第十七章「降り注ぐ陽射し」
秋田の朝は、穏やかな陽射しに包まれていた。昨夜の祭りの余韻がまだ街に残り、千秋公園の木々の間からこぼれる光が、地面に柔らかな模様を描いている。
雄大は、秋田駅前のベンチに腰掛け、スマートフォンを眺めながら小さく息を吐いた。
「……遅いな」
そう呟いた直後、遠くから軽快な足音が近づいてくる。
「お待たせ!」
結翔が、少し息を切らしながら駆け寄ってきた。
「遅い」
「ごめんごめん、朝の準備に手間取っちゃって」
雄大は肩をすくめた。「まぁ、いつものことだな」
「えー、それひどくない?」
結翔はふくれっ面をしながら、隣に座る。
千秋公園の朝
二人はゆっくりと千秋公園へ向かい、陽射しの降り注ぐ並木道を歩いた。
「朝の公園って、こんなに気持ちいいんだね」
「まぁ、普段は人も少ないしな」
「確かに……でも、なんか、こういう時間って大事だなって思う」
雄大はポケットに手を突っ込みながら、小さく頷いた。
「たまにはこういうのも悪くない」
結翔は木漏れ日の中、立ち止まって空を見上げた。
「ねぇ、雄大」
「ん?」
「最近、なんか新しいことに挑戦した?」
「どうした、急に?」
「うーん……なんとなく。私も、今までの考え方を少し変えようかなって思ってさ」
「ほう」
「今までは、いろんなことを難しく考えすぎてた気がするんだよね」
雄大はしばらく考えたあと、「それで、何を変えるんだ?」と尋ねた。
「うーん……もっと自由に動いてみようかなって」
「結翔らしくないな」
「えー、そんなことないでしょ?」
雄大は少しだけ笑った。「まぁ、お前がそう思うなら、いいんじゃないか?」
「うん、そうする!」
結翔は嬉しそうに笑い、歩き出した。
——降り注ぐ陽射し。
それは、新しい何かを始めるための合図だった。
(第十七章 完)