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第31章_暴走の海

 虚無の王が消滅した後も、結界の中心に残された魔力は暴走を続けていた。

  床のひび割れから光と闇が入り混じった奔流が吹き出し、霊廟全体を揺らす。

 「まだ終わってない……!」圭佑は剣を構え直し、仲間たちに声を張り上げた。

 「全員、後退しろ! ここは危険だ!」

  しかし、奔流は霊廟だけでなく王都に向かって押し寄せていた。

 「これじゃ街が飲まれる……!」真子が顔を上げる。

 「どうすれば……」瑛太が唇を噛んだ。

  その時、みゆきが進み出て祈りを捧げた。

 「星泉よ、私に力を貸して!」

  光が彼女を包み込み、大きな防御結界が形成される。

 「でも、一人じゃ持たない!」みゆきの額に汗が浮かぶ。

 「俺も手伝う!」剛が結界を補強するため槍を地面に突き立てた。

  真弓は工具を取り出し、装置で結界の柱を支える。

 「圭佑さん、どうするんですか!?」真子が振り向く。

 「源を断つしかない!」圭佑は短く答え、暴走の中心に向かった。



 暴走の中心は、虚無の王の残滓が絡みついた黒い結晶だった。そこから光と闇が絶え間なく吹き出している。

 「これを……壊す!」圭佑は光剣を握りしめ、駆け出した。

 「私も行きます!」真子が並走し、短剣を構える。

  二人が結晶に迫ると、周囲から影が再び湧き上がった。

 「まだ残っていたのか!」剛が叫び、槍を突き出す。

 「守ります、行ってください!」みゆきが祈りで影を押し戻す。

  真弓は装置を展開し、結界を強化した。

 「時間は稼ぐ、早く!」

  圭佑と真子は視線を合わせ、同時に結晶へ飛び込んだ。

 「いっせいの――!」

 「せっ!」

  二人の武器が結晶を叩き割り、光が爆発する。

  暴走の奔流は一気に収まり、代わりに静かな光が霊廟を満たした。

 「……止まった?」真子が辺りを見回す。

 「ああ……終わったな」圭佑が剣を下ろし、深く息を吐いた。

  仲間たちも次々に集まり、互いの無事を確かめ合った。

 「よくやったな、みんな」剛が笑みを浮かべる。

  みゆきもほっと安堵の祈りを捧げた。

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