11話 魔法修行とメイドの誘惑
紅蓮の炎を浴びせ 焼き尽くせ! ─ 火炎 ─
俺の右腕からオレンジの焔が火炎放射のように迸り、10m程離れた土人形に殺到する。
封印を外して貰った火属性魔法は、なかなかの威力だ。
こうやって物理的な効果が見えると、ようやく魔法師になった気がするな。
しかし、あの土人形が人間だったらと思うと、ぞっとする…あっという間に焼け死ぬだろう。
初級魔法でこれだ!
魔法師というのは、人間兵器と言っても過言では無い。
なんだか怖いと言う感覚が背筋を昇ってくる。
とは言え、この火炎を発動したり、土人形に当てるのが、俺に与えられた課題では無い。
俺の傍らに立つ、ランゼ先生の手の上にある砂時計の砂が全て落ちきるまで、焔を保ち続けなくてはならない。
「ほらぁ、火勢が落ちてきたぞ、集中しろ!」
「はい」
「動く魔獣に当てるのは困難だ!死にたくなければ、焔を出し続けろ」
「はい」
「あと10秒」
「3・2・1…よし止め!」
焔を止めようとして、反動を喰らった。
手が痺れて、思わずぶるぶるっと振ってしまう。
「最後まで気を抜くな!」
「はい」
「よーし。5分休憩」
ふうぅ、発動7回目でようやく、砂時計1回分持った。
寝取られ復讐(寝てないが)から、数日経って、魔法の鍛錬が始まっている
しかし、魔法指導に掛けては、人が違ったようにスパルタになるなあ、ランゼ先生は!
「どんなもんですかね」
「何がだ?」
「俺の魔法ですが…」
「全然だめだな」
「えぇぇ。だめですか」
「以前のおまえは1回でできた。この時計3往復もな……ソノアトハンニチネコンダガ」
後半がよく聞こえなかったが、3往復か…やるな、アレックス!
「今やっている魔法は、初歩の初歩だ。少しばかりできたぐらいで良い気になるな!天才の名が泣くぞ!」
思わず、サー・イエッサーと応えたくなるぐらいの、先生の啖呵だ!
「ところで天才というのは?」
「ああ、以前のおまえだ。神童とかも呼ばれていたな」
そう言えば寝取った(もう良いって)、ダリルもそんなことを言ってた気がする
「そうだったんですか…じゃあ、おふくろさんは魔法師だから、俺が病気になってさぞや悲しんだしょうね」
「ああ、おふくろさんは、病気が治るなら、魔法なんて使えなくても良いとか仰ってたな」
「………」
「親孝行してやれ…」
「はい」
「溜まっても襲うんじゃないぞ」
おい!
鍛錬は3時間以上続き。大体2往復ぐらいは持つようになったが、3往復続かせると、炎がむらむらになって、思い切り罵声を浴びせかけられる。
「よし、今日の鍛錬は終了だ!明日は、的を動かすからな!」
「はい!」
「よし、休んでよし」
俺は、その場にぶっ倒れた。
はあ、はあと大業に息をしながら回復を待つ。
下は芝生だから、気分も悪くない。
そこに足音がやって来た。
見上げると、俺付きメイドのユリこと、ユリーシャだった。
「アレク様。大丈夫ですか?」
「ああ、ユリ。問題ない」
ユリは俺の頭の後ろに跪くと、俺の頭を優しく持ち上げ、自分の太股の上に置いた。
「こんなに汗を」
彼女は、ハンカチ、俺を拭うための専用を取り出すと、俺の額を拭い始めた。頬、顎、首筋と拭いていく。そして、ボディスと呼ばれるシャツのボタンを外していく。
「ああ。胸も汗を掻かれていますね」
そう正当化しながら、襟をくつろげると、胸を拭きだした。
それはいいのだが。俺の肩や頬に掛けて、とても柔らかな物が押しつけられている。
乳房だ。
着痩せするのだろう。結構ボリューミーな肉塊だ。うーむ、役得役得。
すらっとした体型なのに、この大きさ。野暮ったいエプロン姿だから目立たなかったのか。
顔立ちだって、整ってる。色は白いし、眼は僅かに垂れ気味だが大きくて、やさしそうだ。美形ではあるが可愛い系でもある。
そんな少女が、何くれとなく世話を焼いてくれる。
ここをパラダイスと呼ばずして、どこを極楽と呼ぶのか!
8歳の頃、孤児だったユリが、我が伯爵家に引き取られ、厨房メイドとなったのだ。
歳が近かった俺達は仲良くなり、俺が病床に付いてからは、俺付きに志願して、認められたのだ。ある意味幼なじみと言っていいだろう。俺のではないのが残念だが、思い出が記憶として残っている。
婚約者はアレだったが、恵まれてるな御曹子。ああ今では俺のことね。
ユリは、俺のシャツ深くまで手を差し入れながら、囁きだした。
「アレク様さえよろしければ、そのう、ご婚約者様もいらっしゃいますが、夜伽をお命じ下さい。ご不自由はさせませんから」
夜伽!ですか?
俺は耳を疑いつつも、ごくっと喉を鳴らしてしまった。
「セシルとは破談になったよ」
「破談?破談とは、ご結婚されないということですか?」
「ああ、しばらくはな」
「本当ですか?」
「ああ」
「ああぅ。で、でしたらなおさらです。ユリは奥様にしろなどとは、決して申しませんので」
「うん、その気になったらな」
「きっと。きっとですよ」
「ああ」
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