それより、魔法を! 呪文は同じで良いんだよね?


「そうだ」


 多重定義オーバーロードになってるから、魔力制御を意識すれば、新しい魔法の方が自動的に呼び出される。


 ふっと息を吐いて、魔法を発動する。


─ 焔陣アスピーダ ─


 同じように、やや紫がかった炎が、腕の先から迸り、白い空間を焼いた。

 しかし、質が違う。


─ 不二一元(アドヴァイタ) ─

─ 焔陣アスピーダ ─

─ 不二一元(アドヴァイタ) ─

─ 焔陣アスピーダ ─

─ 不二一元(アドヴァイタ) ─


 一頻しきり試行と評価を実施する。


──凄いね、原初魔法! 想像通りの威力だし。しかも、ばらつきが全然無い。


「ああ、少し見えてきたな!」


 少し発動時間が余分に掛かり、使う魔力オーバヘッドも大きくなったが。

 それこそ、修行次第、慣れ次第と言ったとこだろう。

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訂正履歴

2017/7/3 表現を大幅に見直し

2025/09/23 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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