ラブレター 〜それは、桜が咲く頃〜
隣の家の兄ちゃんが、一人暮らしのために遠くにに引っ越す。
すごく入るのが難しい大学に受かった兄ちゃん。勉強ができるから、私のテスト勉強も付き合ってもらったことあった。
私より2つ上の兄ちゃん。一人っ子の私は兄ちゃんを本当の兄のように慕っていた。
もっと、ずっと一緒にいたいと思ったのは私が中学生のとき。
それが「恋」だってわかったのは、もうちょっと先のこと。
あぁ、もう行ってしまう
電車に乗って、行ってしまう
「兄ちゃんっ!!」
私は思わず呼んでしまって、兄ちゃんを引き止めてしまった
「何?」
言うなら今。今しかない。だけど
だけど
「…ううん、何でもない!!元気でねっ」
「あぁ、元気でな!!」
言ってしまったら
あなたをきっと困らせてしまうから
私もきっと泣いてしまうから
ドアが閉まり、電車が走り出し行ってしまった
「これで、いいんだ。これで……っ」
私は笑って、そして泣いた
言えなかった愛の言葉と
胸の中の想いは
曇りの空に昇って、悲しみや寂しさの雨を降らせた
私はその日、兄ちゃんを見送ったその場所でずっと泣き続けた
雨に濡れながら
今にも消え入りそうな声で
「ずっと…好きでし、た……兄…ちゃぁん……っ」
ラブレター 〜それは、桜が咲く頃〜
Fin