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余命-11 

 前回、薫の処女好きについて触れまくりましたが、薫は、ごく真面目な青年で、このお話に起伏や、アクセントをつけるためにあえて汚れ役を買って出てくれているということを本人の名誉のために申し添えておきますので、よろしくお願いします。




 授業中とはいえ、各学年に一人か二人ずつ。その授業内容も異なれば、全体を通して教師は間宮先生一人だけという、変則的な構成。


 バンドに例えるとGC、つまりガーネットクロウぐらいのイレギュラーな学園。それが院内学級なのである。なのだ。なのよ。


 GCが如何にイレギュラーか知りたければウィキペディアでほいっ!

 ヴォーカル、キーボード、ギター、キーボードです。キーボード厚いっ!




 話を本筋に戻しますが、間宮先生は結構フリーダムな授業風景を許容してくれます。

 だって、みんな病気だから。お友達とか少ないの。会えないの。一日中寝てることかも居るし、たまに学校(院内学級)に来てる子も多いの。


 だから、ある程度のお喋りとかは容認なのです。今もそう。


 スポーティで健全な美しさを持っている文香あやかちゃんと、小3にして、ある意味完成された美しさを持つ、薄倖の美少女、彩乃さやのちゃんが、お喋りしてる。


 二人でじゃないよ。絵里紗も一緒。


「何? 彩乃は昨日も吐血したのか? 儂に黙って吐血なぞするではないっ!」


 ちゃんとみんなその日の課題の、各自のノルマはこなしてるよ。だから、余った時間でお喋りしてるよ。

 そこは先生厳しいから。毎日のノルマ――だが、みんな病弱で院内学級には来たりこなかったりなので、ノルマがあってもカリキュラムは予定通りには進まない――で決められた分はちゃんとこなしている。


 ちなみに、院内学級ではプリント学習がメインなのです。わからなかったら、間宮先生か、年長者に聞くのです。

 美術や音楽については、全学年での活動も多いけど、国語算数理科社会――年少者は理科社会じゃなくってせいかつ――については、学年ごとのカリキュラム。


 間宮先生はたまに説明してからプリント配ったりするけど、3年生くらいになると自分で教科書読んでプリントに取り組むという姿勢が自然と身に付くのが、この院内学級の特徴。運よく頭弱い子は居ない。みんな身体は弱いけど。

 


「えっ~~~~!? だってでちゃったんだもんっ! こぽぉって」


 答えたのは彩乃ちゃんだ。


「お姉ちゃんっ! あたしは吐血しなかったけど、血圧が下がりまくったよっ!」


 とかぶせてくるのは、文香ちゃん。


「お前たち、自分の体調には十分気をつけるのじゃぞ! むやみに体調を崩してはならん」


 真顔で絵里紗が二人に注意する。


 その上でこんなことを言う。


「お前の吐血は儂の吐血、儂の吐血は儂の吐血じゃ。さらに言えば、


 文香の致死性の血圧低下は儂の血圧低下、儂の血圧低下は儂の血圧低下じゃ!」


「どこのガキ大将が、他人の病弱自慢を我が物にしようってんだ!? ス○夫のラジコンじゃあるまいし……」

 と薫がぼそっと呟くが、それは女子生徒達には聞こえない。


 文香ちゃんが、


「ずるい~! お姉ちゃんばっかり~!!」


 とわけのわからない不満を口にすると、


 彩乃も、

「そうですわっ! お姉さま!! わたしの吐血はわたしの自由なんですよ!」


 と、これまたわけのわからない自己主張を始める。


 椿姫つばきちゃんは、必死でプリント学習をしている。

 椿姫ちゃんは、学力的には優秀で、優等生なのだが、勉強好きでいつも自ら志願してレベルの高いプリントを間宮先生にお願いして配布してもらっている。おしゃべりには基本的に参加しない。

 口下手なのだ。


 だが、問題に詰まると、間宮先生ではなく絵里紗――彼女が、院内学級に居る時は――に、


「あの……あの……」


 なんて口ごもりながら、おずおずと挙動不審に陥って、絵里紗をじとっと睨みつける。

 敵意なんてこもっていないが、彼女の表情はいつも暗い。


 見つめられた絵里紗は心得たもので、それが絵里紗に救いを求めている視線だということを百も理解しているから、その視線に気付くと、


「どうしたのじゃ? わからない問題でもあったのか? 儂が教えてやろうか?」

 

 と自分のプリントを後回しにして、椿姫ちゃんの元へとはせ参じる。

 椿姫ちゃんは声が小さいので、近くに寄らないと聞こえない。


 間宮先生はそんな生徒達の姿をぼんやり眺めながら――もちろんあまりにおしゃべりが過ぎたり、生徒間での教えあいでは解決しないような状況だと、生徒達への指導はする優しい先生なのだけど――、自慢のAK-47アサルトライフル(モデルガン)の手入れなんかをしたりしている。


 そうやって、午前中の授業――午前に二時間、昼食と軽い休憩を挟んで午後に二時間というのが院内学級の基本的な時間割だ――は、だらだらと過ぎていった。


 ちなみのちなみ、薫は高校三年生レベルの問題をガツガツやっているので、今日は目立ちませんでした。

 だけど、絵里紗が居ない時なんかは、最年長者として下級生の面倒を良く見ます。

 そこに、下心があるのか無いのかは、内緒です。


 そうして、午前中の授業の一時間目はのんびりと過ぎていった。


なお、今回のサブタイトルは「とりあえず授業風景(幕間的だらだら話)」でした。

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