表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/224

19話 従姉妹と叔父とダメ出し

「しっ、失礼します」

「どうぞ」

 ゾフィが3人を案内してきた。


「おお、御曹司。元気そうで何より。見違えたぞ」

「これは、叔父上。わざわざのご挨拶痛み入ります」


 おやじさんも、なかなかの偉丈夫だが、グリウス叔父はさらに一回り大きい。腕も俺の脚より太い位だ。矛槍ハルバートを握らせれば10人力だ。

 9年前の戦役では、罠にかかり、囲んできた8人を戦闘不能に追い込んだ。そして数百の兵を半分の味方で打ち破ったという剛の者だ。

 しかし、平時は優しい人の良いおっさん…それがアレックスの記憶だ。


 いいですね。俺は、こういう人になりてーー。

 あの大胸筋からの僧帽筋の盛り上がり。理想だね!

 正直、乗っ取るなら、この躯だよ!

 ああ、言っておくが、こうなりたいだけで、こういう男が好きというわけではない。


「いやいや。儂も心配だったが、それ以上にイオが来たい来たいと申してな」

「お父様!!」


「そうでしたか。エヴァ姉さん、イオちゃん。お久しぶり」


 エヴァ姉さんは、従姉だが2つ年齢が上だからそう呼んでいる。

 おお、また美人姉妹だ。確変続行中です!

 それにしても、うちの一族は綺麗な女性が多いなあ。


 まあ、曾祖父ひぃじいさんは偉人だし、家系も領主だから、美女が嫁に来てくれる確率高いよな。当たり前と言えば当たり前かも知れないが。


 3人がソファに座ったところを見計らったのか、ゾフィが部屋を辞していく。

 その後ろ姿を、グリウス叔父が長く見送っていた…。


「あら、アレクちゃん。随分元気になったねえ」


 ”ちゃん”て…まあ従姉なんて、こんな風だ。

 たぶん、ずぅーーと、それこそ死ぬまで、この人からはそう呼ばれるんだろう。なんか意地悪そうに笑ってるし。まあ、俺はこの人にとって、おもちゃみたいなものなんだろう。


「ああ。聞いたわよ!アレクちゃん、婚約破棄したんだってね」

「はぁ」

 俺は、気にしていないが、叔父さんの目が白黒してる


「あの女、セシル…だっけ?鼻持ちならない、嫌味な女に、純粋だったアレクちゃんが、ころっと引っかかっちぁったなあって、思ってたのよ」


 確かに。

 どうしてあの女と、仮とは言え婚約したのか。それは謎だった。

 最近こうじゃないかと思えるのは、どうせ望まぬ結婚をするなら、最初から仮面夫婦になろうと、アレックスが考えてのことではないだろうか?という仮説だ。まあ流石に殺そうと思ってるとは考えてなかったろうが。

 今度、夢で会ったら訊いてみよう。


「おい、エヴァ」

「お父様は、黙っていて!でも、破談になって良かったわよ。あんな女が伯爵夫人になっていたかと思うと虫酸が走るもの…良かったわね、イオ」

 見かねた叔父がたしなめようとするが、それで止まる人じゃないらしい。


「お姉様、なんてことを…」

「本当のことじゃない」


 ふむ。何て言うか。エヴァ姉さんは、中身がおばちゃんだね。

 綺麗なんだけど惜しいなあ。

 まあ、この人にとって、俺は恋愛の対象ではないし、身内の気安さで素を見せているのだろう。嫌いじゃないけどね。


 その点、イオちゃんは愛らしい。

「姉の言ったことは、嘘です。アレク兄様の破談を望んでいた、なんてことはありません」

「ああ、わかってるよ」


「ああ、そんなだから、アレクちゃんは、女に騙されるんだからね」

「エヴァはもうたくさん喋ったろう。イオにも喋らせて上げなさい」

「はあい」

 ふて腐れて、エヴァ姉さんは横を向いた。


「でも、アレク兄様が、お元気に成られたと聞いて、イオはとても嬉しかったです」


 少し飴色がかった、金髪に目鼻立ちははっきりした美人さんだ。睫がとても長い。ふわっとした頬が年相応でとても可愛いな。


「ありがとうね。イオちゃん」

 思わず、頭を撫でてしまった。

 

 なんだかうっとりしてるね、イオちゃん。

 エヴァ姉さんの話と、今日の態度を見ていると、どうやら俺のことが好きなようだ。

 それぐらいは、鈍い俺でも分かる。


 いいよな、ハンサムは。

 って、今は俺か。

 うーーむ。やっぱり外見にふさわしい、人間性を備えないとなあ。


 それには、やはり身体を鍛えないとな。

 健全な身体にそ、健全な精神が宿るだ!

 やっぱりプロテイン欲しいなぁ。


「アレク兄様…アレク兄様!」

 おっと、思考が深く潜りすぎた。

「何かな」

「そんなに、ずっと見られると恥ずかしいです」

 おっと、しまった。


 なんて返そう?


 1.イオちゃんが可愛いからさあ…(叔父さんに悪い)

 2.少し考えごとしてた…(イオちゃんに悪い)

 3.イオちゃん、誰かに似てるよね…(当たり障りがない)


 3だ!


「前から思ってたんだけど、イオちゃんって誰かに似てるなあって」

「ええ?誰ですか?」

 乗ってきた乗ってきた。


「あっ!私も知りたい!」

 げっ!エヴァ姉さんまで。なんで、このベタな話題に。


「前にも言われたことがあるんです。私にとてもそっくりな人が居たって」


 ああ、そうなんですか?

 何?この嘘から出たまこと状態。

 思い出すわけないけど、眉間に皺寄せして考えるフリ。


「そうなんだ?!うーん…ごめんね、はっきりは思い出せない…しっかり考えとくよ」

「お願いします」


「さてさて、おまえ達、父はな、兄上に呼ばれているんだ」


 そういえば、ここに来ても良さそうなものだが、親父さん忙しそうなんだよな。

 何に忙しいのかな?


「叔父上、やはり例の件ですか」

 例の件とか、本当は知らないけど。いわゆるカマ掛けってやつだ。


「そう…」

 言いかけてやめ、こっちに身を乗り出して、耳打ちしてきた。

「…今回の密輸団は巧妙でな。兄上も手を焼いておる。今からはその会議だ」


 密輸団か。

 このセルビエンテは港町だから、そういうのが来ても不思議ではないな。


 早く親父さんの仕事を、手伝えるようにしたいものだ。

 叔父上は、カマに見事に引っかかったが、アレクの話術の効果というよりは、今までアレックスが築いた信用が大きいのだろうな。


「…もう1つ叔父上に、少し訊きたいことが」

 絶対訊いておきたいことだ!


「何かな?」

「叔父上は、そのたくましさをどうやって、手に入れられたのかと…」


 ふむと、自分の下顔をでかい手で掴んだ。


「そうだな…御曹司には悪いが、儂は幼児のときに既に、同じような歳のものより2回り程でかくてな。それは兄上も同じだったが。そのあと隠居した父に言われて、槍の訓練をしていたら、御曹司の歳頃には、おおよそこんな身体になっておった」


「つまり、生まれつきと幼い頃からの鍛錬ということでしょうか?」

 叔父は、大きく頷いた。


「多くの兵を鍛えてきた経験から言えば…御曹司はもしかして、厳つい肉体に成りたいとか?」

「はい。できれば叔父上ぐらいに」

「そっ、それは初耳だが…うーむ…」

 おっ、性急すぎたか。

「死にかけまして、身体を鍛えたいと思いまして」


「えーー。だめだめ!!!こんな筋肉だるまなんて、駄目よ!アレクちゃんは、このままで居てよ…って真剣みたいね」

 エヴァ姉さんが、頭を抱えた。


「お父様。この際だから、はっきり言って上げたら?」

「むう…そうだな。その身体を、儂のようなというのは、そのう…」

「お父様!」

「そうだな」

 叔父は居住まいを正した。


「さっき言いかけた、経験から行けば、体質として限界がある。御曹司は、戦士よりは今まで通り魔法師を目指された方が良いと思いまする。無論、その大きさで筋肉質に換えるのはできる。励まれるとよい。ただ御曹司は、いずれ祖父のような偉大な魔法師になってくれると、叔父は信じておりますぞ」


 けっこうオブラートに包んでくれたようだが、結局無理!って駄目出しだよな。


「そうだな、見る限り。さっきの、メイドは良かった。あれぐらいだと鍛え甲斐があるな。立ち居振る舞いが戦士向きだ。何か武術をやっていた歩き方だしな」


「お父様は、一言多いわ!」

 ゾフィか…確かに筋肉付きそうだよなあ。がっくり。


「…でっ、では。名残惜しいですが、おいとましよう。なあ」

「「はあい」」


「今日は、わざわざお越し戴き、ありがとうございました」

是非是非、ブックマークをお願い致します。

ご評価やご感想(駄目出し歓迎です!)を戴くと、凄く励みになります。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ