第20章_王都開戦前夜
夜空は重く、低い雲が王都を覆っていた。星は見えず、街全体に張り詰めた空気が漂っている。
遠くで角笛が鳴り響き、住民たちの避難が急ピッチで進められていた。
「魔獣が南門からも現れた!」兵士の声が響く。
「隊列を組み直せ!」指揮官の怒号が夜に溶けていく。
圭佑たちは王宮前の広場に集まり、最後の確認を行っていた。
「このままだと市街戦は避けられないな」剛が槍を握りしめる。
「だからこそ、早く結界の中心を破壊する必要がある」圭佑が低く答える。
真子は震える手をぎゅっと握りしめていた。
「みんな……無事でいてほしい」
その声にみゆきがそっと手を重ねる。
「きっと大丈夫です。私たちがいますから」
瑛太はいつになく真剣な表情で楽器を構え、短く言った。
「出発の合図を歌でやらせてくれ。士気を上げる歌だ」
「頼む」圭佑は頷き、仲間たちに視線を向けた。
瑛太の歌声が静かに広場に広がり、兵士たちの表情に少しずつ力が戻っていく。
圭佑は剣を抜き、全員に向けて高らかに宣言した。
「これより結界中枢へ突入する! 王都を必ず守り抜くぞ!」
その声に広場全体が呼応するように歓声を上げた。
夜明け前、最後の戦いが始まろうとしていた。




