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深夜 深き闇の森での出会い

一応pixivの方でも字書きをやらせていただいております珀狼と言う者です。こちらではこの作品が初投稿となります。温かい目でご覧ください。

――あの森には近づいては行けない。あそこには人を喰う人狼がいる。



そんな都市伝説があるという森の入り口に、私は立っている。入り口とは言っても門があったりする訳でもないのだが。

目の前に広がっているのは生い茂っている木々と、深い、吸い込まれてしまったら、二度と戻ってはこれないような、そんな闇。


昼間でさえ薄暗く、普通の人なら近づかないような森だ。真夜中の今だともう前が殆ど見えないくらいには暗い。

何でそんな所に来たのかと言われれば答えは簡単、死にに来た。それだけだ。

では何故死にに来たのかと聞かれたらそれも単純。よくある人生に疲れたというヤツだ。


別に首を吊っても、電車に飛び込んでもいいのだが、無様に死んでるところを見られたくない、電車は人様の大迷惑になるという事でこの森に来たのだ。

この森ならそこらへんの木にあるツタで首は吊れるだろうし、もし本当に、本当に人狼がいるのならソイツの腹の中に入ってしまえばいい。――まぁ、あまり期待はしてないが。


限りなくありえないだろうが発見されて、白骨化していても身元が分かりやすいように制服を着てきたのだが…大人しく普通の服を着てくればよかったか。割と寒い。

ただもう後戻りするわけにも行かない。私は現世に残した少しの未練を思い出しながら深い闇の中へと歩みを進めた…










………痛い。足が超痛い。

流石に歩き疲れた。近くにあった大きめの木に寄りかかって座る。

今は何時だろうな。日付が変わる頃に家を抜け出したから…もう1時とかにでもなっているのだろう。携帯忘れて来たから時間も確認出来ない。


〈…はぁ……やっぱ、都市伝説にしか過ぎないのかなぁ……〉


この森に存在すると言われている人喰い人狼。いつだか肝試しでこの森に入った大学生のグループ、5人くらいだったかな?が、何時まで経っても帰ってこないという事件があった。警察が大捜索をしたのだが何も見つけられずもう4年は経つだろうか。そんな事件があった日から遊び半分で森に入った馬鹿などが数日行方不明になってから森から出てすぐの所に気絶した状態で置かれている現象が多発した。そしてそいつらの証言は不思議な事に皆一致していた。「狼男を見た。」と。


そんな事があった為、また、今でもあの大学生グループは遺体すら見つかっていないし、それ以降も行方不明になったまま帰ってくる事が出来なかった人がいる為、人喰い人狼がこの森に住んでいるという噂が流れているのだ。警察は信じてなどいないが現に一つの手掛かりすら見つけられていないのだ。


〈まぁ、ここまで奥に進めば誰も来ないだろうし、首吊っても大騒ぎにならないかな?〉


こんなに沢山の記録が残っているのだ。あくまで噂だとしても誰も来るワケがなかろう。私も人狼に食われてあの世に逝ったという不運な被害者の一人、として扱われるだけだ。


さて、良い首吊りロープになりそうなツタはいくらでもあるし、登りやすそうな木でも探そうか。そう思って立ち上がる。そしてまた歩み始めた。その時。


〈ッ!!?〉



背後から小枝や葉っぱを踏みしめる音が聞こえた。その音は時間が経つにつれてどんどん大きくなっていく。

…考えられる可能性は二つ。人狼か、野生動物か。

人間という可能性も無きにしもあらずだが、普通この時間には誰も来ないだろうし、正常な人なら、私の姿が見えているのなら急いで走り寄ってくるはずだ。


……そうこう考えてる内に足音は大きくなっていき………やがて止まった。

音の大きさでもう分かる。この足音の主は、私が振り向けば目視できる距離にいる。さぁ、どちらか。


緊張で振り向く事が出来ずにいた。いや、この場合振り向かない方がいいだろう。もしも、もしも仮に本当に人狼がそこにいた場合、反射的に逃げ出してしまうだろう。そして私は恐怖に顔を歪めながら殺される事になる。それくらいだったら気付かれないフリでもして、さっさと殺された方がマシだ。



「…………そこのお嬢さん、こんな真夜中、しかもこんなに暗い夜の森の奥深く。どうしたのかな?」



後ろから声が聞こえた。やや低めの男の声。

……本当に居たのか、人狼。少なくとも人間では無いだろう。この状況、人間だったらこんなのんびりした、余裕のある口調で話すはずが無いから。それにしても私達と同じ言語を話すのか。だったらなるべく痛くしないように頼んでみるかな。聞き入れてくれるかは分からないが要求は伝わるだろう。



「まったく。こんな所に一人で来ちゃダメじゃないか。この森にはね……?」



……命の危険だというのに、私の顔は恐怖にも、苦痛にも歪んでいなかった。人狼であろう声を聞いたら、何故か体の緊張が取れてさえもいた。

自分でもおかしいなとは思うが仕方の無いことだ。もう、苦しむ事は無くなるのだ。あんな苦痛の日々から解放される。そんな事を思っているからだろうか。楽しくて、嬉しくてしょうがないのだ。

だから私は。



「人を食べてしまう、とってもとってもこわーい……」


〈人喰い狼さんが、いるんでしょ?〉



笑顔で振り向いた。ここ最近では一番であろう笑顔で。


……振り向いた先に見えたのは、人とは違う生き物だった。人のような体格はしているが、頭は狼の形。……なのだが。

何というか、想像を遥かに超えて……現代風だ。映画とかであるようなボロボロのズボンに人間とは比べ物になりそうも無い体躯。いかにも凶暴そうな顔。……などでは無く。

体格は2mくらいはあるだろう、オレンジのタンクトップに深い緑のハーフパンツを着て、鳩が豆鉄砲をブチかまされたような表情で立ちぼうけている人狼の姿がそこにあった。


そして最後に一言ポツリと。


「……what?」



なんて言うものだから、思わずクスリと笑ってしまった。

もう、怖いものなんてない。今度は私の方から一歩ずつ、人狼へと歩みを進める。

…人狼ともう肉薄してる距離まで来た。人狼の方はと言うと何があったのかは知らないが慌てふためいている。コイツ、何か人間くさいぞ。

まぁそれなら私の方からお願いすればいいだろう。この様子ならちゃんと伝わるはずだ。

深呼吸して、また一呼吸置いて。さっきよりも満面の笑顔で。



〈人喰い狼さん、私を……私を、殺してよ?〉



そう、言い切った。すると人狼はさっきと変わって真剣な感じの表情になり、片腕を私の頭の上に上げる。これからきっと、鋭い爪で引き裂かれて私は死ぬのだろう。期待に胸を膨らませて……目を閉じた。


そうしたら、勢いよく腕が振り下ろされる音がして………























「ドアホ。何俺に殺しをさせようとしてんだクソガキ。」


〈あだっ!?〉



勢い良く引っ叩かれた。ジンジンと鈍い痛みが頭を巡る。



〈いったぁ〜……なっ、何するんですか!?〉


「何お前が逆ギレしてんだこっちの台詞だよ馬鹿野郎。普通出会って速攻で「私を殺してください」なんて言うもんじゃねぇだろ阿呆。」

〈だっ、だって!!あんたは人を喰う人狼でっ!!〉


「あー………何だ、人生でも嫌になって俺に殺されようとして来たのか。わざわざこんな森の奥深くまでよォ。…やっぱお前バカだわ。」


〈私が馬鹿とかはどうでもいいんです!!もう、生きてるのは嫌なの!もう、嫌、なの………〉



感情を久々に表に出したからだろうか。涙が溢れてきた。情けない事だ。だけどもう自分にはどうしようも出来なくて、その場にへたり込んで泣きじゃくってしまった。



「……ふぅ。人間ってホント面倒クセェなぁ………」


〈だっ、たら……だったら私を今すぐころ………!!〉



殺して。と言おうとしたが言葉が詰まってしまった。何故だ。さっきはスラスラ口から出たはずなのに。今更死にたく無いと私の体が抵抗しているのだろうか。



「だからアホって俺は言ってんだよ。………体は正直ってな。心でそう思って、行動を制御出来ても、一旦その制御が壊れてしまえば体は…お前の本当の気持ちは正直に出てくる。」


〈うる……っさいっ……!!〉


「うるせェのは泣きじゃくってるお前だろうが。いいから聞け。死にてェと思ってる奴ってのはな。本当は生きたくても、頼れる場所がどこにも無くて、どうしようも無くてヤケになった挙句もう世界に自分は必要無い。生きてる価値は自分になんてねぇと思い込んでるバカ野郎だ。」


「…あんたっ……!変、だよ……人喰いのはずなのに……なんで、そんな事を……」



涙で視界がぼやけて狼の表情は分からなかったが、頭を掻いている様子と少し唸っている事から困った顔をしているのだろうとは分かった。……本当にこいつは何者なんだ。私にはそれしか頭に無くて、さっきまで死ぬ事しか考えてなかった事なんて忘れてしまった。そんな事よりも今、目の前で起きている非現実的な状況は何なのだろう。そんな事しか頭に無かった。



唸って唸って何か決心したのか、ふんっ。と鼻を鳴らす。そして一言、そいつは呟いた。」


「わりっ、俺、人とか喰えねぇんだわ。」


〈…………………ハァっ?〉












……これは、変な出会い方をした、死にたがっていた女子高生と、人を喰えない人喰い失格の人狼とのちょっとだけ愉快なお話の始まり。

この作品をご覧いただきありがとうございます。


とりあえずよく分からない感じになっているかと思いますが、コンセプトとしてはキーワードにありますが「非日常な日常」です。現代においてありえない存在と過ごす日常を私なりに考えてみました。


あ、全然物語としては暗くならないのでご安心ください。

それではこれからも二人?の事を見守っていただければ幸いです。

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