1話目
初投稿でお見苦しいところや読みづらいところが多々あると思いますが、読んでいただけると幸いです。はやりすたりとか関係なく、なんとなく思いついたことを思いきって書いてみました。まずはお話を完結させることができるように頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。
「アーサー・ローレンス、ただいまをもってあなたを王国から追放します。」
「命まで取らなかった寛大な処置に感謝しなさい。」
大通りに面した広場で俺は手かせをはめられ、家族であり王族である義母の言葉を聞いた。通りに並ぶ市民たちからも罵声が飛び交う。どうやらここにも俺の見方はいないようだ。
ああ、またか、
歓声と罵声があふれる広場の真ん中で俺は小さくつぶやいた
話は10年前に戻る。当時八歳だった俺はとても孤独な日々を過ごしていた。俺、アーサー・ローレンスはエルドラン王国の第4王子として生を受けた。しかし、俺は王宮でいかなる時も邪魔者扱いを受けていた。それもそのはず、父であるエドワード・ローレンスは5人の子どもを持ち、そのうち4人は王妃であるマーサ・ローレンスの実子だ。俺はというと、王の戯れの果ての産物であり、王宮勤めの一般メイドの間にできた望まれぬ赤子だった。その母も俺の出産時に命を落としてしまった。かくして俺は、誰の後ろ盾もないが王位継承権を持つ異例な存在として、家族だけでなく使用人からも空気のように扱われていた。
俺だって最初は兄弟や使用人たちとコミュニケーションを取ろうとした。しかし兄たちは俺のことを快く思うはずがなく、無視をするどころか、酷いときは暴力も振るわれた。使用人も俺と親密にしているところをほかの王子や王妃に見られれば立場が危うくなるらしく、俺に対して最低限の給仕はするが、話しかけてもそっけなく逃げてしまうばかりだった。
そんなわけで、俺はとても根暗でひねくれた子どもに育ってしまったのだった。俺は王宮ですることもなく、読書に明け暮れる日々を送っていた。本は王国の書庫にいくらでもあったし、その種類も魔導書、歴史書、科学書と豊富で飽きることはなかった。いくら知識がついても活用する場もなければそれを伝える社会性も皆無だった。だから俺は、物心つく頃から一人で書庫にこもっていた。いや、俺は本当に一人ぼっちだったのだろうか?
「アーサー様、アーサー様、今日も読書ですか?」
声をかけられて振り返るとそこにはウサギのような身体に狐の顔、背中からは鳥のような翼をはやした奇妙な動物が空中に浮遊していた。
「今日も、とは失礼な、まぁどうせ明日も明後日も読書だよ。モッフルは何してるんだ?」
「モフフ、今日も明日もアーサー様の観察ですよ。」
この人を食ったような態度をとる生き物はモッフル。本人は書庫の守り神であり妖精だと言っているが本当のところは定かでない。だが、モッフルは俺以外の人間には見えないらしく、ほかの王子や使用人の前に出ていってもモッフルに気づく人間はいなかった。また、物体に干渉することもできず、俺でもモッフルに触れることはできなかった。
「馬鹿にしてるのか、俺はずっと本読んでるだけだぞ?」
「モフフ、関係ありませんよ、アーサー様といるだけで私は幸せですから。」
「まぁおれも話し相手ができてうれしいしよ」
モッフルと話しているところを他の人間から見ると、俺が独り言を言っているだけに見える。そのせいで、使用人の間では俺が狂っていると噂されているが、唯一の話し相手には代えられない。
「今日はなにを読んでいるんですか?」
「ん?ああ、”王国と竜”という本だ。王国の建国史をベースにしたファンタジー作品で、歴史書とファンタジー小説の間をとったような作品だな。」
「モフフー、これまた難しそうな本を読んでますね。面白いんですか?」
「まあまあだな、竜が国の建国の手助けをしてくるシーンなんかもよくできていて、話にも矛盾がない。まるでこれが史実だったんじゃないかと思わせるくらいよくできているんだ。」
「それはすごいですね!いったいどんな人物がその本を書いたんでしょうか?きっとアーサー様みたいに賢い方なのですよ!モフフ」
「賢いかどうかは置いといて、著者の名前はリゼンラーデというみたいだ、本は多く読んでいるが聞かない名前だな。」
「リゼンラーデ...」
それまで楽しげに話していたモッフルの声から明るさが消え、トーンも幾分低くなった気がした。
「モッフル?どうかしたか?」
「い、いえいえ、なんでもありません、ありませんはアーサー様」
何かを取り繕うような雰囲気を感じたが、著者の名前に心当たりでもあったのだろうか?
しばらくの沈黙の後、(まあ俺は本を読んでいるだけだからあまり話しかけたりはしないのだが)モッフルはいつになく真剣な口調で問いかけてきた。
「アーサー様、もし私が普通の人間と同じように誰にでも見れて、誰にでも声を届けられて、何なんにでも触れられるようになっても一緒にいてくださいますか。」
唐突な質問ではあったが、孤独な俺の唯一の友人が尋ねているのだ、言葉を返すのに時間はかからなかった。
「ああ、当然だろ。」
「モッフフー、うれしいです。こんなにうれしいのは生まれて初めてですーモッフフー!」
モッフルはうれしさのあまり部屋中を飛び回る。
「やれやれ、はしゃぎすぎだろ」
喜び飛び回るモッフルを見ていると、誰からも必要とされていなかった俺でも、人(妖精?)を喜ばせることができたという事実に口角が少し上がった。
しばらくして落ち着きを取り戻したモッフルは俺のもとにやってきて告げた。
「アーサー様、私は実体を得るためにしばらく休眠に入ります。その間、アーサー様とはお会いできませんが、私はいつでもここにいます。時が来たらこの書庫に私を迎えに来てください。」
「モッフル...それっていったいどういうこと...」
突如モッフルの体は光を放ち、その輪郭は徐々に消えていった。
「アーサー様、お許しください。しばらくのお別れです。」
モッフルの姿は光の破片になってあたりに霧散していく。
「モッフル?冗談だろ?」「モッフル、モッフルー⁉」
俺の呼びかけは書庫にむなしくこだまし、消えていった。
それ以来モッフルは俺の前に姿を見せなくなってしまった。俺は唯一の友人をなくしてしまいひどく落ち込んでいた。そもそも、モッフルは本当にいたのだろうか?モッフルとは一人ぼっちのさみしさを紛らわせるために、子どもの頃の俺が作り出した妄想の産物だったのではないか。俺はこの先ずっと孤独なままなのだろうか...?
「それでいいじゃないか!」
モッフルが姿を消してしばらくたったある日、俺は孤独を受け入れた。
モッフルが消えたのは俺が成長した証だったのだろう。
そして時は進み二年前
十六歳の俺に婚約の話が舞い込んできた。
読んでくれてありがとうございました。
読み返すと反省する点が多々あって恥ずかしいです。
わたくしの成長とお話の盛り上がりに、こうご期待ということで次回もよろしくお願いします。