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 魔王崇拝者のアジトを見つけた事は誰にも報告せず、何事も無かったかの様にアリサはカミーラ達と合流した。


 一通り孤児院を見て回ったからなのか。


 或いは、自分にスリを働いた少年を沢山虐める事が出来たのか、カミーラは随分と満足そうな表情を浮かべていた。


 クマアは若干、引いていた。

 そんなこんなで、孤児院を後にした3人。


 道中、暴漢に襲われかけると言うハプニングが起こったものの、アリサの金的攻撃によって無事撃退。


 カミーラがおススメする食事処にて――当然ながら、貴族の御用達。値段もべらぼうに高い――食事を済ませた後、三人は学生寮へと戻った。





 時刻は夜。

 誰もが寝静まる時間。

 カーテンを開き、両開きの窓から外を覗けば暗闇に包まれている。


 街灯なんてものは存在していない。

 が、アリサにとって暗闇は脅威ではない。


 暗闇に慣れる訓練は――アリサ本人は嫌だ! と拒否したものの半ば無理矢理――受けている為、明かりが無くても問題はない。


 あの孤児院の事なんてどうでも良い。

 心の底からどうでも良い。


 でも、どうでも良いと思っているからこそ、アリサは助ける。

 人としての「普通」を守る為に。


「……でも、流石に寝間着姿だとしまらないな。もっとこう……何か、相応しい洋服とか無かったっけ?」


 一応、アリサの前世は男の子だ。


 当然ながら、カッコイイ武器は好きだし、本物の魔法を目にすればテンションが上がる。こう言った状況――誰も知らない所で悪の組織と戦う――も結構好きであり、この状況に相応しい格好と言うものがある。


「確か、冒険者の時に使っていた洋服がここら辺にあった気が……あれ? ここだっけ? いや……別?」


 アリサは部屋の片づけが苦手だ。

 奇麗な部屋であっても、瞬く間に汚すことの出来る才能を持っている。


 その為、常に世話役のメイドであるクマアが整理整頓を行っており、当然ながら衣服もちゃんと棚にしまっている。


 今回、カミーラから渡された詫びの品。

 大量の、高級な衣服も棚の中に入っている。

 が、クマアが収納しているせいで、何処にお目当ての服があるか分からない。


 結果。アリサは棚の中身を丸ごと探さなければいけない事になるのだが、見つからない。全くもって見つからない。


「あれぇ? クマアの奴、一体何処に置いたんだ? ……不味いなぁ。ローブや仮面は見つけたのに、肝心の服が見つからないんじゃ話にならな……」


 コンコンコン。

 夜にも関わらず、扉をノックする音が。

 思わず驚いてしまう。


「お姉さま? 起きていらっしゃるかしら? ……実は、今日の記念にととっておきの物を用意したの」


 カミーラの声だ。


 アリサは黙る。

 黙って居れば、不在か就寝中と判断してカミーラは居なくなるだろう。


 しかし、その予想は呆気なく砕かれる。

 カチャリ。

 閉めていた筈の鍵が外れる音。


(あれ? 扉の鍵ってちゃんと閉めてたよな!? どうして? どうしてちゃんと扉の鍵を閉めて、尚且つこっちが扉の鍵を持ってる筈なのに扉が開くんだよ!)


 ベテがやって来た時も、さも当然のようにカミーラは乱入して来たが、その時に追及しておけば良かった。


 と言うか、友人の部屋とは言え不法侵入するとは何事か! 王都の服屋での一件を忘れたと言うのか!


 色々な想いが込み上げて来るものの、思わず叫ぶ訳にはいかない。

 自分はこれから寮を抜け出し、孤児院の地下に潜伏している魔王崇拝者達に殴り込みに行くのだ。


(どうする!? 逃げるか!? それとも隠れるか!?)


 アリサはアドリブに弱い。


 こう言った予想外の事態に陥れば、冷静に考えてみれば案外簡単な答えが出て来る状況でもミスしてしまう。


 だからこそ、本来ならばベッドで眠った振り等をしてやり過ごせば良いものの、窓へと向かい、そのままベランダの手すりを踏み台にして寮の外へと飛び出す。


 残念な事に、アリサは着替えを終えていない。

 おまけに、寝間着姿で行かない事は確定だった為、既に上と下は脱いでいる。

 つまり、下着姿だ。


「ああもう! 折角、カッコイイ感じで向かいたかったのに!」


 不幸中の幸いだったのは、適当に選んだものではあるが、着替えを用意している点。流石に、仮面を付け、下着の上からローブを羽織るのは痴女だ。


 110番案件だ。


 因みに、仮面を用意しているのは、万が一に備えて自分の素性を隠す為。


 白を基調とした、視界を確保する為の目だし穴しか存在しない、シンプルなデザイン。アリサは気に入っている。


 常に支援魔法で身体能力を強化しているアリサにとって、二階から飛び降りる事など造作でも無い。

 そのまま寮を抜け出し、暫くの間は走る。


 本気を出したアリサの速度は馬車よりも速い。

 王都には直ぐに辿り着ける。

 だが、今のアリサの見た目は痴女だ。


「……流石に、何処か適当な場所で着替えた方が良いか」


 暗闇であっても、アリサは夜目が利く。

 足を止め、自分が持って来た洋服を確認して、思わず絶叫してしまう。


「どうしてだよ! もっと他にマシな洋服は色々あっただろうが!」


 アリサの手に握られているのは洋服では無く、バニースーツだった。上半身と下半身。何方に対しても過度な露出を強いて来る、破廉恥な衣装の筆頭。


 どうしてバニースーツが? 普通、手触りとか分かるんじゃないのか? カミーラの奴、こんな物を中に忍ばせていたと言うのか!?


 様々な思いが脳裏を駆け巡るが、アリサの手に握られてバニースーツが無難な衣服に変わる事は無い。


 今すぐ寮に戻り、別の衣服を用意したい所だが難しい。

 カミーラがアリサの部屋でアリサを待ち構えている可能性が高いからだ。


「クッ! ………………ッ! 行く、しか無いか? 行くしか、無いのか!?」


 アリサは決断を迫られる。


 それは、下着姿のまま孤児院へ向かうか、バニースーツで孤児院へと向かうか。幸い、ローブで全身を隠す事は出来る。


 隠す事は出来るのだが、その下がバニースーツや下着姿の時点でアウトだ。


「ど、どうしよう。本当に、僕は一体どうすれば良いんだよ!」


 50歩100歩。

 何方を選んだとしても、恥ずかしい事に変わりはない。


 しかし、なるべく羞恥心が薄れる衣装を、アリサは必死に吟味するのであった。

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