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18話 妹

「お久しぶりです。お兄様!」

「やあ、フレイヤ。久しぶり!」


 親族や親しい仲の者と会う、奥の対面の間だ。

 私室ではないので、大理石の床に魔石シャンデリアと豪華だ。

 白い柔らかな革張りのソファに座り、高貴な薫り漂うカップを傾ける。


「ご回復の由、おめでとうございます。私も安堵致しました」

「心配掛けたね」

「いっ、いえ」


 へえ。妹って敬語が使える動物だったんだなあ…と、我ながら偏見に満ちた感慨に浸る。

 肉眼では初めて見るから、まじまじ見てしまう。

 すらっとした体型で、シルクの艶やかなドレスを着ている。二の腕で絞られたジゴ袖が可愛らしい。ユリ程ではないが、結構胸が育って居る。妹だから…まあ、どうでも良いが。今後も期待できるね。


「なんです、ずうっとご覧になって」

「いやあ、フレイヤは今日も綺麗だなあと」


 アレックスは、良くそう言っていたと思い出した。


「お兄様…」

「なにかな」

「お兄様に、綺麗と言われても、何と言うか…」

「そんなことはない。フレイヤは、母上に似てるからなあ」


 妹に世辞を言うつもりはない。実に綺麗なのだ。

 あの二枚目な親父さんと、麗人のおふくろさんの娘だ。造作の神が意地悪で無ければ、不細工なわけが無い。


 大きな眼に、はっきりした眉。やや細面に慎ましい唇。


 うーん、可愛い。

 妹じゃなかったら、恋人にしたい位だ。

 今のところ人間性は、表層しか窺い知れないが、良い妹じゃないか?

 半疑問で全面的に信頼できないのは、ランゼ先生のトラウマだ。


 彼女は、はぁと溜息を吐く。


「お兄様こそ、女性みたいに美しいって、以前言っておりましたが…」

「あっ、ああ」

 それは、ユリにも言われた。


「…撤回します」

「ん?」

「お兄様は、立派な男性になられました」

 えっ。最近、今世での童貞を卒業したので、何か滲み出るものがあるとか?そんなわけないか…。


「以前と比べて生気に溢れておいでです」


 あっ、やっぱり。あわてて変なこと言わなくて良かった。


「そっ、そうかなあ」

「あのまま、お兄様がご本復なさらなければ、私も後を追って自決しようかと思ってました」

「えっ?」

 なんだって?


「冗談だよね…」

「無論、父上、母上をを悲しませるわけには参りませんので、実際にはできないと思いますが…冗談などではありません。それぐらいの気持ちだったと言うことです」


「…ああ、心配掛けて悪かったな」


「うふふふ…」

 どうした?フレイヤが笑い出した。


「ハイエストの別荘で、何があったか存じませんが。お兄様は、人がお変わりになりました」

 勘の良さに驚きつつも想定の範囲だったので、照れているという反応をする。


「そっ、そうかなあ?」

「はい!」

「どの辺りが、変わった?」

 嬉しそうに言ってみる。

「そうですね。肩とか筋肉が若干付いたと言うこともありますが…そういう部分部分では無く…」


「おう」

「全体的に、仕草や佇まいが、男っぽくなられました」


 そりゃあ、俺の方は根っから男だからな。

「ふーん」

あの(・・)女が教師になってから、お兄様がまるで女性のようになられて、フレイヤは気を揉んでおりました。それから、少しお兄様が苦手になったのですが…まあ、なんてことを口にしているんでしょう、私は。申し訳ありません。」


 ふーーん。確かに先生は嫌われてるな。

 しかし、妹って、兄が男臭くなることを嫌がるものだと思っていたが…、逆か。まあ前世とは同じじゃ無いよな。それに、妹とは同じ城内と雖も、別の建屋に住んでいたしな。


「いいよ、いいよ。それより、ちゃんと言ってくれて嬉しいよ」

「なんだか、お兄様の笑顔を見ていると、何でも申し上げたくなってしまいますの」

 

「そうだなあ。兄は死にかけてな。生き方を変えようと思ったのだ」

「まあ、お労しい。でも、とても良いことだと、フレイヤは思います。好きだった頃のお兄様に戻られた気がします」


 嬉しそうに満面の笑みを浮かべて、にじり寄ってきたけど。

 随分兄思いだな。


「でも、フレイヤは心配です」

「ん?何がだ?」

「今回は命拾いされましたが。あの女、ランゼ先生は危険です!」

 確かに危険だ。それは俺が一番良く知ってる。


「そうかなあ?」

 でも口では違うことを言う。


「私は、あの黒い女。ランゼ先生はハーフエルフということですが、物の怪の類いではないかと」

 鋭いな!

 確かに、人の類いじゃない。超越者だからな。


「何とか遠ざけることはできませんか…?」


 フレイヤ。言うなあ。

 しかも、俺のことを思ってのことだよな。


「卑怯な言い方になるが…」

「はあ」

「俺は、領主として為政者に成らなければならぬ」

「はい!」


「その男が、周りに薬ばかりを集めては成らぬ、中には毒を置いておかねばな」

 何か、どっかで読んだようなセリフを言ってみた。


「感服致しました。そこまでお覚悟ならば、今回は、引き下がります」

「助かる」


 フレイヤは、5秒程下を向いてから、顔を上げた。


「それから、これで王都への留学、ご一緒にできますよね」

「そうだな、俺も楽しみにしているよ」


「少し話過ぎてしましました。では、次もお待ちのようですから、私はこれで。また夕食の時にお目に掛かりましょう。失礼致します」

「ああ。またな」


 フレイヤが、対面の間を辞していった。

 ふう。先生が、プレッシャー掛けるから、妹相手に緊張したじゃないか。

 全然良い子だし。不信感を持たれなかったと思うし、無事に済んで良かった。


 壁に掛かってる、控え室に続く綱を引っ張る。

 紅茶カップを片付けて貰わないとな。


 ノックの後、俺付きのメイドとなった、アンが扉を開けて入ってきた。

 フレイヤ向けの手が付いていない紅茶カップを片付けくれる。

 うーむ。ホビットハーフだけあって、背は150cmそこそこだけど。グラマーだな。


「若様のお茶は如何致しましょう?」


 前屈みのまま、こっちを向かないでくれるかな。胸元が無防備だぞ。

 慌てて顔へ視線を外したが、にっこりと笑っている。ワザとか…。

 見透かされてるね。


「ああ、俺は良いよ。ほとんど飲んでないし」


「承りました。それから若様の叔父であるグリウス様とそのお子様であるエヴァ様、イオ様がお見えですが、お通しして、よろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」

 失礼しますと辞して行った。

 ふーむ。アンは要注意だな。

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訂正履歴

2016/04/23 昨夜、今世での→最近、今世での

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