第36章_星泉解放
王都北部の断層は拡大を続け、街全体を二分しかねない状況だった。
「このままでは……」みゆきが不安げに呟く。
「結界を壊した影響が、まだ残ってるんだな」剛が槍を握りしめる。
圭佑は空を見上げた。星泉からの魔力が天に昇り、しかしその一部が不安定に揺らいでいる。
「星片を砕いて、星泉を完全に解放すれば……」圭佑は短く言い切った。
「本気なの?」真弓が驚く。
「星泉を大地に戻せば、魔力の流れは安定するはずだ。ただし、もう二度と同じ泉には戻らない」
真子は迷わず頷いた。
「それでも……世界の命を守れるなら」
「決まりだな」剛が大きくうなずく。
六人は星片を中心に集まり、圭佑が光剣を掲げた。
「みんなの力を貸してくれ!」
「もちろんだ!」瑛太が旋律を響かせ、みゆきが祈りを重ねる。真弓は装置を展開し、剛が足場を確保した。
圭佑と真子が同時に剣を振り下ろし、星片を砕いた。
砕けた星片は眩い光となって宙に舞い上がり、空一面に散っていった。
その光が大地に降り注ぎ、断層はゆっくりと閉じ始める。
「……これが、星泉の力」みゆきが感嘆の声を漏らした。
「ただの泉じゃない。大地そのものの命だな」剛が呟く。
やがて王都全体を柔らかな光が包み、人々の表情が安堵に変わった。
「もう……大丈夫なの?」真子が圭佑を見上げる。
「ああ。これで星泉は大地とひとつになった」
瑛太が静かに旋律を奏で、その音色に子どもたちが耳を傾ける。
「終わったんだな……」真弓が工具を収め、ほっと息をついた。
星泉の解放は、世界に均等な魔力を行き渡らせた。
泉としての役割は終わったが、世界そのものが星泉のように輝いている。
圭佑は剣を下ろし、仲間たちに微笑んだ。
「ありがとう。これで……本当に終わりだ」
真子も静かに頷いた。
「はい。これで……未来が変わります」




