表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

4

 ルミナス学院での本格的な学校生活が始まる。


「――と言う訳なので、この理論は此方に繋がって来ると言う事なのです。ええ、皆さんも既にご存知の通りではありますが……」


 割と難しいものの、原作知識を持っている身からすればある程度理解は出来る。


「うーん。それでは魔法の属性について、誰かに応えて貰いましょうか。では……そこの貴方。答えて頂けますか?」


 講師が手に持つ棒が、アリサを指し示す。

 尚、教室は長机が階段状に連なっており、講師側が生徒全員を見る事の出来る造りとなっている。


「はい。基本的な属性は火、水、風、土、聖の五つがあります」

「正解でーす」


 この世界は剣と魔法のファンタジー。

 当然ながら、魔法は存在しているし、属性も存在する。『狂い咲く彩華』では主にこの5つが中心となっており、魔法それぞれに対して相性という者がある。

 火は水に弱く、水は風に弱く、風は土に弱く、土は火に弱い。

 聖は全属性に対して弱い。


 因みにアリサが行使できる魔法は「聖」属性であり、「白の聖女」の力も「聖」属性に分類されている。

 その為、攻撃魔法は全くもって使い物にならない。だからこその後方支援なのだが、全くもって悪意しか感じられない。

「聖」属性の担い手は希少で有るにも関わらず、だ。


「で、す、が。やはり、こう言った属性に関しては、実際に見て貰った方が分かり易いですよね? と言う訳で、ここから先は外に出て、実際の魔法がどんな物なのか見て見ましょうか!」


 つまらない講義より、実技の方がテンションは上がる。ソレは異世界であろうと、前の世界でも変わる事は無く教室は沸き立つ。

 講師に引率される形で外に出る。

 アリサ達が集まったのは訓練所の一角。

 少し距離が離れた場所には、鉄を用いて作られたであろう案山子が鎮座している。両脇には仕切りが存在しており、ソレが幾つも並んでいる。


「では、実際に魔法を披露しても良いよ、と言う人は居ますか? おお、こんなに手が上がりますが。……では、貴方と、貴方と、貴方と、貴方。お願いしても良いですか?」


 魔法の講師と言う事も有り、生徒一人一人がどんな魔法を行使するのか把握していたのだろう。次々と使命していき、実際に魔法が披露される。

 火。水。風。土。

 しかし、聖属性に関しては例外だ。

 担い手は希少であり、中々現れる事は無いのだから。

 だが、アリサは「聖」属性の使い手。

 当然と言えば当然の流れだが……。


「アリサさん。皆さんに「聖」属性の魔法を見せて貰う事って、出来るかしら?」


 こうなってしまう。

 目立つ事は嫌いだが、ここで断れば逆に悪目立ちしてしまう。

 了承する以外に選択肢は無いのだが、


「あの、確かに私は「聖」属性の魔法を使えますが、攻撃魔法は使えません。私が使えるのは支援のみですが、それでも大丈夫ですか?」

「へ? 攻撃魔法は覚えていないの?」

「はい。何も覚えていません」


「聖」属性は製作陣の手によって、大幅に弱体化してしまっている。本来の攻撃魔法に比べて4分の1の攻撃力、と言う事を知っていたら誰も習得しない。

 しかし、これはあくまでアリサが原作知識を知っているからだ。

 原作知識を知らない者からすれば、アリサの選択は少し異様に見えるかもしれない。でも、マジで使い物にならないんだから仕方がない。


「それじゃあ、支援の魔法でも大丈夫よ。ソレを使って……どうしようかしら? 案山子に何かして貰う? でも、だったら誰かに支援魔法をかけてから……」

「案山子に何かすれば良いんですね? 分かりました」

「へ?」


 地面に落ちている適当な小石を拾う。


(威力は抑えて)


 小石を握りしめて投げる。

 空を切り裂く音と共に、小石が飛ぶ。

 ゴギン! と何か、硬い物が噛み砕かれる様な音が響き渡り、鉄製の案山子の胴体に大きな穴が開く。


「…………」

「…………」


 誰も彼もが口を閉ざす。

 軋んだ音が聞こえたかと思えば、胴体に穴の開いた案山子が後ろに倒れる。


「え、えっと……もしかして、結構古かったのかもしれませんね。……案山子が」


 やってしまった。

 力の調整をミスった。

 後悔するが、もう遅い。

 どうやってこの状況を切り抜けるか? 半ば現実逃避するように、アリサはそんな事を考えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ