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12話 魔法修行と先生と

 昼食の後。

 俺とランゼ先生は馬を駆り、館から5km程離れた丘の上にいた。

 春の風が心地良い。


「ふふん。体力が戻ってきたようだな」

「ええ、上限が60から80に上がってました」

「そうか、体力は魔法師レベル上昇との連動性が乏しい。鍛えれば上がるからな」

「早く一般人の100を超えないと」

「まあ、魔法師だろうが戦士だろうが、200は超えないと物の役には立たぬ」

「精進します」

 凛々しく言えたな。


「ところで、ユリーシャに迫られているようだな」

「何でそれを?」

「さっき乳繰り合っていたではないか」

「み、見てたんですか」


「ふん。見ておらずともわかる。おまえは伯爵と奥様の容貌の良いところを引き継いで、なかなかの男前だしな。何より伯爵家の御曹子だ。こうして元気になれば、女の方が放ってはおかん。私を含めてな」


「はあぁ、先生はともかく。ユリは俺が好きなわけではなくて、アレックスが好きな訳なので、なんだか気が引けて」

「ふん。そのようなことどうでも良いではないか。おまえとアレックスは最早一体なのだ、何ら気にかけることはない」

「そうでしょうか?」

「そうだ。ただし、女に免疫を付けるためにも、まずは私とな」


 うーむ、何だかなあ。まあ、この人が腹黒いのはわかっているが、それを含めても嫌いじゃないし、先生とお手合わせするのも悪くないと思えてきた。

 前世では、お知り合いになることすら有り得ない美形だし、あのナイスバディをむざむざ放置は、勿体ないお化けが出る。


「わかりました。では今夜にでも」

「そうかそうか。ようやくその気になったか。ふふふ。では帰ったら、蒸し風呂に入って肌を磨いておこうぞ」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 次の日も、魔法の鍛錬だ!


「なんだ!全然当たらないじゃないか!おまえの炎は見世物用か!」


 土人形が地面から少し浮き上がって、縦横無尽に動き回っている。今日の課題は、それを的へ火炎イーグニスを当て続けることだ。

 魔法を継続発動するだけでも難儀なのに、疲れない野獣のように機敏に動き回る的に、当て続けるってのは難題だろう。


「そらっ。どうした!」


 叱咤に応えて、気合いを入れ直すが、あっと言うまに火線から、土人形が外れてしまう。


「もっと腰を入れて構えろ!!女一人コマした位で、もう使い物にならないのか!」

 いや、先生お下劣です。

 昨夜の睦言が他人のように思える罵声だ。


──眼で狙い過ぎ、腕に力を入れなくても当たるよ


 何?

 よく見ると、命中しているときも、火の方向と腕の方向は、必ずしも一致していない。

 そうか、これは射撃じゃない。大事なのはイメージだ。

 ただイメージと言ってなあ……。


 その時だった。俺の身体の外に、白い半透明の人型が現れた。

 おっ、俺?

 白いのは俺の身体と、同じ大きさだ。それが俺に重なるように動く……いや少しずれている。

 俺は俺の身体に居るのだが、あの白いヤツの中にも居るような感覚が伝わって来る。


 面白れー。なんて言うかバーチャルリアリティのゲーム世界のようだ

 そして。

 どうやら、あれが見えるのは俺だけらしい。先生はこっちを見ているが反応がない。

 しばらく黙っておこう。


 観察するに、眼も腕も。そして視線はそんなに動いていない。

 的を目で逐うのでは無く、周辺ごと観て、頭で俯瞰して、火線は腕では無く念で制御する。

 右手は添えるだけってヤツだ!あれっ?左手だっけ?


「おっ、なんだ!急にどうした」

 地面を滑るように動く土人形を、火線で捉えられるようになってきた。

 土人形を動かす先生の方が、やや驚いている。


 どんどん火炎イグニートの焔が、土人形を外さなくなっていき、ついには常時焔の中に置けるように火線を動かせるようになってきた。


「いいぞ!アレク。スピードを上げるぞ」

 的の機動が大きく上がった!

 それでも、外すこと無く追尾し続けた。


 5分、10分。それでも火炎イグニート、土人形を灼き続ける。そのうち人型の素焼きができるかもな。


 だんだん先生の機嫌が良くなってきた。


「ふふふ。よし。これまでにしよう」

 ランゼ先生が満足したように頷いた。それと同時に、土人形が地面に落ちて崩れた。

 まだ焼きが甘かったか。


「それにしても。突然反応が良くなったのは、なぜだ?」

「アレックスが、やり方を教えてくれたんです」


「……そうか。あいつがな。なんと言っていた?」

「それが、あまり…言葉は発しなくて。魔法で困っていると、助けてくれます」


「そうか…」


 ランゼ先生は、少しだけ遠いまなざしをした。

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訂正履歴

2016/04/16 訂正取り消し

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