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17話 館の朝

「アレク様。起きて下さい。アレク様」


 んっ、ううぅぅうん。はあぁぁ。


「おはようございます。アレク様」

「ああ」


 上半身を起こす。ユリはもう、メイド服に着替えていた。

 顔を見やると、少し頬を赤らめて視線を外した。


 ふう。

 昨夜の光景が脳裏に浮かび、思わず口元が緩む。

 こうやって見ると、ほっそり見えるが、あの腰からのラインがそそるんだよなあ。

 声もなあ…。


 何だか急に色っぽくなった。

 少し昨日と何か変わったのだろうが…俺には、どこが変わったかまでは分からなかった。


「ユリは、その…大丈夫なのか?」

「えっ…」

 俯いた。

 そして、頭を軽く振ると、何か作業を再開し始めた。


「わっ、私は。大丈夫です。ちょっと歩き方が変かも知れないですけど。それも嬉しいです……はい、どうぞ」


 ん?

 差し出された皿の上には、折りたたまれた布が乗っていて、湯気を上げている。

 ああ、蒸しタオルみたいなヤツか。

 それで顔を拭く。ついでに首筋も拭う。オヤジだ。


 うーん。さっぱりした。


「では、お着替え致しましょう」

「ああ。でもその前に!」


 そう言って、自分の口を指差す。

 もうっと小さく聞こえ、ギシッとベッドがきしんだ。


 長い抱擁が解かれると、ユリがベッドを降りた。


「はい。起きて下さい。着替えますよ」


 まずは、寝間着と下着を全て脱がされた。真っ裸だが寒くない。

 新しい下着を用意して、ユリは跪く。


「今日は…大丈夫ですね。ふふふ…」

 いやいや、君は何に話しかけているんだ。

 大体、昨夜あれだけやっておいて、夢精するわけないだろう。


 下穿き、タイツ、シャツ、スラックス。靴を履かせ、首にスカーフを巻いて貰う。

「はい、よろしいですよ」


 タイミング良く、ノックだ。


「はい」

「ランゼだ。アレクはもう起きたか?」

「はい。どうぞ、お入り下さい」

 

 ユリが答えた。

 扉が開いて、先生が入って来る。


「おはよう。アレク」

「おはようございます」


「もう良いか?ユリ」

「まだ御髪おぐしの方が…」

「余り過保護にするな、それぐらい自分でやらせろ」

「はあ…」


「ああ、ユリ。自分でやる。もう下がって良いぞ。また食堂でな」


 髪なんざ、手櫛で梳けば十分だ。

 というか、もっとばっさり短く切りたいのだが…残念ながら先生も、ユリにも大反対され、まだ実行に移せてない。


「はい…失礼します」

 先生とすれ違って扉が閉まった。


「先生。ご用ですか?」

「ああ」

 そう言いながら、先生はソファに座った。

 俺は立ち上がり、ドレッサーに向かうべく、先生の前を通り過ぎようとしたとき。


「ふーん。昨日ユリとやったんだな」

「えっ?なっ、何のことですか?」

狼狽うろたえるな。ユリの顔を見たか?昨日までの険が消えて、随分穏やかになっただろう」

「はあ」

 たしかに、言われてみればそうだ。


「よくやった、褒めておこう」


 むっ。

「別に、先生に言われたから、抱いたわけじゃない。俺が好きだったからです」

「まあ、そう怒るな」

「ですが!」

「うーむ。正面切って他の人を好きだと言われると、なんだか少し妬けるな」


 まずい、まずい。

「あっ、ああ。でも、先生も、そのう…」

「なんていうか、世話してきた犬が、他人の方に懐いてる感じか」


 あぁー、はいはい。俺は先生にとってはモルモット…の交換パーツでした。


「ああ、そうですか」

「だがな、余りむさぼりすぎるなよ」

「はい?避妊と言うことですか?」


「いや、避妊のことは心配しなくても良い。それよりユリのことだ、余り心配は無いが、おおよそ女というヤツは、勘違いする生き物でな。情を通じた男の地位が高いとな、自分も偉くなったと勘違いする輩が、結構多いのだ」

「はあ…」

 そういうものなの?


「ユリは、所詮、めかけにしか成れぬ。それが貴族制だ。勘違いさせ過ぎると、いずれ正妻を迎えるときにさわりとなるからな」


 …自分勝手かも知れないが。先生は先生なりに、俺のことを心配してくれてるだな。


「心配するな。妾でも、十分ユリを幸せにできるぞ。おまえなら」

「そうなら良いんですが…」



「さて、話が横道に逸れたな。本題に移ろう」

「はい。なんでしょう」


「今日はな、おまえにまた客が来る」

「そうなんですか」

「そうなんですか?ではない!」


 あっ。意外なところで叱られた。

「と言われましても」

「おまえが、変なことを言って、不審に思われるのはまずいだろう」


 なるほど。それはまずい。

「確かに…どうすれば良いんですか?」

「予め来る人間を、知らせておくから、アレックスに訊いておけ」


 なるほど。会ったときに、あたふたしないようにと。

「で、誰が来るんですか」


「今日来るのは4人だ。おまえの妹フレイヤと、叔父のグリウスと従姉妹のエヴァとイオだな」

「妹が居たんですね」


 先生の片眉が上がった。


 疑問に思うと、情報が流れ込んでくる。


 フレイヤ…。

 俺と1つ違いか。

 最近はそれほどでもないが。幼い頃は仲が良かったようだ。

 ふむふむ。最後に会ったのは療養に行く前の3ヶ月前。

 このまま行くと、俺と一緒に留学か。


 グリウス叔父にエヴァ、イオ。

 まずは容姿を思い出す。

 渋い人だな叔父さん。結構アレックスは、慕っていたようだ。

 全員の顔を思い出しておく。

 エヴァは、グリウス叔父の子だが、イオは連れ子か。


「中でもフレイヤには要注意だ!」

「妹ですか?」


「ああ。あいつは私が嫌いだし、妙に勘が良い」


 勘が良い…。

 おふくろさんが、飼っていた猫が2,3日帰ってこなかったとき、その居場所を当てたとか。最近そういえば、カード占いを始めたのが、良く当てると噂になったことがあったな。

 まあ、大体妹なんて、幼い頃はともかく、長じれば兄を男とも思わぬ人種だからな。


 …なんか俺、詳しいな。記憶は無いが、前世は妹が居たのかも知れない。

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