表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/224

150話 初夜

 老師の実験以降、観閲式は間もなく終わった。が、その後が面倒だった。


 セルレアン軍軍監、つまりはルーデシア軍参謀本部から派遣されている監視人が、俺の館に押し掛けてきて、魔力砲のことを事情聴取したからだ。


 いやいや、聴取する対象が違うだろう。俺ではなく老師に訊け! そう何度も押し返したのだが、いつになく、かなりしつこく食い下がってきた。おそらく参謀本部に克明に報告する必要があるのだろう。

 しかし、老師は恐い! とてもじゃないが、訊けない。

 俺にも実力行使されれば、敵わないとは分かっているだろうが、そんなことをすれば、反逆罪に問われるだろうし、親父さんにも迷惑がかかる。したがって、俺は手を出さないと高を括っているに違いない。まあ、多少はびびっている様だが。


 それでも。監視対象の息子と、軍の重鎮にして魔人とで、どっちを選ぶかと言えば、言うまでもない。


 それは分かるが、俺の忍耐にも限度がある。30分も押し問答になったので、いい加減頭に来た俺は……。

『わかった。話してやろう。ただし、どこまで喋ると軍機に触れるか分からない。老師は、城内に逗留されているのだから、これから一緒に行って立ち会って貰おう!』


 言い切って立ち上がった時に、それには及びませんと抜かして、ようやく帰って行った


 忌々しい! が、やっと終わった!

 そう思った俺は甘かった。


 直後にランゼ先生が来た。

 開口一番! あの魔力の迸りは何だ!

 そうキレ気味に問われて、老師が用意した魔力砲と答えた。

 少し怒りが収まったかと思ったのだが、魔力充填の下りを説明したことで、再び怒りが燃え上がった。


 曰く。

 折角、万全を期して俺の能力偽装をしてきたのに無駄になった。

 普段から老師には睨まれるなって言っているのに!

 日頃から注意しているのに、婚約して気が緩んだか!


 まあ、気が緩んでいなかったとは言えないが。

 この項目を3回ほどループし、アレックスがかなり萎縮し始めた。そんなに怒らなくても! そう激発しそうになったところで、ユリが夕食時間だと呼びに来て、ようやく終結した。


     ◇


「それは大変でしたね」

「ユリが呼びに来てくれなかったら、掴み合いになってたかもな」


 なあ、なぁ、ぁ……ちょっと反響するよな。この浴室。

 のぼせてきたので、浴槽から出て、木の椅子に座る。

 浴槽も木の桶だったら良かったのだけど。檜とか。琺瑯ほうろう製だ。


「今日は、潮風に当たりましたので、しっかり洗いませんと」

「あぁ。適当で良いよ」

 さっき御祓魔法で1回さっぱりしたしな。


「そうは参りません。今夜は」

 海綿を石鹸で泡立て、ユリが躰を洗ってくれる。


 今夜は……か。かわいいなあ、ユリは。

 透ける浴衣姿は、最初は大変だったが、最近はようやく平静で居られるようになった。


「頭は良いよ、頭は」

 ふふふ。

「なに?」

「いえ。巷の女性が崇めるアレク様が、こんなにお風呂嫌いと知ったら、うふふふ」


 いや、誤解するな。俺は風呂好きだ。ただ人に洗って貰うのが苦手、特に頭はくすぐったいんだよな。それにしてもユリは綺麗好きだよな。


「はい、眼を瞑って下さい」

 眼を閉じると、頭から湯を掛けられた。


     ◇


 さて10時を回ったが……。

 そろそろ寝ようかという頃合いだ。何か催しが有る時以外は、セルビエンテの夜は早いのだ。


 コンコンコン。

 おっ! ノックだ。以心伝心!


 コンコンコン。


 あれ? どうした?

 いつもなら、すっと入ってくるのだが。

 扉まで歩いて行って、開ける。


「カレン!」

 薄い夜着の上に、大きなケープを羽織って居る。


「入ってもよろしいですか?」

「ああ。入れ!」


 カレンは、俺の横を素通りして、部屋の中程に進んだ。

 俺は、廊下の両端を見通してみたが、誰も見えなかった。


 ドアを閉め、振り返ると、カレンはベッドに腰掛けていた。

 流石に俺も馬鹿ではない。

『どうしたんだ、この夜更けに』

 何てことは、訊きはしない。

 まあ、婚約したし、良いよな。


 カレンの横に座る。

 頸筋から馥郁たる香気が匂い立った。


「アレク様!」

 おっと、唇を奪いに動き出す寸前に、声を掛けられた。

「ああ」


 綺麗な眼が訴えるように見開かられる。瞳に俺の顔が映っていた。

「私、カレン・ハイドラは、アレク様の妻になり……むぐ」

 彼女の唇を、指で押さえて遮った。


「俺の花嫁になってくれ。カレン」


 幾度か瞬いた。

「はい。よろこんで。アレク様、はぅ……」


 抱き寄せて、口づけする。ケープを毟り取って背中に手を回した。

 そのまま、ベッドに倒れ込む。


「綺麗だ……」

 髪がシーツ広がるカレンを見下ろす。


「アレク様……」


 のし掛かって、頬から指を、頤から首筋に這わせていく。

「くぅ」

 可愛い声に、少し口角を上げつつ、襟元を寛げていく。

 覆い被さって、啄むように唇を頸筋に這わせた。


     ◇


 暖かいセルビエンテだが。流石に冬の深夜は冷える。しかし、室温は24℃を維持させているので、肌を出しても寒くはない。


 俺は、彼女の横に横臥して、ふうと長い息を吐いた。

 改めてカレンを視ると、汗で貼りついた前髪の下で、一筋の涙を流した。


「ん。痛かったか? 少し出血したようだしな」

 カレンは、首を振った。


「少し痺れた感じですけど……そっちは大事ないです」

 そうか。それは良かった。とは言え、そっちじゃなければなんなんだろう?


「ん……えっ? 出血?」

 カレンがむくっと上体を起こす。


「申し訳ありません。アレク様。少しそちらにズレて下さい」

 俺のベッドは、ダブルサイズよりでかい。


「ああ。どうした」

 避けてやると、羽毛入りの肌掛けを、がばっとめくった。

「ああ、やっぱり。汚れてるぅ。消さなきゃ……」


「別にシーツの1枚や2枚」

「だって、ユリさんか、メイドの誰かに視られるんですよ」

 何に問題もないが。


 清め給え 清め給え ─ 御祓ミソギ ─


「……消えたわ。良かった。ってことは、アレク様のも」

「良いよ、俺のは!」

「駄目です! お願いします」

 お願いかあ。まあ仕方ない、どうぞ。


「ああ、汚れてませんね……って、はふぅ。なっ、なんで大きくなってるんですか?」

「そりゃあ、お互い裸だしな」

「はぅ……」

「じゃあ。もう1戦追加ということで」


 再びカレンを押し倒した。


是非是非、ブックマークをお願い致します。

ご評価やご感想(駄目出し歓迎です!)を戴くと、凄く励みになります。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/04/18 アレクが風呂嫌い記述は矛盾するので訂正 (オタサムさん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ルーデシアの人が風呂好き? 最初の頃の設定と変わってるような?
2020/04/18 15:35 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ