表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 山羊ノ宮

あの時計塔の鐘を鳴らせてはいけない。

十二時の鐘が鳴れば、魔法が解けてしまう。

少女は時計塔の中の階段を急いで上がっていた。


その後を屈強な軍人が後を追う。

鐘を鳴らせてはいけない。

スパイの情報によるとあの鐘の音と共にこの国に侵攻すると言う事だ。

恐らく先行する少女もスパイ。

そう思い、軍人は必死に時計塔の階段を駆け上る。


その後を娼婦が追っていた。

鐘を鳴らせてはいけない。

あの鐘と共に愛する人は死刑に処される。

多くの罪を重ねた。

恐らく怨む者も多いだろう。

前を行くあの男もきっとそう。

けれど、愛した男に少しでも生きて欲しい。

そう思い、女は必死に時計塔の階段を駆け上る。


その後を学生が追っていた。

鐘を鳴らせてはいけない。

あの鐘と共にずっと片思いだったあの人が列車に乗って遠くへ行ってしまう。

もしあの鐘がならなければ、あの人はまだここに留まってくれるのではないか?

そんな妄想に抱かれ、学生は必死に時計塔の階段を駆け上る。


その後を・・・


リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン・・・


荘厳な鐘の音。

ああ、世界が終る。

そう時計塔を駆けのぼる者皆が思った。


「良かった。今日も良い音だ」

そして、鐘を作ったその老人は満足そうに笑む。

その鐘の音と共に魔法は消え、何かは始まり、何かは終わる。

例え世界が終ろうとも明日が来る。

その喜びを、老人はかみしめていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これもなかなかに興味深かったです。 個の思惑や存在の軽さとでも表現すれば良いのでしょうか。どんな人物の意志も、それが真実であれ虚構であれ鐘の音を止めることはできない。それはすなわち時間に対す…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ