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 眠たいな、やけに。

 ここはどこだろう? いやというか、目がなくないか。私の目。

 体の感覚ないし。ああそうかやっぱり死んだんだ。

 うそ、まじか。庇うなんて、何であんなこと。やばい落ち込んできた。

 まあでも仕方ないか、あの時は桜のことで鬱みたいになってたから、変な行動してもおかしくない。


 仕方ないな、死んだのは。


 フワリフワリ、ふと体の周りに軽やかな熱気を感じた。うん? そう思っているときだった。

 

 車輪の、音が聞こえる。車輪だとはわかるのだけど、何故かその音はカタカタカタと機械のような音色を奏であげる。カタカタカタカタ近づいてくるのが分かる。その音は豪快なんだけども、そうとしか例えられない音だ。


 熱気と冷気が体のない私に直に触れた。

 怨恨の音が聞こえる。

 唸るような獣のような、うぎゃうぎゃとそういう声があふれてくる。背筋から這い上がるような、絶望。さすような怨恨。


 ギシリ、横で音を立てて車輪は止まった。これは。


 これは。


 嫌な予感。違う。胸が苦しくなる予感ではなく確信、これは火車だ。


 私を地獄に連れて行くための、火の車だ。体が焼ける、違う、魂が焼けている。


 恐怖。生半可な恐怖ではない。


 なんで私が、と思う。良いことはしてないが、別に悪いことをした覚えはない。

 意味不明だ。分けが分からない。


 逃げ出そうとするが、魂だけの逃げ方が分からない。

 うん、どうしようか。


 地獄に思いを馳せつつ、絶望に心を震わせていると、自分の魂が浮くのが分かった。

 今までいたところが無色の空間とするなら、黒い空間に放り出される。

 摘まれるような感覚があった。やばい、今火車の中にいる。


 地獄への道。文字通り私はそれを現実で経験しているらしい。

 私が好きな小説でもなんでもなく、現実。

 何が何でも逃げなくては。

 しかし、それは当たり前のように叶えられない。

 もみくちゃにされる。回りには大量の魂が詰まっていて、ギシリと軋みをあげそうなくらい、ギチギチだ。


 そして周りに触れる感覚とともに、嫌な感じ、どことなく侵食されていっている感じがする。

 その嫌悪感で思考が定まらない。ただ、ここで意識を失えば、終わりだということは分かる。


 確実に、終わる。


 自分を保て。桜と暮らしていたときのストレスに比べればなんでもない。


 そして、周りに意識を集中させる。こちらから侵食していく、少し自分に意識を集中すれば意外と出来ないこともなかった。


 そうして、安定状態になったものの、これからどうすれば良いのか、どうなるのかいまいちよく分からない。


 そうして、私は突然意識を失った。




『お前の名前は、大月 ヒカルであっているか』


 中世的な声が聞こえる。どちらかというと男の声に聞こえる。しかし、そう思った瞬間には女の声に聞こえる。本当に中間のような声だった。


 そうですけど。


『……ふうん、自我があるのか、やはり相当だな』


 あります。すみません私は、地獄へ行かなければ行けないんですか?


『無論。当たり前だろ、もしかして罪の意識すらないのか?』


 ないですよ。というか私はあまり悪いことをした記憶はないんですけど。


『そうだろうな。まあいい。お前は今からお前が言う地獄へやらと送られる』


 ちょっと待ってください。納得できません。説明してくれないんですか?


『思い上がりが甚だしいな人間』


 思い上がりとかではありません。普通の話です。


『運命だよ、大月 ヒカル。お前は規定を犯した。重要のをな』


 規定?


『お前がいた世界は比較的自由だが、分岐点の人間に関しては非常に狭量なんだよ。その人間にいたるまでの多くの道筋は必ず干渉が入っている。

 まあいい。説明してやろう。

 お前はこの世界の人間の上位者の運命を捻じ曲げた。7もの数を。

 まず妹の大月 桜とその夫になるはずだった御堂 透。この二人自体もかなりの重要人物なんだが、問題は……二人の子供だ』


 子供? 結婚するんだ?

 複雑な心境でそう質問すると、向こうで苦虫を噛み潰したような気配を感じた。目の前の人? はやけに人間らしい。


 貴方って閻魔、様なんですか。


『関係ないだろう。黙れ。余計な質問はするな。この子供は間違いなく傑物に、この世界の救世主になるはずだった。人を殺す、ただ効率的に、しかしその上で平和を目指すそういう人間が生まれるはずだった。だがお前のせいで、この男は生まれず、お前は間接的にだが救われるはずだった10億にも及ぶ人間を殺した』


 その人凄すぎだろ。十億人……。私はどうやら無意識にジェノサイドをしていたらしい。

 我ながら、酷い。でもまあワザとじゃないから仕方ないか。


『……最低だな。それに、お前の友人二人が自殺したことも響いた』


 ……そんな! ちょっと、ちょっと待って、その二人って誰ですか?


『イイヅカとムロサキだ』

 

 ああっ、そっかやっぱりその二人が一番先にダメになっちゃうね。そっか、苦しまずに死ねました?


『イイヅカは首吊りが何度か失敗したから、苦しかったんじゃないか』


 頭悪かったから。本当に可哀相に。こんなことなら、犯人のこと見捨ていれば、いやあの中学生を見捨てるべきだった。

 悲しいな。でも。

 やりようがない。私は彼らのことが好きだった。大好きだった。彼らが駄目駄目で、私のことををただ『話を聞いてくれる人』だって無意識に思っていたのを認識してたけど、大好きだったから、一緒にいてもいいなんて思っていて。過去は変えられない。桜が来る前に戻れたらと何度願っても戻れなかったように。


『……これで分かっただろう? そろそろ時間だ。連れて行け』

 気配を感じる。誰か私の魂を摘み上げた。自我ともお別れになりそうだ。

 

 しかし、その時不思議名ほどの安らぎが私を包んだ。そして、気がついたら、私は自分の『身体』で立っていた。

 

 美しい新緑の草原だ。風が吹くたび、草の一本一本が光で輝きながら同じ方向にたなびく。何もなかった。あるのは美しい草原と光り輝く空。黄金色の雲が雄大に輝いている。うっすらとした水色の空をちらりと見て、私はゆっくり目の前の少女に顔を向けた。



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