余命-22
もうこれで何度目の万事休すだろうか? 唄音ちゃんのピンチが発覚してから……。
たしかあれは……そもそもの事の起こりは『余命-13』の時である。もう都合10話近くもだらだらしている。1話の文字数が少なめとはいえこれはさすがにやりすぎだ。
幾多の困難を乗り越え、やっと唄音の元へ……という展開になってなお、神は彼らに試練を与えるのか?
だが、障害を乗り越えるためには、なにも己の力を注ぐだけが唯一の方法ではないのだ。
「二人とも! 早く車椅子に乗って!」
と病室に駆け込んできたのは文香ちゃんだった。
「車椅子は私たちが押していくから!」
と彩乃の姿もある。
そればかりか、椿姫ちゃんも居た。
「どうしてっ! お前達!」
と絵里紗が驚きとも喜び感動の発露ともつかない、感情がないまぜになった表情で尋ねる。
「だって、唄音ちゃんがヤバいんでしょ! だから! みんなで力を合わせて、助けようよ!」
と彩乃。
「あたしが、皆を集めたの」
と颯爽と登場したのは相変わらず病院にも院内学級にも不釣り合いなミリタリールックに身を包んだ間宮先生だった。
「唄音はあたしの大事な生徒でもある。
だけど……、病院に所属するあたしは、直接的にはあなたたちの力になれないわ。
組織に背いて罰せられるのが怖いんじゃない。その結果として追放されちゃったりしてあなたたちの面倒を見れなくなるのが嫌なの。
だから、影ながら応援することしかできない。
だけど……。
ここはあなたたちの力で、乗り切れるはずよ! 自分達を信じて!
唄音を救うのよ!!」
「間宮……」
「絵里紗……、そんな顔しないで。あなただってあたしの大事な生徒。
全てを終わらせて……帰ってきたらこっぴどくしごいてやるんだから!
覚悟してなさいよ!
そうそう……。車椅子の押し手は文香たちに任せるとして、もうひとつあなたたちへ贈るものがあるわ。
この先、集中治療室への道のりでは様々な障壁が待ち受けているでしょう。
三人の小学生女子の押し手による車椅子の暴走での突破だけでは不安が残るわ。
だから、切り札を用意した……。
あらゆる障壁を乗り越えられる最終兵器!!」
週刊連載とか、文字数気にしないでいいなら本当ならここで引きたい。次話へ持ち越したい。だが、そういうわけにもいかず。
そう言えば、前話か前々話でもそう思ったシーンがあったような。
大体そういう時は行間が多めに開いているので、気になる人は読み返してみてください。我ながらうまい引きになっていると思います。自画自賛。
閑話休題。
間宮先生の呼び声に呼応するかのように、一人の人影が姿を表した。
「キラ! キラではないかっ!」
と絵里紗が大げさに叫ぶ。
「そなた、安静が必要で病室で寝ていたはずでは? 第一……、そのような状態で病室を抜け出すことなど……」
絵里紗の疑問にキラ君は、
「俺の看病をしてくれている保護者には悪いが、邪魔だったんでね。ちょっと無力化してきた」
となんでもないように答えた。小学4年にしてこのクールさ。そして病弱。そして圧倒的な『主役を超える超絶的名わき役』感。
FF10でいうところの、アーロン様に匹敵する。
間宮先生が、
「キラにはあたしの戦闘技術の全てを叩き込んであるわ。
才能的にはあたしの数十倍。病気や発作さえなければ、瞬間的にはあたしの力をも上回る潜在能力の持ち主よ。
それに、ついさっき通常の服用量の5倍量の薬を飲んだわ。しばらくは持つでしょう」
「そう……しばらく寝てたんだ。薬も飲んだ。集中治療室へ行って帰ってくるぐらい……。
なんの問題もない!!
俺が途を作る! みんなは俺の後に続いてくれ!!!!」
なんだかこれまでの登場人物が一気に登場してなおかつ隠された手の内すら明かしていく。クライマックスの様相を呈している。そうなのだろうか?
そうなのだろう。しばしこの盛り上がりをお楽しみください。
平凡な日常描写へは今さら戻れないのだから。
駆け出そうとして一旦立ち止まるキラ。
顔だけ薫に向けて、
「なあ、薫兄ちゃん……。俺、兄ちゃんに憧れてたんだ。
強くてかっこいい薫兄ちゃんに。
だから、嬉しいんだぜ。こうして兄ちゃんの力になれるのがっ!」
と思いのたけをぶつける。キザにウインクなどしながら。
「これは……BLタグも追加しなきゃならないかしら?」
と間宮先生が茶化すように言い、キラが、
「そんなんじゃねえよ! 憧れと恋愛感情は……違うから……」
と頬をピンクに染めたところで、絵里紗が鬨を上げる。
「よし、皆の者!!
準備は全て整った!
出陣なのじゃ~!!!!」




