第五十章「輝く未来へ」
志木市の夜は、冷たい空気に包まれながらも、どこか温もりを感じさせる静けさがあった。志木市民会館の前で、創はゆっくりと息を吐きながら、空を見上げた。ビルの明かりが星空と交じり合い、まるで未来への道しるべのように輝いている。遠くから足音が近づき、美結が息を弾ませながら駆け寄ってきた。
「待たせちゃった?」
「いや、俺も今来たところだ」
「それ、絶対ウソでしょ?」
「……まぁな」
美結はくすっと笑いながら、隣に立った。二人はしばらく何も言わず、街の灯りを眺めていた。
「ねぇ、創」
「ん?」
「未来って、どうやったら輝くと思う?」
創は少し考えた後、静かに答えた。
「輝く未来は、自分で作るものじゃないか?」
「どういう意味?」
「待ってるだけじゃなくて、自分で何かを選んで、掴み取るものだと思う」
美結は驚いたように彼を見つめ、それからふっと微笑んだ。
「創らしいね」
彼女は夜空を見上げながら、小さく息を吐いた。
「私ね、昔は未来なんて遠すぎて想像できなかったの。でも、今は少しずつ形が見えてきた気がするんだ」
「どんな形だ?」
「まだはっきりとは言えないけど……少なくとも、大切な人と一緒にいたいと思う」
創はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「それなら、お前の未来はもう輝いてるんじゃないか?」
美結は目を丸くした後、微笑んだ。
「そう思ってもいいのかな?」
「思えばいいさ」
二人はしばらく無言で、静かな夜の空気を感じていた。
「ねぇ、またこの場所に来ようよ」
「……ああ」
——輝く未来へ。
それは、待つものではなく、自らの手で掴み取るものだった。
(第五十章 完)