第一一七章「挑戦を楽しむ二人」
瑞穂町、瑞穂公園。冬の冷たい風が木々を揺らし、枯れ葉が地面を転がっている。広場にはほとんど人影がなく、静かな空間が広がっていた。時折、ジョギングをする人が駆け抜け、その足音が乾いた土の上でリズムを刻む。
颯良は、広場の端にあるベンチに腰を下ろしていた。彼は「挑戦を楽しむ」性格で、どんな物事にも前向きに取り組むタイプだ。その一方で、「他者に感謝の気持ちを伝え、関係を強化する」ことを何よりも大切にしている。自分のポジティブさを活かしながら、他者との調和を意識して進むことが彼のモットーだ。
今日は、めいと待ち合わせをしていた。彼女は「問題を解決する方法を模索する」探求心と、「持ち前のポジティブさ」を活かして、困難を乗り越える力を持っている。楽しさを重視しながらも、時折不安を抱えることもあり、その葛藤を自分なりに解決しようとする姿勢が魅力的だった。
「颯良、待たせた!」
その声に振り向くと、めいが元気よく駆け寄ってきた。赤いニット帽にダウンジャケット、手には保温ボトルを持っている。その明るい笑顔を見るだけで、颯良の心も自然と軽くなった。
「いや、全然待ってないよ。むしろ、ここでのんびりしてたとこ」
「嘘だ。寒そうにしてたじゃん。はい、これ。温かいお茶、持ってきたから」
「お、ありがとう!めい、ほんと気が利くなあ」
ふたりはベンチに並んで腰掛け、保温ボトルから注いだお茶を一口ずつ飲んだ。ほんのり甘い香りが広がり、冷えた体が少しだけ温まる。
「今日は何するの?」
「実はさ、公園の隅にアスレチックがあるんだ。子供向けだけど、結構ハードでさ。せっかくだから、めいと一緒に挑戦してみたいと思って」
「え、アスレチック?面白そう!やってみようよ!」
ふたりは立ち上がり、アスレチックエリアへと向かった。そこには、ロープで作られた橋や、丸太を組み合わせたバランス渡りがあり、確かに子供向けにしてはやや難易度が高そうだ。
「じゃあ、どっちが早くゴールできるか勝負しよう!」
「いいよ!負けないからね!」
颯良は勢いよくロープ橋に飛び乗り、バランスを取りながら進む。めいも負けじと、少し慎重になりながらも器用に足を運んでいる。しかし、途中でロープが大きく揺れ、めいが思わず立ち止まった。
「うわっ、揺れる!」
「大丈夫か?無理しなくていいぞ」
「平気!こういうの、コツさえつかめばいけるはず!」
めいは一呼吸置き、リズムよく足を動かし始めた。その様子を見て、颯良は思わず笑顔になる。
「やるじゃん!その調子!」
ふたりは次々とアスレチックをクリアしていき、最後のネット登りでほぼ同時にゴールに到着した。
「やったー!意外と楽しかった!」
「お前、最初は苦戦してたくせに。けど、途中からめちゃくちゃ速くなってたな」
「コツをつかむのが好きだからね。挑戦って、楽しい!」
「それ、分かるわ。俺も、めいが一緒だと、もっと挑戦したくなる」
ふたりは、ゴール地点で息を整えながら、夕日に染まる空を見上げた。木々の影が長く伸び、ふたりのシルエットが地面に重なるように映っている。
「颯良、私、これからも色んなことに挑戦してみたい。あなたが隣にいると、怖いものが減る気がするんだ」
「俺もさ、めいといると、楽しむことの意味が分かる。自分ひとりじゃなくて、一緒に乗り越えるからこそ面白いんだって思えるんだ」
めいは、少し照れたように微笑んだ。
「これからも、一緒に挑戦し続けようね」
「ああ、約束だ。楽しいことも、難しいことも、全部ふたりで共有しよう」
ふたりは手を取り合い、その温かさを感じながら、夕暮れの公園をゆっくり歩き始めた。風が少し強まったが、ふたりの心には確かな熱が灯っていた。
——挑戦を楽しむ二人。
それは、ただ乗り越えるだけでなく、互いに支え合いながら、前向きな未来を描き続けるための、一歩だった。
(第一一七章 完)