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乙女ゲームのTS主人公は攻略なんてしたくない  作者: 鯖鮪
2章 ままならない現実
39/40

5

「……次は体育かぁ」


 溜息交じりに呟きつつ、アリサは廊下を歩く。

 異世界の学院に於いても「体育」は存在している。


「別に体育の授業が嫌って訳じゃ無いんだけどさぁ。……どうしてよりにもよって、クラス合同で授業を行わなければいけないんだよ」


 寝耳に水だった。

 クラス合同授業の話を聞き、またもや学校に行きたくない病が発症してしまった訳だが、悪辣なるメイドの手によって再び学院に向かわされる。


「面識のないクラスでも問題なし。例え、平民を馬鹿にする貴族が居たとしても、無視をすれば良いだけだから平気だ。……だけどさぁ、どうしてよりにもよってジュダスの居るクラスと合同で体育の授業を受けないといけないんだよ!」


 ルミナス学院の一回生は四つのクラスに分けられている。

 ジュダスやカミーラとはクラスが別だ。アリサのクラスメイトで顔見知りは、カミーラの取り巻きであるアインとマインの2人だけ。


 少なくとも相手のクラスに赴く――ないしは赴かれる事さえ無ければ顔を合わすことも無い。正に安全圏とも呼べる自身のクラス。

 されど、体育教員の突発的な思いつきによって、今まさにアリサの人生に毒牙が掛からんとしているのだ。


 大袈裟かもしれないが、結ばれた後のエンディングが何もかも管理され、巨大な鳥籠の中で一生過ごす。と言う監禁エンドなので、出来る事なら関わり合いになりたくない。

 好感度が下がるのであればガッツポーズを決めて喜びたい所だが、今の所、戦績は芳しくない。少なくとも、クラス合同の相手がアリサだとしても、ジュダスが嫌そうに顔を顰める事は無いだろう。


 彼の護衛であるカイラに関しては分からないものの、今の所アリサなんて眼中にないと思うので気にしなくても大丈夫だ。

 仮病を使って体育を休もうか? そんな事を考えながら、更衣室まで向かう途中。今、一番会いたくない人物がやって来る。


「……ウゲッ」


 光り輝く金髪。

 イケメンと呼ぶに相応しい精悍な顔つき。

 立ち振る舞いは洗練されており、その一挙一動には品がある。


 ジュダスだ。

 彼の背後には、護衛で攻略キャラの1人であるカイラが付き従っている。カールした青色の髪に、周囲を威圧せんとする鋭い双眸。

 隙は存在しておらず、主に何かあればすぐに対処する事が出来るだろう。


 目が合った。

 嬉しそうに顔を綻ばせるジュダス。

 誰がどう見ても、ジュダスはアリサに対して好意的だ。


「やあ。君か。こんな所で会うのは奇遇……と言う訳でも無いか。近くにある更衣室で着替えるつもりだったんだろ?」

「……ええ。そうです。殿下」


 どうしてお前がここに居るんだよ! とは言わない。何故なら、ジュダスはこの国の王子様だ。無礼な発言をすれば、最悪首が飛ぶ。

 と言うより、後ろで睨みをきかせるカイラが何かしてくるだろう。


 彼もジュダスと同じく攻略キャラの一人だ。

 カイラと結ばれる結末は、過激なプレイの最中に死亡――と言う失笑ものな展開だ。ジュダスよりはマシな結末だ。


 そんな彼はジュダスに命を救って貰った恩義も有ってなのか、ジュダスに対しては途轍もなく過保護だ。

 悪戯でもしようものなら、最悪の場合は殺される。

 正に狂犬。


 ジュダスが相手では、好感度が上がらないように気を付けなくてはいけない上に、カイラの機嫌を損ねないようにしなければいけない。

 凄く面倒くさい。


「確か、今回は合同で行うんだったか? 俺自身もそう言った話は聞いていなかったから少々驚いてしまった」

「……はい。私も、今日の体育は普段と同じ様に行う、と思っていたので驚きました」


「そこの貴方。殿下との距離が近すぎます。もう少し……後、数メートル離れて頂けますか? 迅速に」


 数メートル離れて、人と会話が出来ると思っているのだろうか?


「カイラ。俺の事を心配してくれるのは嬉しいが、別に距離が近くても問題は無い。彼女は俺に対して害を加える気など一切無いのだから」


 んな訳は無い。

 害を加える気はある。

 が、口にしない。


「……殿下。このまま楽しく談笑していたとは思いますが、私はその、着替えがまだ終わっていないので……ええっと」

「おっと、すまないな。確かに、授業に間に合わなくなってしまう。遅刻してしまった原因が俺との談笑、とあっては申し訳が立たないな」


「いえ……そんな。気にしないで下さい」

「そう言ってくれるなら幸いだが……待て。今気付いたが、頭に何かついて居るぞ」


「え? 私の頭に……」

「今、俺が取ろう」


 普通に止めて下さい。

 しかし、既にジュダスの腕はアリサの頭へと伸びている。

 このままでは髪に触られてしまう。


 で、あればどうする事が最適解なのか?

 刹那、アリサの頭の中では様々な解決策が駆け巡る。その中で、今この状況を打破できる最善の選択を選ぶ。

 それは、


「ちょっと待って下さ……あ」


 尻餅を着くと言う方法。

 欠点としては思い切り尻餅をついてしまう為、お尻が痛くなってしまう。

 が、アリサの体は常に複数の『障壁』によって守られている為、ダメージは皆無に等しいと言っても良い。

 勝った。


「大丈夫か?」

「全然大丈夫です! あ、すいません! そろそろ着替えを行わないと不味い為、ここで失礼させて貰います!」


 アリサは急いで更衣室まで向かう。

 今回は上手く? 切り抜ける事が出来た。

 しかし、体育の授業を行う時は、上手く行くとは限らない。


「何か対策を練っておかなければ……」


 更衣室の扉を開けると、着替えている最中の同級生達の姿が。


「あら? お姉さま。大丈夫なの? 今から着替えると、体育の授業はギリギリになってしまうと思うけれど」

「……少し、色々とありましてね」


 今日の体育は合同授業。

 本来であれば、顔を合わせる事のないカミーラとも更衣室で顔を合わせる事になる。

 彼女も着替えている最中であり、今は制服を脱いで下着姿だ。

 下着の柄はやや派手で、カミーラらしい。


(……しかし、僕の前世は男性だった訳だけど、別段女性の下着姿を見ても何も感じないなぁ。まあ、所詮はそう言う記憶があるだけの話なんだけど)


 そんな事を考えつつ、アリサも着替える。


「お姉さま。もしも「体育」の授業でペアになる事が有れば、私と一緒にペアにならないかしら?」

「構いませんよ。もしも組む事が有れば、宜しくお願いします」


 カミーラのお願いは、アリサにとっても渡りに船だった。

 これでジュダスに誘われたとしても、断る理由が出来た。

 授業開始の鐘が鳴る。

 アリサは慌てて着替える。




 合同授業。

 アリサはてっきり、男女関係なく一緒に「体育」を行うと思っていたが……。


「あれ? 女子だけなんですね」

「そうですね。私もアリサさんと同じ意見です。普段は男女で一緒に授業を受けている訳なので、合同でもそうなると思っていましたが……」

「でも、数が増えすぎると面倒くさいので。私個人としては、これ位の方が丁度いいです。勿論、合同になったらどうなるのか、少し興味を持っていたのですが」


 アリサの呟きに答えてくれる、アインとマインの2人。

 どうやらアリサの悩みは杞憂だったらしい。


「お姉さま。一緒にペアを組みましょう!」


 約束もしていた為、断る理由は無い。

 アリサは楽しく体育の授業を受けるのだった。

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