破滅の預言者
時は21世紀。世界を巻き込んだ戦争が終わり約半世紀近く世界の秩序は保たれていた。
ある日、長年の秩序に不満を持っていた者達の反乱を機に世界中で秩序に対する不満が高まり、各地で争いが起きた。
そんな中、預言者を名乗る男が現れた。その預言者と名乗る男は言った。
「明日この地で戦争が起こる、だが私の預言に従えば戦争は止められるだろう」
その言葉を聞いた全員が「何をいっているんだ」「そんなわけない」と言った、それもそのはずここは世界で最も安全な場所と言われ近隣諸国に戦争をしている国もない、ましてや永久中立国と言う立場の国だ。
男は頭がおかしいのだろう。誰もその言葉を信じず1日が過ぎた。
翌日。
男の言った通り戦争が起きた。男はすぐさま指名手配され捕らえられ、長時間の尋問を受けた。
それでも男は変わらず。
「私は預言者だ。私の預言に従えば戦争を勝ち、終わらせることができる」
スパイの疑いがある男の言葉を誰も信じなかったが戦況が劣勢になると1人の将校は男の預言を聞き従った。
1ヶ月後、劣勢だった戦況をひっくり返し戦争に勝利した。戦勝記念の式典に1人の将校が勲章を授与された、預言に従った将校だ。
将校は言う。
「あの戦争に勝てたのは預言者がいたからだ」
それから捕らえられた預言者は解放され真の英雄として世界中で讃えられ、世界中の争いを終わらせた。
偉業と呼べる功績を成し遂げた預言者は史上最大の偉人として各国の取材に応じた。
どの取材を受けても預言者は同じことを言う。
「弱くても賢くありたい者は支配された平和に、愚かでも強くありたい者は欲望まみれた地獄に、弱く愚かでも平和を望む者は私についてこい。もし、賢くも強くありたい者は己の力と知略を持って支配し戦え」
これをきっかけに世界中で戦争が起きた。預言者の言葉を聞き賢くも強くありたい者達は支配するため戦った。預言者の評価は世界を二分し、混沌を極めた。
1年後、預言者の元に取材班と1人の少年が来た。少年はかつて預言者の言葉に従った将校の息子だ、両親は預言者が引き起こした戦争により死んでおり少年は感情のおもむくまま取材班を説得し預言者に会いに来た
「父は貴方の預言に従い英雄となり僕達家族を救ってくれました。ですが……」
少年はこらえていた感情が溢れだし慟哭を叫ぶ。
「貴方の預言のせいで世界は滅茶苦茶だ!貴方は……なにがしたかったのですか!!」
少年の激情に預言者は口を開く。
「強者や弱者、賢さや愚かさなどどうでもいい。私は愛と平和による世界が欲しいのだ」
男の真意に全員が絶望する。
それでも男は止まらない。
「預言とは凄まじい力だ。だから私はこの力を使い争う世界を変えた」
「ならば、なぜ預言の内容を隠していた!全員が預言の内容を知っていればこんなことにはならなかった!!」
少年の言葉に預言者は落胆しため息をつく。
「愚か者が……預言の内容を全人類が知れば、その先に待っているのは醜い騙し合いだ。人が持つ愚かな虚構『嘘』の世界だ。そこには平和は愚か幸せも無い裏切りしかない、それを理解できぬ者が虐げられる"前"の世界だ。それが嫌だから私を頼ったのだろう?」
預言者の言葉は世界中で報道された。
こうして世界は繰り返されるのであった。